「荒野のガンマン」 1961年 アメリカ
監督 サム・ペキンパー
出演 モーリン・オハラ ブライアン・キース
スティーヴ・コクラン チル・ウィルス
ストローザー・マーティン ウィル・ライト
ジム・オハラ
ストーリー
南北戦争も終わった数年後北軍に従軍したイエローレッグは1人の南軍兵士を探し歩いていた。
戦場で負傷した時、この南軍兵は酔った勢いで彼の頭を剥ごうとしたのだ。
彼はある酒場で私刑にされようとしている男タークを救って愕然とした。
タークの手首には彼がつけた歯形がくっきり残っていた。
イエローレッグは自分の手でタークを殺そうとして彼を助けた。
タークにはガンマンの相棒ビリーがついていて、3人は早速、チームを組んだ。
そしてヒーラー町のある銀行を襲うことにした。
その町に着いた3人は、ダンスホールに働くキットと知り合いになった。
その晩、3人が襲おうとした銀行を他の無法者たちが襲撃した。
怒った3人は保安官側につき激しい撃ち合いが起こった。
その時、イエローレッグの弾丸はキットの息子ミードに命中してしまった。
キットは夫の墓があるというシリンゴ町にミードを埋めると言い張った。
しかしシリンゴ町は、今は廃墟と化し、途中の草原にはアパッチ族が群れをなしていた。
イエローレッグはせめてもの償いに護衛を申し出るが彼女はそれを許さず1人で出発していった。
アパッチに馬を持ち去られたイエローレッグとキットは、徒歩でようやくシリンゴへたどり着いた。
そこへ再びビリーとタークが銀行から金を奪いシリンゴへやって来た。
ビリーは、イエローレッグに拳銃を渡し、もはや無用となったタークを殺すよう言いつけた。
イエローレッグの殺人を止めるため、キットは愛を打ち明けたが、黙ってタークから受けた頭の傷を見せるだけだった。
タークに対する憎悪をこめてイエローレッグの拳銃が火を吹いた。
だが弾はそれ、見かねたビリーはタークを撃ち次にイエローレッグを狙った・・・。
寸評
ペキンパーが初めて監督した劇場映画がこの「荒野のガンマン」なのだが、バイオレンス映画、アクション映画の作品を数多く世に送り出し残酷な作風が特徴とも言われた彼にしては、この映画においてはその片鱗はうかがえず、むしろ大人しい作品となっている。
元北軍兵のイエローレッグは銃弾が肩に残っていて、その為に右腕が自由に上がらない。
そのことでキットの一人息子を誤射して死なせてしまうのだが、最後にあるであろう決闘においてそのハンデをどのようにして克服するのか楽しみにしていたのだが期待を裏切られる結末となっている。
もちろん、この結末が良いのだと言う人もいるだろうが、僕は消化不良を感じた。
イエローレッグは南北戦争で南軍の兵士によって、先住民がやるように頭の皮をはがされそうになった。
復讐に燃えるイエローレッグはその相手を見つけ出し同じ思いをさせることを生き甲斐にしている。
探している男タークがすぐに見つかるのはご都合主義と言えなくもないが、冒頭の場面で描いているので許されるだろう。
ただイエローレッグのタークに対する憎しみの度合いは余り伝わってこない。
イエローレッグはビリーとタークを銀行強盗に誘うが、そもそも彼は銀行強盗を持ちかけるようなならず者だったのかの疑問がついてまわる。
タークへの復讐の機会を得るためだったとは思うが、そのために銀行強盗と言う犯罪を犯すと言うのは間尺に合わないように思う。
腕っぷしは強そうなイエローレッグだが右腕のハンデがあり、拳銃勝負ならビリーにはとてもかないそうにない。
それでもこの一味のボスがイエローレッグのようであるのは不可解である。
ビリーが素直にイエローレッグに従っている理由が、単に気に入っているだけなのが不思議に思える。
タークは力がないのに銀行強盗で得た金で先住民を雇い、軍隊を作って自分はその指揮官になることを夢見ている無邪気な男で、この人物のキャラクターはビリーよりも面白い存在となっている。
力の差からイエローレッグはいつでもタークをやっつけることが出来そうなものだが、そうしないのはタークに復讐することを生きがいにしてきたが、復讐を終えてしまうと生き甲斐をなくしてしまうとキットに語る。
人間、やはり生きていくためには糧だけではなく生き甲斐が必要なのだ。
自分は一体何のために生きているのか、また生かされているのかの自問は齢を重ねてきた僕にも湧き上がってくる命題となっている。
ライフワークであるとか社会貢献であるとかを真面目に考えるようになってきた。
フェードアウトしたかに見えたビリーとタークだが、予想通りイエローレッグとキットの前に舞い戻ってくる。
そこで三人の争いとなり意外な結末を迎えるのだが、その意外性とは、言い換えればあっけなさでもある。
ビリーに対する決着は面白いとは思うが、やはりあっけなさ過ぎて西部劇で味わえる醍醐味はない。
先住民の攻撃などはあるが、全体的には地味な作品で後年のペキンパーを知ってからこの作品を見た僕は物足りなさを大いに感じた。
キットがシリンゴへ向かうのは彼女の妄想なのかもしれないと思わせるのは面白いと思うので、もっと全面に出しても良かったかもしれない。
兎に角、何もかもが中途半端な印象で、ペキンパーのデビュー作でなかったら見る機会はなかったと思う。