おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

スティング

2019-08-26 09:03:22 | 映画
「スティング」 1973年 アメリカ


監督 ジョージ・ロイ・ヒル
出演 ロバート・レッドフォード
   ポール・ニューマン
   ロバート・ショウ
   チャールズ・ダーニング
   アイリーン・ブレナン
   レイ・ウォルストン
   サリー・カークランド
   チャールズ・ディアコップ
   ダナ・エルカー
   ディミトラ・アーリス

ストーリー
<下ごしらえ> 1936年。シカゴに近いジョリエットの下町で道路師と呼ばれる詐欺師3人が通りがかりの男から金を奪った。数日後、主謀者のルーサーが死体となって見つかった。大組織に手を出した当然のむくいとしてルーサーは消されたのだが、組織の手は一味の1人フッカー(ロバート・レッドフォード)にものびていた。
ルーサーの復讐を誓ってフッカーはシカゴのゴンドルフを訪ねた。
親友の死を知ったゴンドルフ(ポール・ニューマン)は、相手がロネガン(ロバート・ショウ)と聞き目を輝かせた。 <シナリオ> 二人は、ロネガンがポーカーと競馬に眼がないこと、近くシカゴを訪れることなどを調べ上げた。ゴンドルフは急ぎ昔の仲間を集め、シカゴの下町にインチキノミ屋を構えた。
<ひっかけ> シカゴに向かう列車の車中で、ロネガンはいつもポーカー賭博をやると聞いたゴンドルフは、その仲間入りをし、いかさまでロネガンを大きくへこませた。しかも、ロネガンのサイフはゴンドルフの情婦にスリ取られていたために負け金を払うことも出来ない始末だった。
<吊り店> 翌日、ロネガンの宿にゴンドルフの勝金を取りにきたフッカーは、ゴンドルフのポーカーがイカサマであることを告げ、頭にきたロネガンに負け金の何十倍も稼げる話を持ち込んだ。
<しめ出し> だが、彼らの活発な動きはFBIの目にとまり始めていた。フッカーを追うスナイダー(チャールズ・ダーニング)という悪徳警官もうろついている。
そしてついに、50万ドルの大金を注ぎ込むことにしたロネガンは、自らノミ屋に出向いた。
<最後にぐっさり> ・・・・・・。


寸評
ジョージ・ロイ・ヒルは以前に「明日に向かって撃て!」というノスタルジックな西部劇の傑篇を撮っているが、この作品でも「明日に向かって撃て!」のコンビであるポール・ニューマンとロバート・レッドフォードを起用して、同じような雰囲気を出しながら、一大ペテン師絵巻を繰り広げている。
ジョージ・ロイ・ヒルの代表作は結局「明日に向って撃て!」と、この「スティング」ということになって、たった2本で名監督の仲間入りをしたと思う。

ピアノに乗ってクラシック風なテーマ曲が流れ、そのメロディと共に映像でもってキャストが紹介される。
ノスタルジックなタイトルバックに続いて、やがて我々はクラシックなシカゴの町へ誘われていく。
そしてオープニングから本当に誘われたのは心地よさが生じた映画の世界だ。
その後も軽快な音楽に乗ってとんでもないペテン師劇場が繰り広げられていく。
詐欺のためのセット作り、あるいはでっちあげた場所を乗っ取るための手際の良さなどが面白い。
その手際の良さを画面のスピーディな展開が後押しして、一層手際の良さを際立たせている。

ヘンリー・ゴンドルフ(ポール・ニューマン)が列車の中でロネガン(ロバート・ショウ)にポーカーを使ってイカサマを仕掛けるシーンなどは娯楽映画の極地を行っている。
このシーンでは何と言ってもポール・ニューマンの仕草が滑稽だ。
わざと酒を飲んできて、水で薄めた酒瓶をあおりながらポーカーに興じる。
彼の後ろにはロネガンの手下がいるので、手の内を見られないようにコソッとカードを見る。
その様子がとんでもなく愉快だ。
ジョニーをやったロバート・レッドフォードもいいが、流石にポール・ニューマンのカッコ良さには及ばない。
そんな風に感じたのはポール・ニューマンの大ファンである僕のえこ贔屓か?
その愉快なポーカーシーンと同時に、ペテンの舞台が整えられていく。
ペテン師の面接を初め、セットを造っていく様子などへの場面切り替えもテンポがよく、そのテンポにつられるように観客である僕はウキウキしだす。
ヘンリー・ゴンドルフの愛人が飛びきりの美人でないのも雰囲気を出していたなあ。
なかなか度胸が据わっていてハッタリの効く姉御だった。

練られた脚本は幾重にも伏線を張り巡らしている。
詐欺師のジョニーは刑事のスナイダーに追われ続けている。
またジョニーはロネガンの金を奪ったことから、彼の手下にも追われているのだが、彼の顔をロネガンは知らない。
ロネガンはジョニーを殺すために、より優れた暗殺者を送り込んでくるが、それが誰かは謎のままである。
ヘンリー・ゴンドルフは議員をハメたことからFBIにも追われている。
それらの伏線がすべて一直線上に並んでくる醍醐味を見せつけるのがすごい。
最後はあっと驚く代打逆転満塁ホームランだ!


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2 コメント

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「スティング」について (風早真希)
2024-07-01 23:36:45
このジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」は、終始、映画の面白さと遊び心に徹底している、素敵な映画でしたね。

大不況下の1936年、禁酒法が解けて、競馬ブームに入りかけていた頃のシカゴのポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコン・メン(詐欺師)が、ニューヨークの残酷なロキティーア(テキ屋)のロバート・ショウの親分から50万ドルを、命懸けで騙し取るというだけのお話ですが、最後には、我々観ている者までが、ペテンにかけられてしまうんですね。

このコン・メンというのは、コンフィデンス(自信、信用)から出た言葉ですが、スイッチ(すり替え)から始まって、競馬のノミ屋全部が偽物という、大掛かりなワイアー(吊り店)に至るまで、人をペテンにかける、コン・メンのテクニックは、奇想天外で、痛快でさえありましたね。

ギャングスターが横行した、この時代にあって、コン・メンは、残虐行為を軽蔑し、粋を誇ったと言うが、その活躍の舞台であった、デラックスな長距離列車や豪華客船は無くなってしまい、愛すべきコン・メン達も今やいなくなりました。

社会の歪みの中にも、何か人間的な余裕があった1930年代の映画が、この映画の公開された1970年代の前半に、盛んに製作されたんですね。

ロバート・レッドフォードだけをとっても、彼は「追憶」、「華麗なるギャツビー」と続けて、"アメリカの失われた時代"である、1930年代を背景にした映画に出演して、ブームを呼んでいましたね。

この年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞の呼び声が最も高かった「エクソシスト」が、この「スティング」に敗れ去ったのは、映画の観客が、映画に求めるものは、やはり、面白さであり、明るさであり、スマートさであるという、アメリカらしい選択の結果なのだと思いますね。

尚、この映画の題名の"スティング"とは、俗語で「騙し取る」ことだそうですが、「とどめの一突き」という意味の方が、内容的にぴったりくるような気がします。

デビッド・S・ワードの緻密な脚本は、スコット・ジョプリンのクラシック・ジャズ・ピアノにのって、歯切れよく舞台を展開しながら、最後のスティングに追い上げていますね。
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ドンデン返し (館長)
2024-07-02 07:30:53
アッと驚くドンデン返しの名作として、私はこの「スティング」と「テキサスの五人の仲間」を推奨しています。
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