さすがに後半は息切れした感のある「男はつらいよ」シリーズでしたが、水準を守り続けた珍しいシリーズだったと思います。
特によかった「男はつらいよ 望郷篇」、「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」、「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」は2019/2/21から紹介済みです。
今回は残りの作品から少し抜粋していきます。
「続・男はつらいよ」 1969年 日本
監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 佐藤オリエ ミヤコ蝶々
森川信 三崎千恵子 前田吟 山崎努
津坂匡章 太宰久雄 佐藤蛾次郎 笠智衆
財津一郎 東野英治郎
ストーリー
フーテンの寅さんこと車寅次郎(渥美清)は、故郷・葛飾を離れて弟分の登(津坂匡章)としがない稼業を続けていた。
そんなある日、北海道でうまい仕事があるとの知らせに出発したが、途中で妹さくら(倍賞千恵子)や、おじ(森川信)、おば(三崎千恵子)の顔みたさに東京で下車したのが運のつき。
茶一杯で退散と決心したが、中学時代の坪内先生(東野英治郎)の家の前を通りかかり、懐かしさの余り、玄関先で挨拶のつもりが、出てきたお嬢さん(佐藤オリエ)の美しさに惹かれ、さっきの決心もどこへやら。
上がりこんでの飲むわ食うわがたたって腹痛を起こし、病院へかつぎこまれ一週間の入院を命じられた。
退屈そうな入院患者相手に香具師の実演をやらかして藤村医師(山崎努)に大目玉を食い、たまらずやってきた登とウナギが食べたいと窓から脱出したが、無銭飲食から大喧嘩となり留置所入りの破目になった。
さくらは泣くやら、おじとおばは怒鳴るやらの喧嘩の末、夜逃げ同様に柴又を後にした。
北海道の仕事はうまくいかず、再び登と本州に戻った寅は東京を素通りして、関西に来た。
かねがね母親のお菊(ミヤコ蝶々)が関西にいると聞いていた寅が、仲間に頼んで捜していたところ、偶然、坪内先生と一緒に買物をしているお嬢さんと出会った。
やがて、母のいどころが判り、お嬢さんについて行ってもらった。
ところがその母親は、寅の夢の中に出てくるやさしい母親と違い、厚化粧をし、三流どころの連れ込み宿を経営する女だった。
カーッとなって怒鳴りつけた寅は、そのまま汽車に乗って去った。
半月後、先生は他界し、寅が世話になった病院の藤村医師とお嬢さんの結婚を聞いた寅は、またも悲しみに打ちひしがれ、詑びるお嬢さんの言葉を胸に、登とともに柴叉を後にするのだった。
寸評
二代目マドンナは佐藤オリエだが、前半は彼女が引っ張るような形で、寅さんと実の母親との対面が描かれる。
対面場面は、この後パターン化した夢のシーンが単なる夢にとどまらず本編の伏線となっていた。
面白いのは対面で打ちひしがれた寅が帰ってくるシーンだ。
皆は母親のことを思い出せない為に、母に通じる言葉を禁句としていたのだが、ついつい誰彼となく無意識のうちに口走ってしまう。
テレビをつけると「お母さーん!」と叫んでいるコマシャールが写っているというものである。
そういえばこの頃のテレビでは「ハナマルキみそ」のコマーシャルがよく流れていた。
当然それあってのギャグである。
おいちゃん、おばちゃんが寅のことを「寅」や「寅ちゃん」ではなく「寅さん」と呼んでいるぎこちなさは残っているが、一作目がヒットしたために急きょ取られた二作目にもかかわらず、手抜きは見られずキッチリとまとまっている。
坪内先生のお嬢さんの姿が見えるとソワソワしだす寅の姿も滑稽さを増していた。
坪内先生は「天然ウナギが食べたい」と言いだす騒動は、病院でのウナギ騒動が伏線となっていたと思う。
寅はこの坪内一家に入りびたりとなるが、兎に角いたるところでこの坪内親子と出会うことになる。
この辺は喜劇映画の都合のよさだ。
柴又で事件を起こし京都へ来ていた寅が、都合よく京都見物に訪れていた坪内先生たちと出会う。
そのことがあって寅は実の母親との面会を果たすのだが、そこでのやり取りも面白い。
グランドホテルとは名ばかりのラブホテルで、部屋に通された二人が見せる戸惑いも笑わせる。
しょげて帰ってきた旅館で寅は泣きじゃくるが、そこでも部屋から庭に転げ落ちるギャグを見せて、悲しい場面を面白い場面に変えてしまっている。
とにかく吉本新喜劇も顔負けの、これでもかという小ネタの連続なのだ。
坪内先生のお嬢さんとは再び京都で出会うが、寅はそれに気づいていない。
どうなるのかと思うと母親が再び登場してホンワカした雰囲気を出して、後味が悪かった話にもケリをつけていた。
この二作目をもって「男はつらいよシリーズ」の形が固まったと言っても良いと思う。
夢物語に始まり、タイトルが出て、クレジットに重なるように渥美清の歌う主題歌が流れる。
その後は片思いによるマドンナを巡る騒動が巻き起こるというストーリー立てだ。
それを補うように若干のエピソードが付け加えられる。
映画を支えるのは渥美清の喜劇役者としての振る舞いだ。
東宝の喜劇である「駅前シリーズ」や「社長シリーズ」とは全く違う雰囲気を出しているし、植木等の「無責任男」のドタバタとは異次元にあると思わせる松竹の喜劇である。
笑いたければ「男はつらいよ」を見ればいいと思わせるようになった作品でもある。
シリーズ化されることになったことへの貢献度が大きい作品で、この二作目が水準を保ったことでシリーズ化が可能になったと思う。
