ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

「お若い」は年をとっているということ

2024-07-13 08:33:48 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「お若い」7月6日 
 書評欄に、芸人ヒコロヒー氏による、『「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション 人種、ジェンダー、性的指向:マイノリティに向けられる無意識の差別」デラルド・ウィン・スー著、マイクロアグレッション研究会訳、明石書店』についての書評が掲載されました。
 マイクロアグレッションとは、『些細な攻撃。無意識の偏見や思い込みが言葉や態度に表れ、否定的なメッセージとなって伝わり、意図せず誰かを傷つけてしまう』という意味だそうです。ヒコロヒー氏はご自身の体験として、『君は女性だけど男脳だから話が早いね』『君は日本人だけど物事をハッキリ話すね』を挙げ、いずれも褒めようとした表現だということは分かるが、嬉しく感じられないと述べています。
 分かります。そして、さらに、ヒコロヒー氏が、『マイクロアグレッションにより傷付いた「被害者」に対して周囲は「相手に悪気はなかったのだ」「事を荒立てないほうがよい」と諭す。もちろん彼らにも悪気はないのだが、これがとても気を付けなければならない怖いところだと感じた。心理的に重大な影響を受けた被害者の心までも否定されかねず、ひいては「被害者を非難する」構図まで生まれかねない』と書かれていることもよく理解できます。
 私も、マイクロアグレッションをしてきたことに気づかされました。猛省です。私流の解釈ですが、マイクロアグレッションとは、「~なのに」「~だけど」「~であるにもかかわらず」など、「~」に否定的な事実を述べ、そうした状況や環境であればマイナスの行動や結果、能力が現れるのが当然ということを示唆した上で、でもあなたは違うと持ち上げるという言動だと思います。
 これが問題なのは、~の部分が、レッテル貼りという偏見であり、その偏見を堂々と口にすることができてしまうということです。
 女性は判断力が劣りなかなか決断できない、というのは女性を一括りにし、女性の中にも様々な個性があるという当然のことを無視した偏見です。さらに、女性は決断が遅いということを示す客観的なデータもなく、偏った思い込みに過ぎません。そして、こうした思い込みや偏見は、現代社会に生きる常識ある人間であれば、本心ではそう考えていたとしても、人前で堂々と口にすることが憚られます。
 しかし、「君は話が早い」と相手を褒めるという「良い行い」をするという前提があると、心理的な抵抗なく口にすることができてしまうということになりがちです。その結果、女性は決断が遅いという間違った見方、捉え方を広く世間に伝播させることになってしまうのです。
 教員がこうした言動をした場合、言われた子供がモヤモヤとした違和感を抱いてしまうことが問題なのは言うまでもありませんが、この発言を聞いていた周囲の子供に「女の子は決断力が劣っているんだ」という誤った認識をもたせ、「なかなか決められない方が女の子らしくて可愛いんだ」などと間違った意識を植え付けてしまうことになります。
 しかも、マイクロアグレッション的な言動を責められたときにも、そもそも「褒める」という善行を行うためだったのだから、と自分を弁護し、反省せず、行動を改められないということになりがちです。最悪です。
 教員こそ、常にマイクロアグレッションへの自戒をもち続けなければなりません。

 

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