「職業蔑視」2月23日
元祖民間人校長ともいうべき藤原和博氏が、仕事について中学生向けのコラムを書かれていました。その中で藤原氏は、ビル・ゲイツが財団を作りボランティアを始めたことを紹介し、それに続けて『アップルやグーグルを退職したエリートたちもインドやバングラデシュで続々と社会起業をしています。社会起業というのは、福祉や教育を含め、社会の諸問題を解決するためのビジネスを起こすこと。これって、公務員より格好いいかもね』と書き、コラムを締めくくっていました。
私は、公立学校の教員から教委に勤務した元公務員です。そんな私からみると、この文章は大変不快でした。なんでここに唐突に公務員が出てくるのか、と思ってしまったのです。どうして比べられるのが、会社員でもなく、農業従事者でもなく、個人商店の経営者でもなく、スポーツ選手でも芸能人でもなく、公務員なのかと考えたとき、ある想像が浮かびました。
近年、長引く不況を背景に若者の安定志向が問題視され、倒産しないことを理由にした公務員志望者が増加していることがその象徴とみなされています。若者らしいチャレンジ精神をもて、という主張の裏返しとして公務員志望が非難され、公務員そのものまで「好ましくないもの」とされているのではないか、というのが私の想像です。
藤原氏個人がそう思われ、自分の考えに基づいてコラムを書かれるのは仕方がないことです。しかし、私がこの文章に着目したのは、こうした「公務員になりたがる若者なんて…」という価値観が、学校における職業についての学習においても広がっているのではないかという危惧があるからです。
そもそも教育という行為そのものの中に、「刷り込み」とか「洗脳」とかいう要素が含まれやすい性質があります。それらは適切な指導と紙一重であり、その境界はあやふやな状態です。そんな中、指導をする教員に、実現できるかどうか分からない夢に向かって一生懸命になるのは若者らしい行為で教え子にはそんな若者になってほしい、というような価値観が広がっているとしたら、実際に多くの人が実現しているありふれた将来像を描くなんてつまらない奴だという見方が一般的になっているとしたら、それは由々しき問題だと思います。
公務員は全体の奉仕者です。経済的な損得を離れ、国民のために尽力する尊い仕事です。今、こんなことを言うと笑われそうですが、本質的には間違いではないはずです。優秀な人材が公務員を避けるような事態は、社会にとっても好ましいものではないはずです。中学校の職業教育は大丈夫でしょうか。
元祖民間人校長ともいうべき藤原和博氏が、仕事について中学生向けのコラムを書かれていました。その中で藤原氏は、ビル・ゲイツが財団を作りボランティアを始めたことを紹介し、それに続けて『アップルやグーグルを退職したエリートたちもインドやバングラデシュで続々と社会起業をしています。社会起業というのは、福祉や教育を含め、社会の諸問題を解決するためのビジネスを起こすこと。これって、公務員より格好いいかもね』と書き、コラムを締めくくっていました。
私は、公立学校の教員から教委に勤務した元公務員です。そんな私からみると、この文章は大変不快でした。なんでここに唐突に公務員が出てくるのか、と思ってしまったのです。どうして比べられるのが、会社員でもなく、農業従事者でもなく、個人商店の経営者でもなく、スポーツ選手でも芸能人でもなく、公務員なのかと考えたとき、ある想像が浮かびました。
近年、長引く不況を背景に若者の安定志向が問題視され、倒産しないことを理由にした公務員志望者が増加していることがその象徴とみなされています。若者らしいチャレンジ精神をもて、という主張の裏返しとして公務員志望が非難され、公務員そのものまで「好ましくないもの」とされているのではないか、というのが私の想像です。
藤原氏個人がそう思われ、自分の考えに基づいてコラムを書かれるのは仕方がないことです。しかし、私がこの文章に着目したのは、こうした「公務員になりたがる若者なんて…」という価値観が、学校における職業についての学習においても広がっているのではないかという危惧があるからです。
そもそも教育という行為そのものの中に、「刷り込み」とか「洗脳」とかいう要素が含まれやすい性質があります。それらは適切な指導と紙一重であり、その境界はあやふやな状態です。そんな中、指導をする教員に、実現できるかどうか分からない夢に向かって一生懸命になるのは若者らしい行為で教え子にはそんな若者になってほしい、というような価値観が広がっているとしたら、実際に多くの人が実現しているありふれた将来像を描くなんてつまらない奴だという見方が一般的になっているとしたら、それは由々しき問題だと思います。
公務員は全体の奉仕者です。経済的な損得を離れ、国民のために尽力する尊い仕事です。今、こんなことを言うと笑われそうですが、本質的には間違いではないはずです。優秀な人材が公務員を避けるような事態は、社会にとっても好ましいものではないはずです。中学校の職業教育は大丈夫でしょうか。