赤岳鉱泉への道。北沢の清流を眺める「よたよたじいさん」。セルフタイマーではじめてわが身を撮った。
8月8日から10日までの3日間、テントを担いで北八ツを縦走してきた。年を取ってはザックの重さはこたえる。年ごとにそう感じる。「もう年なんだからそろそろテントはやめたら」とかみさんはいう。ことしから介護保険の第1号被保険者になったのだし「たしかにそうなだな」とわたしも思う。
それでもテントにした。やっぱり重荷を背負っての縦走はこたえた。ザックの重さに疲れ果て、へたり込んでしまった。それでも歩き通すことができた。これなら体力気力ともにまだ捨てたものではないという自信がほんの少し持てた。意欲あってこその山歩きだ。幸いにしてその意欲が燃えカス程度でもまだ少し残っていた。稜線の涼風が汗だくの体に心地よかった。
この夏の山は、南アルプスの笊ケ岳と決めていた。長時間の歩行になる。それに耐えられるかという不安があった。そんな不安を持つようになったのは、振り返ってみると2010年の「平ケ岳」のときからだ。あのときから体力に不安を覚えるようになった。
今回もそんな不安を感じた。笊ケ岳の前に体慣らしに本格的に歩いて体調を見なければならない。さてどこの山へ行こうかと思いを巡らした。ふと八ケ岳が出てきた。ことしのはじめの入笠山からの眺めが意識の底にあったのかもしれない。よしそうしよう。それも北八ツにして、テントで縦走だ。これでこの夏の山は、北八ツと笊ケ岳の二つに早々と決まった。
八ツには思い出が多い。そうはいっても数えて10回ぐらいしか行っていないのだが、とくに北八ツには特別の感慨がある。若いときに北八ツを歩くきっかけとなったのが山口耀久著「北八ツ彷徨」だ。若いからこそストイックな気分で地味な樹林帯の北八ツを歩けた。ここで青春の北八ツをもう一度縦走したい。大きなザックを背負ったわたしの姿を見て「よたよたじいさん」とかみさんがいった。その言葉が気に入った。
長いこと山を歩いていると、山に対する思いがあふれる。その思いを語るのが長くなりがちで、ぐずぐずと書いてしまうから登山口までなかなか至らない。次回からやっと山行記になる。