ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

悪しき慣習

2022-08-10 07:53:47 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「公開を」8月3日
 『厚労省 依然残業続き 国会答弁作成負担 タクシー代年2.6億円』という見出しの記事が掲載されました。『働き方改革の旗振り役の厚生労働省で、依然長時間勤務が常態化している』ことを報じる記事です。記事ではその原因として、『省庁職員の残業が一気に増えるのは国会開会中だ(略)拍車をかけるのが国会議員における質問通告の遅れ。衆院によると、通告期限は2日前の正午までが原則と申し合わせている。しかし守られないことが多い(略)質問通告が出そろったのは平均で前の日の午後6時46分だった』をあげています。
 嫌でも思い出してしまいました。教委勤務時の議会対応を、です。そこでも全く同じ図式があったのです。質問通告の締め切りは2日前の16時でした。しかし、ほとんどの場合、そこで分かるのは、指導室関連の質問があるということだけです。そんな知らせは何の役にも立ちません。質問がないことなど一度もなかったのですから。
 その日は23時くらいまで待機します。そして結局、「今回も質問出なかったな」とこぼしながら退庁していくのです。そして次の日は朝から質問待ちです。この日はそれ以外の業務はほとんど停滞状態です。学校訪問したり、各種委員会に参加したりすることもできません。係員が30分おきに、議会事務局を訪ね、進捗状況についての情報を探ります。
 おおよそどの分野の質問か分かれば、資料を整えたり、情報を収集したりできるからです。ようやく勤務時間が終わるころ、「概要」と称するものが出てきます。・小学校教育について・中学校教育について・小中の連携について、というような内容で、実質ゼロ回答です。教育委員会の指導室なのですから、学校教育についての質問に決まっていますし、小中学校を所管しているのですから、高校や大学についての質問が出るわけはないのですから。こんな「概要」でも、議会事務局の職員が、各部課の悲鳴にも似た声に押され、議員に頭を下げてくれた成果なのです。
 そして、勤務時間が終わり、コンビニで買ってきたおにぎりなどを食べながらひたすら待っていると、9時近くになって、やっと質問通告が来ます。しかしその内容も、「学校教育が、期待される成果を上げるためには、教員の資質向上が重要であると考える。教員の資質向上のための取り組みについて問う」というようなラフなものです。
 仕方なく、教員研修の基本的な考え方や研修の実施状況など一般的な答弁を用意します。その日も終電ギリギリでの帰宅です。そして議会当日の朝、やっと質問全文が届きます。そこに書かれていたのは、「先週、A小学校で教員による体罰があったと聞いている。教員による体罰は重大な人権侵害であり、許されることではないと考える。体罰の背景には、教員の自覚の乏しさ、指導力の不足など、教員の資質の問題があると考える。体罰根絶に向けた、教員の資質向上のための対策として、今までの取り組みとその成果及び課題、今後の研修の在り方について問う」といった内容でした。
 確かにこれも教員の資質についての質問ですが、準備しておいた答弁案は全く役に立ちません。午後1時からの開会までに急遽答弁書を作成し直し、決裁を受けなければなりません。A校での体罰についても緊急に聞き取りをしなければなりません。午前中いっぱいかかりきりになります。そして、その日の議会日程が全て終わった後、3日間分溜まった仕事を片付けるため、またコンビにおにぎりを食べながら残業ということになります。
  おそらく厚労省をはじめとする各省の実態もこれをさらに上回るものでしょう。こうした悪弊を正さないと公務員の疲弊は募り、優秀な人材は逃げていきます。そのための改善策は、こうした実態を白日に晒すことです。議員による質問通告の現状を公開し、何党のどの議員が、どのような質問通行を、いつ提出し、その後何回修正したかということを議会終了後一定の期間を経てから公開することです。そうすることによって、役所いじめのような実態を明らかにすべきです。実際、単に困らせようというだけの理由で通告を遅らせたり、不備な答弁になるようにすることで追及姿勢をアピールしようとする動機による、通告ルール無視は少なくないのですから。
 こうした悪しき慣習による事務局の疲弊は結果として、市民に損失を与えるのです。教育委員会ならば、子供たちに。そのことを忘れてはなりません。

 

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