特によかった「男はつらいよ 望郷篇」、「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」、「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」は2019/2/21から紹介済みです。
今回は残りの作品から少し抜粋していきます。
「続・男はつらいよ」 1969年 日本
監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 佐藤オリエ ミヤコ蝶々
森川信 三崎千恵子 前田吟 山崎努
津坂匡章 太宰久雄 佐藤蛾次郎 笠智衆
財津一郎 東野英治郎
ストーリー
フーテンの寅さんこと車寅次郎(渥美清)は、故郷・葛飾を離れて弟分の登(津坂匡章)としがない稼業を続けていた。
そんなある日、北海道でうまい仕事があるとの知らせに出発したが、途中で妹さくら(倍賞千恵子)や、おじ(森川信)、おば(三崎千恵子)の顔みたさに東京で下車したのが運のつき。
茶一杯で退散と決心したが、中学時代の坪内先生(東野英治郎)の家の前を通りかかり、懐かしさの余り、玄関先で挨拶のつもりが、出てきたお嬢さん(佐藤オリエ)の美しさに惹かれ、さっきの決心もどこへやら。
上がりこんでの飲むわ食うわがたたって腹痛を起こし、病院へかつぎこまれ一週間の入院を命じられた。
退屈そうな入院患者相手に香具師の実演をやらかして藤村医師(山崎努)に大目玉を食い、たまらずやってきた登とウナギが食べたいと窓から脱出したが、無銭飲食から大喧嘩となり留置所入りの破目になった。
さくらは泣くやら、おじとおばは怒鳴るやらの喧嘩の末、夜逃げ同様に柴又を後にした。
北海道の仕事はうまくいかず、再び登と本州に戻った寅は東京を素通りして、関西に来た。
かねがね母親のお菊(ミヤコ蝶々)が関西にいると聞いていた寅が、仲間に頼んで捜していたところ、偶然、坪内先生と一緒に買物をしているお嬢さんと出会った。
やがて、母のいどころが判り、お嬢さんについて行ってもらった。
ところがその母親は、寅の夢の中に出てくるやさしい母親と違い、厚化粧をし、三流どころの連れ込み宿を経営する女だった。
カーッとなって怒鳴りつけた寅は、そのまま汽車に乗って去った。
半月後、先生は他界し、寅が世話になった病院の藤村医師とお嬢さんの結婚を聞いた寅は、またも悲しみに打ちひしがれ、詑びるお嬢さんの言葉を胸に、登とともに柴叉を後にするのだった。
寸評
二代目マドンナは佐藤オリエだが、前半は彼女が引っ張るような形で、寅さんと実の母親との対面が描かれる。
対面場面は、この後パターン化した夢のシーンが単なる夢にとどまらず本編の伏線となっていた。
面白いのは対面で打ちひしがれた寅が帰ってくるシーンだ。
皆は母親のことを思い出せない為に、母に通じる言葉を禁句としていたのだが、ついつい誰彼となく無意識のうちに口走ってしまう。
テレビをつけると「お母さーん!」と叫んでいるコマシャールが写っているというものである。
そういえばこの頃のテレビでは「ハナマルキみそ」のコマーシャルがよく流れていた。
当然それあってのギャグである。
おいちゃん、おばちゃんが寅のことを「寅」や「寅ちゃん」ではなく「寅さん」と呼んでいるぎこちなさは残っているが、一作目がヒットしたために急きょ取られた二作目にもかかわらず、手抜きは見られずキッチリとまとまっている。
坪内先生のお嬢さんの姿が見えるとソワソワしだす寅の姿も滑稽さを増していた。
坪内先生は「天然ウナギが食べたい」と言いだす騒動は、病院でのウナギ騒動が伏線となっていたと思う。
寅はこの坪内一家に入りびたりとなるが、兎に角いたるところでこの坪内親子と出会うことになる。
この辺は喜劇映画の都合のよさだ。
柴又で事件を起こし京都へ来ていた寅が、都合よく京都見物に訪れていた坪内先生たちと出会う。
そのことがあって寅は実の母親との面会を果たすのだが、そこでのやり取りも面白い。
グランドホテルとは名ばかりのラブホテルで、部屋に通された二人が見せる戸惑いも笑わせる。
しょげて帰ってきた旅館で寅は泣きじゃくるが、そこでも部屋から庭に転げ落ちるギャグを見せて、悲しい場面を面白い場面に変えてしまっている。
とにかく吉本新喜劇も顔負けの、これでもかという小ネタの連続なのだ。
坪内先生のお嬢さんとは再び京都で出会うが、寅はそれに気づいていない。
どうなるのかと思うと母親が再び登場してホンワカした雰囲気を出して、後味が悪かった話にもケリをつけていた。
この二作目をもって「男はつらいよシリーズ」の形が固まったと言っても良いと思う。
夢物語に始まり、タイトルが出て、クレジットに重なるように渥美清の歌う主題歌が流れる。
その後は片思いによるマドンナを巡る騒動が巻き起こるというストーリー立てだ。
それを補うように若干のエピソードが付け加えられる。
映画を支えるのは渥美清の喜劇役者としての振る舞いだ。
東宝の喜劇である「駅前シリーズ」や「社長シリーズ」とは全く違う雰囲気を出しているし、植木等の「無責任男」のドタバタとは異次元にあると思わせる松竹の喜劇である。
笑いたければ「男はつらいよ」を見ればいいと思わせるようになった作品でもある。
シリーズ化されることになったことへの貢献度が大きい作品で、この二作目が水準を保ったことでシリーズ化が可能になったと思う。