おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

エリザベス

2022-03-07 10:18:40 | 映画
「エリザベス」 1998年 イギリス


監督 シェカール・カプール
出演 ケイト・ブランシェット
   ジョセフ・ファインズ
   ジェフリー・ラッシュ
   クリストファー・エクルストン
   リチャード・アッテンボロー
   ファニー・アルダン

ストーリー
16世紀のイングランド。国内では旧教・カトリックと新教・プロテスタントが争っていた。
ときの女王メアリー(キャシー・バーク)はプロテスタントを弾圧、新教派のエリザベス(ケイト・ブランジェット)もロンドン塔に投獄されてしまう。
しかし、ほどなくメアリー女王は他界。
1558年、エリザベスに王位が継承される。
新しい女王に、フランスのアンジュー公(ヴァンサン・カッセル)、スペイン王との結婚話が持ち上がるが、エリザベスは恋人のロバート(ジョセフ・ファインズ)と逢い引きを重ねていた。
国内の財政は苦しく、スコットランドとの戦争にも敗れたイングランド。
エリザベスは新教派のウォルシンガム(ジョフリー・ラッシュ)を味方につけ、国を新教に統一することを決定。
これを怒ったローマ法王は英国に密使を送る。
ウォルシンガムは不穏な動きを抑えるため、スコットランド女王メアリ・オブ・ギーズ(ファニー・アルダン)を暗殺。
臣下たちは結婚により身を守るようエリザベスに薦め、ロバートにはすでに妻がいることを告げる。
国内では旧教派のノーフォーク卿(クリストファー・エクルストン)が法王と結託し反撃に出ようとしていた。
意を決したエリザベスはローマからの密使を探し出し、ノーフォーク卿をはじめとする旧教派を一網打尽にする。
愛に破れ祖国と生きることを決意したエリザベスは、人々の前で「私は国家と結婚します」と宣言するのだった。


寸評
こういう宮殿を舞台にした映画では、大抵が登場人物のコスチュームと宮殿内部の豪華さに目を奪われるものだ。
本作も例外ではなく豪華絢爛である。
僕は英国史に詳しくないし、キリスト教に関してはチンプンカンプンである。
カトリックとプロテスタントの違いも分からない。
日本でも古くはキリスト教に対する禁教令が出されて信者が迫害された時期もあったが、現在では宗教に関してはおおむね鷹揚である。
大抵の日本人には宗教戦争の根底にあるものが理解できないのではないか。
そんな宗教対立がバックにあるので、僕は映画自体にある宗教的背景が十分に理解出来なかった。
感覚としてその背景を感じとれればもう少し楽しめたかもしれない。

歴史物語でもあるのだが、ラブロマンスでもあり、どちらかと言えばそちらの要因の方が重きをなしている。
その為に迫ってくるような迫力には欠けていたように思う。
エリザベスは異母姉の女王メアリーによってロンドン塔に幽閉されてしまうのだが、そこに至るまでの盛り上がりに欠けるし、幽閉されてからの苦難も描かれていない。
女王メアリーが他界すると、新女王としてエリザベスが迎えられるのだが、その劇的さも感じ取れなかった。
バチカンからの刺客が送られてきたり、暗殺未遂が発生するシーンでも、権謀術策が渦巻く権力争いという雰囲気は出ていなかったように思う。
もう少しエンタメ性に富んだ演出があれば、もっと楽しめた作品になっていたのではないか。
まあこれは好みの問題でもあるのだが。

何といってもケイト・ブランシェットである。
場面場面で見せるケイト・ブランシェットの表情に大女優の貫録を感じてしまう。
肖像画を見せられたとしても、エリザベス1世の名前を聞くと彼女の顔を思い浮かべてしまうのではないかと思うくらいに成り切っていた。

エリザベス1世はバージン・クイーン(処女王)とも呼ばれ、生涯結婚をしなかった女王であるが、結構愛人的な人はいたようで、ここでもロバートと逢瀬を重ねている。
そこに政略結婚の相手としてフランスやスペインが絡んできて、言い換えれば三角関係、四角関係が発生する。
スペインは当時のイングランドなら一ひねりで侵略できそうなものだが、やはり犠牲を払わないためには政略結婚が一番なのかもしれない。
実際、戦争を仕掛けたスコットランド戦でイングランドは大敗を喫していて、最悪の結果をもたらされている。
皆の意見に流されてしまった結果だが、やがてエリザベスは徐々に強くなっていく。
それを助ける忠臣がウォルシンガムである。
ウォルシンガムはエリザベスの王位を守るためには何でもする。
敵対者を幽閉したり、暗殺したり、証拠を力ずくで入手して処刑したりと闇の部分を淡々とこなしていく。
僕にはエリザベスが熱をあげるロバートなんかよりも、このウォルシンガムの方が魅力的な男に見えたけど…。