「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」 2011年 アメリカ
監督 ルパート・ワイアット
出演 ジェームズ・フランコ
フリーダ・ピント
ジョン・リスゴー
ブライアン・コックス
トム・フェルトン
アンディ・サーキス
デヴィッド・オイェロウォ
デヴィン・ダルトン
クリス・ゴードン
ストーリー
サンフランシスコの製薬会社ジェネシス社に勤める神経学者のウィルは、ウィルスを用いたアルツハイマー遺伝子治療薬ALZ112を開発し、実験台として雌チンパンジーのブライトアイズに投与する。
ブライトアイズは密かに身籠っていた子猿を守ろうとして凶暴化し射殺されてしまった。
進めていた研究が凍結され職場を自宅へと移したウィルは、ブライトアイズが遺した雄の子猿を引き取り、その子猿をシーザーと名付け育て始める。
ブライトアイズの遺伝子を受け継いだシーザーもまた成長するにつれて母猿のような高い知性を示すようになり、やがて人間に匹敵する複雑な情緒と、手話アメスランによる会話を成立させるほどになる。
そんなシーザーの様子を見たウィルは、アルツハイマー型認知症に冒されている父チャールズを見ていられず社に秘密裏にALZ112を投与、身勝手な人体実験ながらチャールズの認知症を見事回復させる事に成功する。
さらにシーザーの怪我がきっかけで知り合った獣医キャロラインとウィルは親しくなり、二人は相思相愛の仲となってゆく。
ある日、チャールズは再発したアルツハイマーの症状により隣人とトラブルを起こし、その光景を窓から眺めていたシーザーはチャールズを守ろうとして隣人に怪我を負わせてしまう。
シーザーはランドン親子が経営する霊長類保護施設に送られたが、当初施設の猿達と上手く馴染めず、しかも横暴なランドン親子の度重なる虐待を受け、人間に対して深い失望感と憎悪を抱くようになる。
やがて、同じ施設に収容されていた、とりわけ人間から虐待されて育ったゴリラのバックや手話を使えるサーカス出身のオランウータンのモーリスと親しくなったシーザーは、群れのボス猿ロケットとのリーダー争いに勝利し新たなボス猿の地位へと収まった。
寸評
モーションキャプチャー技術によって描かれる猿の動きに違和感がなく、映像化技術の進歩に目を見張る。
ウィルはアルツハイマーの特効薬を開発している。
新薬の頭文字であるALZはアルツハイマーを表しているのだろう。
当初は高慢な科学者に見えたウィルだが、父親がアルツハイマー病を発症していることで、新薬開発に執念を燃やしている理由が補足されて、それ以降の人物的印象は随分と変わっていく。
いい側の人間はウィルと恋人となる獣医のキャロラインで、悪い側の人間は霊長類保護施設のランドン親子、特に息子の方であり、さらにジェネシス社の社長ジェイコブスであると、いたって単純な構図である。
ランドンは動物虐待を行っているし、ジェイコブスは利益一辺倒である。
この単純さは、社長ジェイコブスが一度は中止されたALZ112の開発を、ウィルが父による人体実験の結果を明かしたことですぐさま治療薬の再開発を命じるという単純さにつながっている。
えっ、そんなに簡単に決まってしまうのといった具合なのだが、深く描いても意味のないとの判断だったのだろう。
ウィル、父のチャールズ、キャロラインとシーザーの交流はお決まりの様でもあるが、アルツハイマー症状を見せたチャールズを助けようとしてシーザーが隔離されてしまう。
保護施設では人間の傲慢さが描かれるのだが、同時にシーザーがリーダーになっていく様が描かれ面白い。
シーザーは手話が出来るようになっているのだが、知能指数が高いとされるオランウータンも手話ができていたという設定はいいし、腕力では一番のゴリラがシーザーの後ろ盾になるというのもいいし、「あいつらバカか」と他の猿をバカにするのも面白い。
従来のボスがシーザーに従うようになる経緯もちゃんと描かれていて、いつ猿たちが人類に取って代わるのかと思って見ていたので、物言わぬ猿が組織化されていく様子は随分と楽しめた。
猿たちが、やがてサンフランシスコの象徴ゴールデンゲイト・ブリッジを占拠する場面の迫力はすさまじく、虐げられたものたちの魂の叫びで、押さえつけられた者の怒りが爆発するときは怖い。
被抑圧者は抑圧者を倒せと言うポピュリズムに簡単に乗るし、場合によっては革命的な反乱をも起こす。
サルたちは反乱を起こす。
シーザーはウィルの誘いを二度拒否していて、一度目は霊長類保護施設にウィルが迎えに来た時で、この時はじめてウィルに反旗を翻すことになり、ひいては人類に対する反乱の強い意志の表れでもあった。
この頃になると完全にシーザーに感情移入してしまっている。
アメリカ杉の森へ逃げ込んだシーザーが、ウィルの家へ帰ろうという誘いに「ここがホーム」だと二度目の拒否をして仲間の猿達を率いて森の奥へと消えていく。
サンフランシスコの街を眺めるところで終わりかなという雰囲気がでてエンドクレジットに入るが、ウィルの隣人のパイロットが鼻血を出すショットがあってクレジットが引き続き表示されていく。
航空網で結ばれた世界に広がっていくようにクレジットが表示されていくのだが、その事によって人類が滅亡に向かう様子を暗示していた。
「猿の惑星」の第一作目で描かれた人類滅亡のストーリーとは違うが、こちらの方が現実味があるかもしれない。
