「マッケンナの黄金」 1969年 アメリカ
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監督 J・リー・トンプソン
出演 グレゴリー・ペック オマー・シャリフ テリー・サヴァラス
キーナン・ウィン カミラ・スパーヴ リー・J・コッブ
レイモンド・マッセイ バージェス・メレディス
ストーリー
1872年、アメリカの南西部。
荒涼たるキャニオンにある小屋は異様な雰囲気に満ちていた。
インディアンが隠した黄金を探し求める無頼漢コロラドと騎兵隊上がりのディブスなどの部下の一団、それに、黄金の谷への道を知って捕虜にされた保安官のマッケンナ。
古くからの因縁でコロラドはマッケンナへの復讐を思っているのだが、殺せば黄金の谷への道が分からなくなるというので、コロラドはいらだっていた。
もう1人の捕虜である判事の娘インガは、少し前にコロラドに父を殺されていた。
そして、そのインガにマッケンナの気持ちが傾いているのを悟った、マッケンナの以前の恋人ヘシュ・ケはいつかインガに復讐しようとしていた。
こうした内部の葛藤の外に彼らは、アパッチ族の襲来を防がねばならないのである。
そこへさらに黄金にとりつかれた町のおえら方たちも現れた。
こうして黄金を求めて集まった20名ばかりの男女の間には、欲とエゴを中だちとする不気味な均衡が保たれていた。
だが、フロンティアたちの黄金への夢はそれ自体が彼らに血を流させ、互いに殺し合いをさせる要素であった。
マッケンナとコロラドの命を賭けた死闘が、そしてインガとヘシュ・ケの戦いが……。
そこへ怒涛のようにアパッチが襲来してきた。
激しい争い後、マッケンナ、コロラド、ディブス、インガの4人が生き残り、そして黄金は彼らの手に入った。
が、その時地震が起こり、命からがら逃げたのはマッケンナとコロラドだった・・・。
寸評
様々な要素が盛り込まれた冒険アクションだが完全昇華するにはもう一工夫欲しかった印象がぬぐえない。
オマー・シャリフ演じるコロラドは保安官に追われる身のようなので悪党なのだろうが、これが極悪非道の悪党というよりは人のいい小悪党のようで、感情移入は出来ないが憎めない所がある。
したがってマッケンナ、インガを伴っての道行に緊迫感がない。
そうなってくると、アパッチの襲撃や騎兵隊の追跡から逃れるアクションシーンが期待されるのだが、両者との銃撃戦は行われない。
騎兵隊が銃撃戦を繰り広げるのは、市民を含む後から加わった連中で、彼等は騎兵隊に壊滅状態にされる。
そもそも市民がコロラド一味に合流する意味がよく分からない。
欲が絡んでのことなのだろうが、何かのんびりした雰囲気が漂ってしまっている。
生き残りはアパッチ族に襲われ全員が死んでしまうことになるが、印象的には急に登場して急に消え去った。
メインは欲に取りつかれた男たちの右往左往なのだが、変化をつけているのが女たちの争いだ。
どうやらマッケンナとインディアン女性のヘシュ・ケは以前に関係があったようだが、あるいはヘシュ・ケの片思いなのか、未だにヘシュ・ケがマッケンナに思いを寄せている。
過去の出来事としてヘシュ・ケの兄の自殺がマッケンナの口から語られるだけで、その他は描かれていないからヘシュ・ケとマッケンナの気持ちのすれ違いが上手く伝わってこなかった。
白人女性のインガが登場しマッケンナといい雰囲気になっていくのをマシュ・ケが快く思わず、インガに対して嫉妬心を燃やし敵対するのはごく当然の展開で目新しくはない。
黄金の谷の場所を知っているのがマッケンナだけというので、マッケンナを生かしておかねばならず、マッケンナは場所にたどり着けば銃とインガを引き渡すという条件を出しインガを守るなど、欲とエゴが絡み合って仲間の微妙な関係が保たれる設定なのだが、途中で加わる別の一団や、騎兵隊の軍曹が変節して仲間に加わるなど、緊迫感を生み出すはずの微妙な関係に間延び感が生じていたのはおしい。
インガが判事の娘だと判明しても大した出来事を引き起こさなかった。
黄金を前にして人々の心が揺れ動く。
インディアンは精霊に忠実になろうとするし、インガも黄金を手に入れたいと思うようになる。
ヒロインであったはずのインガですら黄金の魅力に取りつかれる展開は面白かったが、あれ以上描くと別な映画になってしまってバランスを欠いたのかもしれない。
見せ場はやはり最後のスペクタクルだろう。
これがなければ「マッケンナの黄金」は通俗のB級映画に過ぎなかっただろう。
まずは揺れる岩の影が谷への入り口を指すのだが、それならば当然日にちが関係してくるはずで、春分の日であるとか秋分の日でなければならないとかの設定がないのは脚本不足だと思う。
よくわからないのは、マッケンナとインガが何のために岩場を登ったのか、また何のためにコロラドはマッケンナたちを追ったのかだ。
逃げ道が上にあるからだと思っていたら、結局下へ降りてきた。
地割れが起きるミニチュアセットはもう少し樹木にリアル感を出して欲しかったが、金の鉱脈が崩れた岩に埋もれていく迫力だけは見所となっている。