おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

2024-09-06 08:13:38 | 映画
「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」 2015年 イギリス


監督 ギャヴィン・フッド                                          
出演 ヘレン・ミレン アーロン・ポール イアン・グレン
   フィービー・フォックス モニカ・ドラン
   アラン・リックマン バーカッド・アブディ
   ジェレミー・ノーサム バボー・シーセイ

ストーリー
ロンドン。
英国軍のキャサリン・パウエル大佐は国防相のフランク・ベンソン中将と協力して、英米合同テロリスト捕獲作戦の指揮に当たっていた。
アメリカ軍の最新鋭ドローン偵察機を投入、過激組織アル・シャバブのテロリストたちが潜むケニア・ナイロビの隠れ家を突き止め、イギリス、アメリカ、ケニアの司令官たちのいる各国の会議室にその映像が送られてくる。
その映像から、彼らがまさに自爆テロを決行しようとしていることが発覚する。
パウエル大佐は即座にドローンのミサイル攻撃によるテロリスト殺害作戦の決行を決断する。
パウエル大佐からの指令を受け、アメリカ・ネバダ州米軍基地の新人ドローン・パイロット、スティーブ・ワッツは空対地ミサイル・ヘルファイアの発射準備に入る。
しかし作戦決行の間際に、パンを売る幼い少女が殺傷圏内にいることが判明。
民間人を巻き添えにする可能性が出たため、ロンドンの会議室では軍人や政治家たちの議論が紛糾し、結論が先延ばしされていく。
大規模な自爆テロの決行が目前に迫っている以上、少女を犠牲にしてでもテロリストを攻撃すべきと訴えるパウエル大佐だったが…。


寸評
自爆テロを企てるテロリストのアジトをミサイル攻撃して、テロ集団の重要人物を殺害するかどうかを議論しているだけの映画なのに緊迫した空気が観客席に伝わってくる。
無人偵察機と搭載されているカメラの精度の高さは今や周知の事実としても、ドローン技術が本当にここまで進歩しているのかと驚かされる。
ここに登場するドローンは僕が想像している物とはかけ離れたものだ。
鳥の姿をしたものや昆虫を模したもので、遠隔操作が可能な超小型のカメラが取り付けられている。
鳥型ドローンはテロリストのアジトを見張り、時には羽ばたいていって部屋の中をのぞき見する。
昆虫と見間違えるものは飛んで行って家の中に侵入し、まるでカナブンがするように天井の柱に止まって室内を映し出すのである。
ナイロビにおけるその映像をロンドン、アメリカ・ネバダ州にある米軍基地、ハワイの米軍基地などで関係者が共有し、ドローンを操作しあるいは作戦を指示している。

テロリスト掃討作戦としてイギリス、アメリカ、ケニアがテレビ会議システムを使って見事な連携を見せる。
なるほど国際協力はこのような場面も生み出しているのだと知らされる。
アジトへのピンポイント攻撃も可能なようなのだが、それがそう簡単にはいかない事情が出てきて緊迫感が増していく。
テロリストたちの中にはアメリカ国籍の男やイギリス出身の女性が含まれている。
したがって当初の計画は自国の法で裁くために、ケニアの現地部隊が急襲して捕縛すると言うものであった。
しかし自爆テロを実行しようとしていることが判明して、作戦は捕縛から殺害へと変わっていく。
イギリスはもちろん、アメリカの政府機関も巻き込んで、パウエル大佐の攻撃命令を許可するかどうか大騒ぎが起きる。
ブラックジョークではない本物の議論である。
そして爆撃で民間人が巻き込まれる可能性が出てきて、さらに攻撃の手続きは複雑化していく。
作戦指示室のメンバーは自分には権限がないから責任者である大臣の許可を得てくれと言い出す。
攻撃許可を最終決定者である首相に求めても「犠牲を少なく」といった曖昧な答えしか返ってこない。
アメリカは1人の命よりテロリスト殺害の方が重要だと言ってくる。
ある者は、80名の殺害はテロリストの責任とアピールできるが、少女の殺害は自分たちの責任としてテロリストに利用されるからと待ったをかける。
パウエル大佐は、自分の爆撃主張を通すために工作まで行うが、彼女の主張が間違っているとも言い切れないものがある。
自爆テロが起きれば大勢の人が亡くなることは明白であるからだ。
だからといって少女が死んでもいいのか?の疑問はぬぐい切れない。
責任者は時として80人の命を救うために、1人の命を犠牲にする決断を迫られることもあるに違いない。
それでも誰だってそのための一人になるのは嫌だ。

アジト近くで虫型ドローンを操作する男に「それはゲームなのか」と聞くと、男は「大人のゲームだ」と答える。
実際ネットワークでつながれた世界で遠隔操作しながらピンポイント爆撃を実行する様はゲームの様である。
確かに彼等は安全な場所から攻撃し、軍人は犠牲に放っていないのだが、攻撃現場では巻き添えを食った民間人が死亡している。
現代の戦争では多大な犠牲を強いられるのは軍人ではなく民間人なのだと言わざるを得ない。
希望を持てないし、後味がいい映画ではないが、今どきの映画として迫ってくるものがある。
秀作である。


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