「論理とカン」11月25日
心療内科医の海原純子氏が、『エビデンスに基づく仕事』という標題でコラムを書かれていました。エビデンスとは「根拠」のことで、コラムの中で海原氏は、『アメリカで研究活動をしている間、なにかというと「エビデンスは?」ときかれた。その問いに対する論理的な回答とデータ、参考文献をきちんと準備するのがいつか習慣となり体に染み着いて今も続いている』と述べています。
これは我が国ではあまりきちんと根付いていない「文化」だと思います。海原氏はその具体例として、田中文科相の大学設置不認可騒動をあげています。『大学の質の低下の基準はなになのか、大学の数と質の低下の相関のエビデンスは示したのか、審議会委員に大学関係者が多いと反対しにくいいうのはデータをとって証明されているのか、、逆に関係者が少なく部外者が多いといい決定ができるというデータはあるのか』と米国の大学教授らが議論していたというのです。
反省させられる話です。私はこのブログで、学校教育について、様々な意見を述べてきました。それらはほとんどすべて、「エビデンス」に基づかない、『あやふやな経験や直感』に基づくものだからです。でも、自分に甘いという非難は承知の上で言わせてもらえば、一個人としてはこんなものだと思います。ねつ造や悪意による切り捨てはしていないつもりですし、研究者ではない人間が何かを言うときに研究者と同じレベルで「エビデンス」を求められれば、何も言えなくなってしまうからです。もちろん、政治家や責任ある立場にある官僚や学者には、「エビデンス」を重視してもらいたいとは思いますが。そして、昨今の教育論議には、こうした「エビデンス」主義とは正反対の乱暴なものが多いという思いもしています。
一方で、私はこんなふうにも考えてみるのです。学校の教員にも「エビデンス」主義は求められるのか、ということです。カンを排し、データに基づいて授業をするのが望ましいのかということです。私の「カン」では、そうではありません。いくら膨大な数の子供を対象にしたアンケート結果であろうと、それが目の前にいる子供にとっても有効であるという保証はありません。子供の発言や行動に対して、瞬時に次の指導の手立てを決め行動に移すことが必要な授業中に、データを照会する余裕はありません。教員は、研究者や学者ではなく、職人なのです。豊富な経験に基づく暗黙知としてのカンこそが、良い教員の条件だと思います。違うでしょうか。
心療内科医の海原純子氏が、『エビデンスに基づく仕事』という標題でコラムを書かれていました。エビデンスとは「根拠」のことで、コラムの中で海原氏は、『アメリカで研究活動をしている間、なにかというと「エビデンスは?」ときかれた。その問いに対する論理的な回答とデータ、参考文献をきちんと準備するのがいつか習慣となり体に染み着いて今も続いている』と述べています。
これは我が国ではあまりきちんと根付いていない「文化」だと思います。海原氏はその具体例として、田中文科相の大学設置不認可騒動をあげています。『大学の質の低下の基準はなになのか、大学の数と質の低下の相関のエビデンスは示したのか、審議会委員に大学関係者が多いと反対しにくいいうのはデータをとって証明されているのか、、逆に関係者が少なく部外者が多いといい決定ができるというデータはあるのか』と米国の大学教授らが議論していたというのです。
反省させられる話です。私はこのブログで、学校教育について、様々な意見を述べてきました。それらはほとんどすべて、「エビデンス」に基づかない、『あやふやな経験や直感』に基づくものだからです。でも、自分に甘いという非難は承知の上で言わせてもらえば、一個人としてはこんなものだと思います。ねつ造や悪意による切り捨てはしていないつもりですし、研究者ではない人間が何かを言うときに研究者と同じレベルで「エビデンス」を求められれば、何も言えなくなってしまうからです。もちろん、政治家や責任ある立場にある官僚や学者には、「エビデンス」を重視してもらいたいとは思いますが。そして、昨今の教育論議には、こうした「エビデンス」主義とは正反対の乱暴なものが多いという思いもしています。
一方で、私はこんなふうにも考えてみるのです。学校の教員にも「エビデンス」主義は求められるのか、ということです。カンを排し、データに基づいて授業をするのが望ましいのかということです。私の「カン」では、そうではありません。いくら膨大な数の子供を対象にしたアンケート結果であろうと、それが目の前にいる子供にとっても有効であるという保証はありません。子供の発言や行動に対して、瞬時に次の指導の手立てを決め行動に移すことが必要な授業中に、データを照会する余裕はありません。教員は、研究者や学者ではなく、職人なのです。豊富な経験に基づく暗黙知としてのカンこそが、良い教員の条件だと思います。違うでしょうか。