おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

男たちの挽歌

2022-03-25 07:02:12 | 映画
「男たちの挽歌」 1986年 香港


監督 ジョン・ウー
出演 チョウ・ユンファ
   ティ・ロン
   レスリー・チャン
   エミリー・チュウ
   リー・チーホン
   ケン・ツァン

ストーリー
ホーは香港の紙幣偽造シンジケートに属するヤクザで、闘病中の父と学生である弟キットの面倒を見ていたが、弟が警官になる希望を持っていることで病床の父から足を洗うよう頼まれる。
キットは兄が相棒のマークとともにボス・ユーの片腕的存在だとしらず恋人ジャッキーをホーに紹介した。
組織の仕事で台湾に飛んだホーは、これを最後の仕事として闇社会から足を洗おうと決意していた。
しかし取り引きは密告によって警察に知られており、同行した後輩シンを逃しホーは自首することになる。
そのころ、香港ではホーを憎む組織の刺客がホーの留守宅を襲い、父を殺されたキットはそのことで尊敬する兄が香港マフィアと知る。
“ホー逮捕”の記事を読んだマークは復讐を決意し台湾に向かい、乗り込んだレストランで敵を皆殺しにしたものの組員の銃弾を受けて右足を傷めてしまう。
そして3年。台湾で刑期を終えて香港に戻ったホーは、今では警察官になり結婚もしているキットから、父親の死の責任とマフィアの兄を持つことから出世の出来ない不満をぶつけられた。
そんなある日、自分のために負傷し落ちぶれたマークとばったり会ったホーは、弟のためにもニセ札組織壊滅に動き出すが、今、組織を取り仕切っているのは、かつて舎弟扱いをしていたシンだった。
彼が組織の悪事が外にもれることを恐れてマークを襲ったことでシンに対するホーの怒りが爆発する。
ホーはキットにニセ札組織壊滅の手柄を立てさせ、シンから金を奪ってマークと共に香港からの脱出を企てる。
したたかなシンは大ボスのユーを殺し、すべての罪をホーの仕業とみせかけ暗黒街を支配しようとしていた。


寸評
香港ノワールとしてはベタな内容だが、火付け役となるだけの雰囲気は兼ね備えていて一応の及第点はある。
兄はマフィアで父親もかつてはマフィアの一員だったらしく兄がマフィアであることを知っている。
警察官を目指している弟だけがその事実を知らない。
その家族関係がどのようにして出来上がったかの説明がないので、兄と弟の関係悪化に至る描写は奥深いものではない。
偽札を扱うマフィア組織は偽装しているのか、えらく明るい普通のオフィスで、社員が明るくホーやマークに挨拶しているのだが、二人とも黒ずくめに黒サングラスで、めっちゃ怪しい格好をしている。
それでもオフィスの人々は裏稼業を知らず、ホーやマークを普通の会社の役員とでも思っていたのだろうか。
マフィアが父親を襲う場面や銃撃戦シーンなどは滑稽であったり、漫画的であったりしてリアルさを感じない。
数え上げればきりがないツッコミどころ満載の映画なのだが、場面展開がテンポよく進んでいくので、見ているうちは疑問を挟んでいる暇がない。
そこがいいところだ。

ストーリー的にホーのティ・ロンが主役なのだろうが、一見そこいら辺にいる普通のオッサンという印象で凄みに掛けるのが作品を弱くしているかも。
悩める兄を描くために、あえてアクのないティ・ロンを起用したのかもしれないなとは思う。
逆に準主役ながら、マッチ棒をくわえて二丁拳銃をぶっ放すマークに扮するチョウ・ユンファがカッコイイ。
キットに説教するところや死にざまを見ると、むしろこちらを主役にしたほうがと思わせ、ユンファは儲け役である。
ホーが服役している間にのし上がったシンのレイ・チーホンも線が細く、全体的に凄みを感じさせるキャスティングとはなっていないという印象がある。

マークはマフィアから磁気テープを奪うが、一体あの磁気テープには何が記録されていたのだろう。
悪事がすべてバレてしまう内容のようなのだが内容はわからない。
磁気テープの争奪戦がもっとあっても良かったように思う。
最後の銃撃戦は、もう無茶苦茶だ。
銃撃戦はマンガの世界で、足が悪かったマークが走り回っているという状況である。
爆発的な攻防戦があった後なので、ラストシーンのストップ・モーションは男の哀愁を感じさせた

香港ノワールとして評価が高いようだが、僕はそれほど評価しない。
後年送り出された「インファナル・アフェア」などの作品に比べると粗雑感をぬぐい切れないのだが、それは制作年度によるものだろうか。
「男たちの挽歌」のような作品があったからこそ、後年にハリウッドも顔負けと言う作品が撮られるようになったのかもしれない。
カンフー映画しか知らなかった者に、ノワール作品だってあるぞと知らしめた作品ではある。
その意味では香港映画における歴史的作品と言えるかもしれない。