おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

映画 鈴木先生

2022-03-03 14:58:45 | 映画
「え」の1回目は2019年2月1日の「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」からでした。
2回目は2020年11月11日の「永遠と一日」からでした。
過去分はバックナンバーからご覧ください。

さて今回は3巡目になります。

「映画 鈴木先生」 2012年 日本


監督 河合勇人
出演 長谷川博己 臼田あさ美 土屋太鳳 北村匠海
   未来穂香 西井幸人 浜野謙太 風間俊介
   田畑智子 斉木しげる でんでん 富田靖子

ストーリー
緋桜山中学の国語教師・鈴木先生(長谷川博己)は黒縁メガネとループタイがトレードマーで、一見問題がない普通の生徒ほど内面が鬱屈していると考えており、独自の教育理論・鈴木メソッドを用いて理想的なクラスを築き上げようと日々奮闘している。
常識を打ち破る局面もあるため、他の教師と対立することもある。
また、理想の教室を築く上で欠かせないと考える女子生徒・小川蘇美(土屋太鳳)を重要視しているうちに、よからぬ妄想を抱いてしまうこともしばしばある。
そんな鈴木先生を妊娠中の妻・麻美(臼田あさ美)はよき相談相手となりそっと支える。
麻美には相手の考えていることを見抜き生霊を飛ばす特殊能力があり、鈴木先生は身重の麻美に気苦労させまいとより一層自らを律している。
やがて、2学期を迎えた学校では生徒会選挙と文化祭の準備が進む中、鈴木先生と教育論で激しくやりあった天敵の家庭科教師足子瞳先生(富田靖子)が、心の病から立ち直り復職復帰する。
また、人前に出たがるタイプでない出水正(北村匠海)が生徒会選挙に突然立候補し、友人の岬勇気(西井幸人)も応援に名乗り出るが、二人の一連の行動に何か企みを感じ、不吉な空気が立ち込める。
そんな中、ドロップアウトしてしまった卒業生・勝野ユウジ(風間俊介)が小川を人質に学校に立てこもるという最悪の事件が発生する。
「小川蘇美ちゃん、今から君をレイプします」 どうする、どうする鈴木先生!?


寸評
冒頭に「LESSON 11」の文字がでるのでテレビシリーズの第11話という位置づけで、テレビドラマを見ていなかった僕ははたして入り込めるのかと疑問に思ったがこの一話だけで十分な作品になっていた。
多分テレビドラマでは色々な出来事があって足子先生は休職していたのだろうが、その復職も要領よく描かれているので初見の僕でも抵抗なくスンナリとドラマに入っていけた。

学園ドラマの先生が主役となれば、ついつい熱血先生を連想してしまい、実際鈴木先生は熱血先生なのだが、パターン化された熱血先生ではない。
彼は自分の教育論を実験と称して現場で実践している。
したがって見ていると自己満足的で一人で舞い上がっているような所も見受けられる。
先生と名の付く職業の人に嫌悪感を抱くひねくれ者の僕は当初その姿に反感を抱いた。
作品中でも卒業生が訪ねてきた時の勘違いとか、卒業生に指摘される事などがその思いに追い打ちをかけた。
だが見ているうちに、自問自答しながら生徒たちを指導する言葉が、あざといものから心に響くものへと変化を遂げていった。
鈴木先生が言うように、それは演じられたものなのかも知れないが、演じているうちに本当にそう思っているようにも見えてくるのである。

ドラマは現実と非現実の間を行き来して進んでいく。
鈴木先生が小川蘇美に抱く妄想や、彼女を救出する場面などは現実離れしている。
と思いきや選挙の投票率問題などをストレートに投げかけてくる。
政府は選挙への関心を高め投票率アップを盛んに訴えるが、僕は投票率は低くて構わないと思っている。
むしろ無理やり投票率を上げた結果としてのポピュリズム選挙の方を危惧する。
一所懸命に考え真面目に投票する人達だけでいいではないか。
どうせ自分の一票などで世の中は変わらないと思っている人に投票を促すことはないと思うし、棄権は投票結果への白紙委任なのだと僕は思っている。
不満票として白紙投票すればいいという意見もあるが、ここではそれも否定して学校側が目指した選挙制度そのものを否定させている。
それを提案した富田靖子は怪演だったなあ。
意見を論破されても気にしない勘違いぶりに大笑いしてしまった。

この足子先生が学内のことにとどまらず、公園の喫煙所の撤去まで求めるのは、まさしく何かあったらというリスク回避に他ならない。
最近はどうもリスク回避という名を借りた事実上の責任回避が目に付く。
鈴木先生は手を焼く出来の悪い生徒に関心を取られ、平凡な生徒が犠牲になっていると思っている。
僕の友人も、先生にとって記憶に残るのは勉強が出来た子、美人だった子、そして悪かった奴と言っていた。
勝野は先生のいう通りの普通の子になったけど社会で受け入れられなかったと言うが社会のせいではない。
白々しくも聞こえるけれど、鈴木先生は世界を変えるのはお前たちだと今日も語り続ける。