三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

シドニー・ポラック『アメイジング・グレイス』

2021年12月08日 | 映画

シドニー・ポラック『アメイジング・グレイス』は、1972年にロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行われた、アレサ・フランクリン(29歳)のコンサートの映画です。
音と映像がシンクロされてなかったため、今までお蔵入りしていたもの。
撮影も担当したシドニー・ポラックは監督にクレジットされていません。
ゴスペルとは福音、幸せの便り。
イエスの言行を記した福音が『新約聖書』です。

曲の歌詞は、字幕を読むと、神をほめたたえ、信仰の喜びを歌ったものばかり。
ジェームズ・クリーブランド牧師が最初に「これは礼拝です」と言うように、歌による説教だと感じました。

キャロル・キングの「君の友だち」をアレサ・フランクリンが歌うと、友だちとは神のことなのかと思ってしまいます。
アレサ・フランクリンの歌に、yeahと声があがり、涙を流す人もいます。
圧倒的な歌唱力に対してよりも、歌詞に感激して「そうだ、そのとおりだ」と思わず声を発したような感じです。

聴衆はほとんどが黒人。
その中にミック・ジャガーがいました。
アレサ・フランクリンが「私は高き山に登る 家に帰るために」を歌います。
家とは神の国のことで、生きることは苦難に満ちているが、神の国に到ることによって報われるという内容です。
ミック・ジャガーが立ち上がって手を叩き、聴衆全員がのりまくります。(1分30秒ぐらいから)



ラリー・チャールズ『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』で、ポラットがペンテコステ派の集会に迷い込み、ハイテンションになった信者たちが異言を叫び、失神する異様な光景を思い出しました。

アレサ・フランクリンの父親C・L・フランクリンはバブテスト派の牧師で、有名な説教者でした。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア師の親友であり、キングもまたC・L・フランクリンに深い敬意をもっていたそうです。
父親はこのコンサートで説教をしており、仲のよい父娘だと感じました。

しかし、アレサ・フランクリンの両親は1948年に別居、母親は1952年に34歳で亡くなっています。
アレサ・フランクリンの伝記映画であるリーズル・トミー『リスペクト』では、父親が母親に暴力をふるっていたと、姉と妹が言う場面があります。
ウィキペディアによると、両親の別居は父親の数多い浮気のためです。

1940年、C・L・フランクリンは信徒で13歳だったミルドレッド・ジェニングスに息子を生ませています。
アレサ・フランクリンは12才で出産しますが、父親が子供の親なのではないかと噂されたそうです。
コンサートで父親の愛人クララ・ウォードも紹介されています。

『リスペクト』では、抑圧的な父親は娘を支配下に置こうとし、コンサート当時は父娘は仲違いをしていました。
アルコール依存症の治療を受けていたアレサ・フランクリンは、回復のために教会でコンサートを行ったのです。

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