おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

スタンド・バイ・ミー

2019-08-25 09:21:32 | 映画
「スタンド・バイ・ミー」 1986年 アメリカ


監督 ロブ・ライナー
出演 ウィル・ウィートン
   リヴァー・フェニックス
   コリー・フェルドマン
   ジェリー・オコンネル
   キーファー・サザーランド
   ケイシー・シマーシュコ
   ゲイリー・ライリー
   ブラッドリー・グレッグ
   ジェイソン・オリヴァー

ストーリー
作家ゴーディ・ラチャンスが、遠い過去の日を思い起こすきっかけになったのは、ある新聞記事に目を止めたことだった。
“弁護士クリス・チャンバース刺殺される”――。
オレゴン州キャッスルロックは人口1200あまりの小さな町。
12歳のゴーディは、文章を書くことに才能の片りんをのぞかせる感受性豊かな少年だった。
彼には春に小学校を卒業以来、いつも一緒の3人の仲間がいた。
リーダー格のクリス、大きなメガネをかけたテディ、ちょっとスローなバーン。
性格も個性も違う4人だが少年期特有の仲間意識で結ばれていた。
ある日、バーンが耳よりの情報を持ってきた。
ここ数日、行方不明になって話題となっている少年が、30キロ先の森の奥で列車にはねられ、その死体が野ざらしになっているというのだ。
少年たちは死体を発見したら町の英雄になれる!と初めて体験する大冒険の旅に出る・・・。


寸評
成人男性の多くは子供時代の冒険体験を少なからず有しているのではないか。
昨今の都市部ではそんなことをしている子供も少なくなったが、僕が子供の頃は田んぼに積まれた藁の中だとか、畑にあった垣根の片隅などに秘密基地などを作って遊んだものだ。
ここに出てくる少年たちも秘密の小屋らしきところに集まって遊んでいる。
そのこと自体が小さな冒険なのだが、彼等は行方不明になっている少年の死体を発見するために、両親に嘘をついて泊りがけの大冒険に出かける。
大冒険に出かけるワクワク感がふつふつと湧いてくるし、その間のやり取りが少年時代を思い起こさせノスタルジーに浸らせてくれる。
少年時代に一緒に遊んだ無二の友達も、大きくなるにつれて疎遠になっていったりするが、いつも一緒でバカをやっていた旧友は忘れることが出来ないものだ。
そんな子供時代を振り返った冒険物語としてはバイブル的な作品になっている。

子供たちのキャラクターも振り分けられていて、決して誇張することのない自然体の少年として描かれている。
ゴーディは自分を理解してくれていた兄を交通事故で亡くしている。
両親はフットボールの花形選手だった兄に期待を寄せ、ゴーディには関心を寄せていない。
夢の中の妄想かもしれないが、父親から「死ぬのがお前だったらよかった」と言われている。
町の人たちも兄への賛辞を惜しまず、常に優秀だった兄と比較されることに鬱積したものを感じている。
理解者だった兄がいなくなったゴーディにとって、唯一の理解者が仲間のリーダ格クリスだけとなっている。
物語はそんなゴーディの回想として描かれていく。

クリスは家庭事情もあって乱暴者だが、大人びた意見でゴーディを励ましたりしている。
観客は冒頭で大人になったクリスの職業と死を知らされているから、4人の少年を見るにあたってはこのクリス少年が大きくなって不慮の死を遂げることを予期しながら見ている。
そうなるだけの見識と根性を子供時代から持っていたのだと感情移入できる。
クリスが給食費を盗ったエピソードに大人の汚さを示し、ワルと見られている彼等の純真性を描いていた。
クリス少年のリヴァー・フェニックスはリーダー格としての見事なキャスティングであった。

彼等4人は煙草を吸ったりする不良グループなのだろうが、彼等に比べると兄貴たちはどうしようもない不良グループで、そうすることで4人の正当性を高めていたように思う。
お道化たところのあるバーンは怖がりな少年であり、テディは父親をノルマンディの英雄として尊敬している。
成人したバーンが結婚して子供も生まれ製材所で働いていること、テディは軍隊に入りたかったけれど目が悪くて入隊できず、刑務所のお世話になったこともあるが今は出所していることなどがナレーションされるが、そのナレーションになぜかグッとくるものがこみ上げてきた。
そしてゴーディは物書きになっているらしくて、彼らが冒険旅行をした時と同じような子供がいるという世代の輪廻を感じさせるラストと、文句なく「スタンド・バイ・ミー」の歌声が素晴らしい。
「スタンド・バイ・ミー」と聞くだけで、脳裏には映画よりもテーマ曲が流れてきてしまう名曲となっている。


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2 コメント

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「スタンド・バイ・ミー」について (風早真希)
2024-07-14 16:38:40
この映画「スタンド・バイ・ミー」は、男であれば、誰でも心の中で、そっと追憶の涙を流すだろうと思う程、いい映画ですね。

原作は、スティーブン・キング。恐怖小説の第一人者ですが、この作品はがらりと違って、少年期への限りない愛着を込めた、追慕の詩になっていると思います。

"私の傍らにいて"-------友情と未知への憧れと、人生の希望に満ちた少年時代。
この映画は、大人の心を通して、人生のかけがえのない時期を振り返っていきます。

オレゴン州の片田舎。仲のいい四人の少年。彼らは、ある冒険旅行に出発します。
山の奥に、行方不明になった少年の死体があるという噂を聞き、自分たちが発見して届ければ、町の英雄になれるというわけです。

家庭の事情も性格も、それぞれに違う四人の少年。
彼らにとって、この町こそ"世界"であり、町を出ることは、"世界"を飛び出す大冒険だったんですね。

私自身にも憶えがあります。少年時代のバラ色の記憶が-------。
山の中を走り、川をさかのぼり、列車の線路をたどった大冒険の日々。
この四人の少年の行動には、そのまま私のノスタルジイが、走馬灯のように重なります。

考えてみれば、少年というものは、冒険によって成長するもの。
少年時代とは、行動によって、友情が結ばれるもの。
そして何より、その一つ一つの記憶が、人生の基本を創っていくものだと思います。

この映画が、たまらなく私の心を濡らすのは、この点なんですね。
オレゴン川の山河を捉えた、みずみずしい画面が、その想いを増幅するのです。
そのみずみずしい画面を紡ぎ出す、ロブ・ライナー監督の映像感覚の見事さ。

そして、映画の前後に、ほんの少し姿を現わす、作家役のリチャード・ドレイファスが、実にいいんですね。

短い出演場面で、堂々の存在感を示してくれます。
画面全体をひきしめ、彼の存在があってこそ、少年期の意味が、私の心に深く、深く、焼き付いて離れません。
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子供時代の冒険体験 (館長)
2024-07-15 07:35:58
今の子供たちに冒険体験をする余裕があるのでしょうか?
親も冒険体験を許さないのではないか。
男の子は皆ナイフを持っていて、柳の枝を切って皮をむいて刀としていた。
皆でザリガニを獲って甘辛く煮て畑で食べた。
休みの日は秘密基地に集まって漫画雑誌を回し読みした。
今は自宅でネットゲームに興じているのでしょうか。
テレビもなかったので、野外で遊ぶしかなかったのだが、それが高じて冒険になっていたような気がします。
なつかしいですねえ・・・。
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