人類の滅亡と猿の支配は、偶然でも突然変異でもない“必然”だったとする本作の衝撃は、傑作SF「猿の惑星」に勝るとも劣らない。
監督 ルパート・ワイアット
出演 ジェームズ・フランコ
フリーダ・ピント
ジョン・リスゴー
ブライアン・コックス
トム・フェルトン
アンディ・サーキス
デヴィッド・オイェロウォ
デヴィン・ダルトン
クリス・ゴードン
ストーリー
サンフランシスコの製薬会社ジェネシス社に勤める神経学者のウィルは、ウィルスを用いたアルツハイマー遺伝子治療薬ALZ112を開発し、実験台として雌チンパンジーのブライトアイズに投与する。
ブライトアイズは密かに身籠っていた子猿を守ろうとして凶暴化し射殺されてしまった。
進めていた研究が凍結され職場を自宅へと移したウィルは、ブライトアイズが遺した雄の子猿を引き取り、その子猿をシーザーと名付け育て始める。
ブライトアイズの遺伝子を受け継いだシーザーもまた成長するにつれて母猿のような高い知性を示すようになり、やがて人間に匹敵する複雑な情緒と、手話アメスランによる会話を成立させるほどになる。
そんなシーザーの様子を見たウィルは、アルツハイマー型認知症に冒されている父チャールズを見ていられず社に秘密裏にALZ112を投与、身勝手な人体実験ながらチャールズの認知症を見事回復させる事に成功する。
さらにシーザーの怪我がきっかけで知り合った獣医キャロラインとウィルは親しくなり、二人は相思相愛の仲となってゆく。
ある日、チャールズは再発したアルツハイマーの症状により隣人とトラブルを起こし、その光景を窓から眺めていたシーザーはチャールズを守ろうとして隣人に怪我を負わせてしまう。
シーザーはランドン親子が経営する霊長類保護施設に送られたが、当初施設の猿達と上手く馴染めず、しかも横暴なランドン親子の度重なる虐待を受け、人間に対して深い失望感と憎悪を抱くようになる。
やがて、同じ施設に収容されていた、とりわけ人間から虐待されて育ったゴリラのバックや手話を使えるサーカス出身のオランウータンのモーリスと親しくなったシーザーは、群れのボス猿ロケットとのリーダー争いに勝利し新たなボス猿の地位へと収まった。
寸評
モーションキャプチャー技術によって描かれる猿の動きに違和感がなく、映像化技術の進歩に目を見張る。
ウィルはアルツハイマーの特効薬を開発している。
新薬の頭文字であるALZはアルツハイマーを表しているのだろう。
当初は高慢な科学者に見えたウィルだが、父親がアルツハイマー病を発症していることで、新薬開発に執念を燃やしている理由が補足されて、それ以降の人物的印象は随分と変わっていく。
いい側の人間はウィルと恋人となる獣医のキャロラインで、悪い側の人間は霊長類保護施設のランドン親子、特に息子の方であり、さらにジェネシス社の社長ジェイコブスであると、いたって単純な構図である。
ランドンは動物虐待を行っているし、ジェイコブスは利益一辺倒である。
この単純さは、社長ジェイコブスが一度は中止されたALZ112の開発を、ウィルが父による人体実験の結果を明かしたことですぐさま治療薬の再開発を命じるという単純さにつながっている。
えっ、そんなに簡単に決まってしまうのといった具合なのだが、深く描いても意味のないとの判断だったのだろう。
ウィル、父のチャールズ、キャロラインとシーザーの交流はお決まりの様でもあるが、アルツハイマー症状を見せたチャールズを助けようとしてシーザーが隔離されてしまう。
保護施設では人間の傲慢さが描かれるのだが、同時にシーザーがリーダーになっていく様が描かれ面白い。
シーザーは手話が出来るようになっているのだが、知能指数が高いとされるオランウータンも手話ができていたという設定はいいし、腕力では一番のゴリラがシーザーの後ろ盾になるというのもいいし、「あいつらバカか」と他の猿をバカにするのも面白い。
従来のボスがシーザーに従うようになる経緯もちゃんと描かれていて、いつ猿たちが人類に取って代わるのかと思って見ていたので、物言わぬ猿が組織化されていく様子は随分と楽しめた。
猿たちが、やがてサンフランシスコの象徴ゴールデンゲイト・ブリッジを占拠する場面の迫力はすさまじく、虐げられたものたちの魂の叫びで、押さえつけられた者の怒りが爆発するときは怖い。
被抑圧者は抑圧者を倒せと言うポピュリズムに簡単に乗るし、場合によっては革命的な反乱をも起こす。
サルたちは反乱を起こす。
シーザーはウィルの誘いを二度拒否していて、一度目は霊長類保護施設にウィルが迎えに来た時で、この時はじめてウィルに反旗を翻すことになり、ひいては人類に対する反乱の強い意志の表れでもあった。
この頃になると完全にシーザーに感情移入してしまっている。
アメリカ杉の森へ逃げ込んだシーザーが、ウィルの家へ帰ろうという誘いに「ここがホーム」だと二度目の拒否をして仲間の猿達を率いて森の奥へと消えていく。
サンフランシスコの街を眺めるところで終わりかなという雰囲気がでてエンドクレジットに入るが、ウィルの隣人のパイロットが鼻血を出すショットがあってクレジットが引き続き表示されていく。
航空網で結ばれた世界に広がっていくようにクレジットが表示されていくのだが、その事によって人類が滅亡に向かう様子を暗示していた。
「猿の惑星」の第一作目で描かれた人類滅亡のストーリーとは違うが、こちらの方が現実味があるかもしれない。
人類の滅亡と猿の支配は、偶然でも突然変異でもない“必然”だったとする本作の衝撃は、傑作SF「猿の惑星」に勝るとも劣らない。