おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ローズマリーの赤ちゃん

2024-09-11 08:23:36 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2020/3/11は「ブリッジ・オブ・スパイ」で、以下「ブリット」「ブレイブハート」「フレンチ・コネクション」「フレンチ・コネクション2」「ペーパー・ムーン」「ペコロスの母に会いに行く」「ヘッドライト」「別離」「ベニスに死す」と続きました。

「ローズマリーの赤ちゃん」 1968年 アメリカ


監督 ロマン・ポランスキー
出演 ミア・ファロー ジョン・カサヴェテス
   ルース・ゴードン シドニー・ブラックマー
   モーリス・エヴァンス ラルフ・ベラミー
   エリシャ・クック・Jr パッツィ・ケリー
   チャールズ・グローディン アンジェラ・ドリアン
   エマリン・ヘンリー ハンナ・ランディ

ストーリー
若い俳優ガイと妻ローズマリーが、マンハッタンの古いアパートに引っ越してきた。
二人がつき合っている初老の友人ハッチによれば、このアパートは以前から不吉な噂がたえないということだったが、若い二人はいっこうに平気だった。
隣人は親切だが少々おせっかいの老夫婦ローマンとミニーのカスタベット夫妻だった。
彼らには養女が一人いて、いつもタニスの入った異様な匂いを発するペンダントをしていたのだが、ある夜、彼女はアパートの窓から飛び降り自殺をとげてしまった。
翌日、カスタベット夫婦は、ガイとローズマリーを夕食に招待し、ミニーは例のタニスの入ったペンダントをローズマリーにプレゼントして一方的な親切をみせ始めた。
ガイの仕事の上に変化が起こり始め、いい役にありついていた俳優が急に盲になり、ガイに役がまわってきた。
そしてガイは急に、赤ちゃんを作ろうと言い出し、その日にちまで決めてしまった。
夕食の時にミニーがデザートを持ってきてくれたが、まずくてローズマリーは食べられなかった。
ガイの強いすすめで半分ほど食べたのだが、めまいがして意識を失ってしまった。
その夜、ローズマリーは夢を見たのだが、それはまさに悪夢というにふさわしいものだった。
やがて彼女の妊娠が判明したのだが、カスタベット夫妻は親切ごかしに産科医の指定をしたり、栄養があると称する飲物を毎日運んでくれたりするようになった。
だが日が経つにつれ、ローズマリーの身体は弱まり顔色は悪くなるばかり。
訪ねてきたハッチは様子がおかしいので心配してくれた。
ハッチは彼女と会う約束をして帰っていったが、その約束の日、彼は急病で倒れて数ヵ月後に死んでしまった。


寸評
マンハッタンの空撮を背景に示されるクレジットタイトルの雰囲気は、まるでラブ・ロマンス作品のようで、実際映画のオープニングは若い新婚カップルの仲睦ましい様子が描かれる。
しかし、引っ越し先の壁に残された怪しげな言葉と、ローズマリーが親しくなったテレサという女性の謎の死によって、この作品の雰囲気が決定づけられる。
その雰囲気に最大限の効果をもたらしているのがローズマリーを演じたミア・ファローである。
彼女の風貌と、その風貌から醸し出される雰囲気あっての映画となっている。
内容はサスペンス映画でありながら、オカルト作品でもあり、ホラー映画でもある。
ジャンルとして、それらは複合的につながっているものだが、この作品では見事な融合を見せている。

ガイとローズマリーの夫婦はマンハッタンの古いアパートに引っ越してくるが、そのアパートには世話焼きの老夫婦が住んでいて、ローズマリーに必要以上のかかわりを持ってくる。
ついにはローズマリー宅に友人の老人を連れてきて二人で編み物を始める始末である。
老人の淋しさのはけ口なのかもしれないが、日常生活においてありそうな関係で、中途半端な親切心は気まずい関係を生んでしまうのかもしれない。
自分も老人の部類だし、近所にも老人世帯が増えてきたので、心しなくてはいけない。
兎に角、この婆さんはうっとしい人だと思わせるが、人の良いローズマリーは拒絶することが出来ない。
このあたりの描写が結構長く描かれていて、映画の尺を長くしているのだが、ごく普通の出来事として描く必要があったのだろう。
しばらくすれば、この婆さんは明らかに不審人物だと思われてくる。
ミニー婆さん一人を不審人物にしている構成が大事だったのだと、映画が進むにつれて判明してくるのだが、描かれていくうちに、おかしいのはむしろローズマリーの方ではないかと思われるようになってくるのがいい。
もしかすると、これはローズマリーの妄想を描いた心理サスペンスではないかと思わせる上手い演出である。
それに応えたミア・ファローが素晴らしい。

日本では1955年頃に森永乳業の粉ミルクを飲用した乳幼児に多数の死者やヒ素中毒患者を出した森永ヒ素ミルク中毒事件があったし、また1960年代には沈静・睡眠薬のサイドマイドを妊娠初期に服用した妊婦から生まれた子に、四肢奇形などが見られたサリドマイド薬害事件もあった。
世界ではこの様な薬害事件が多発しているのかもしれない。
ミニー婆さんが提供していた不思議な飲み物はそのような薬害を暗示していたのかもしれない。
胎児に影響があるだけに妊婦による薬の服用は気を付けないといけないが、母親が自らの体を痛め細心の注意を施して出産するのだから、子供に対する愛情は父親の比ではないのだろう。
その事がラストシーンで示されるのだが、この作品中で一番恐ろしいシーンがこのラストシーンにおけるローズマリーの表情であった。
題名となっているローズマリーの赤ちゃんの姿は一度も映されることはなく観客の想像に任されているのだが、ローズマリーは彼ら世界の聖母に甘んじるということなのか。
ニューヨークのような大都会は色んな世界に悪魔的な人がいて、悪魔が支配する街なのかもしれない。


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