生前ご縁のあった
津村喬さん。
私が津村さんの文章を紹介させてほしいと
ご連絡すると
いつも
「どうぞどうぞいつでも使って広めてください」
といってくださったので、
たまに
ご紹介させていただいています。
今回はこれ。
「イルカ・海の気功師たち」
イルカの姿を見たことがありますか。水族館で芸をさせられている姿は少し悲しすぎるので、あまり見たくはありません。海で自由にしているイルカのことです。イルカに会う旅というのもあって、憧れてしまいますが、誰もが行けるものでもないし、あんまり会いに行っても先方も迷惑かも知れませんから、せめてタルボットのイルカの映像でも見てみましょうか。その優美な姿と動きは、見ているだけで瞑想になってしまいそうです。やさしく、なめらかな動きが海とほんとうに一体になっているので、人間の泳ぎに比べてすごく自由に思え、あんなふうに動けたらどんなに気持ちいいだろうと思ってしまいます。
ご存知と思いますが、イルカのあのヒレには五本指が入っています。イルカはもと陸上動物で、イヌの祖先と同じように陸上をかけていたのです。そしてイヌよりもだいぶ大きい、人間より二回りほど大きい脳を持っていました.ところが彼らはどの時点でか「やーめた」とまた海に帰ってしまったのです。なぜでしょうか。イルカと話す努力をしている人たちがまだはっきりと説明を受けるのに成功していないので、推測するしかありませんが、おそらくこのまま自分たちが手を使って道具を作り文明を発達させると、やがては地球を何度でも壊してしまうような道具を作る羽目になるかも知れないとある時悟って、別な道を歩むことにし、海に帰って手を発達させないようにしたのではないでしょうか。そうとすれば、結局手を発達させてもう限界まで地球を壊してきてしまった人間が、もう一度なんとかやり直す道があるのだろうかというこの曲がり角に立って、こんなにもイルカに引かれてしまう理由がわかるではありませんか。
彼らはぼくら自身のもう一つの生き方、もうひとつの進化の道を見せてくれているのです。
海に帰ったイルカはその人間より大きな発達した脳を何に使ってきたのでしょうか。彼らはずっと気功をしていました。いや、本当の話です。
イルカたちは家族を愛し、もの静かに助け合い、決して争わず、海の中で歌い、踊り続け、また瞑想し続けて、地球の声を聴き、地球と一体になることにすべての時間を使ってきました。それは悟りの道ではないでしょうか。イルカは誰でも超音波を発信して、ほかのイルカや魚や人間の体の中まで一瞬に見通して、相手がからだや心の病をもっているかどうか、すぐに見分けてしまうといわれます。高度に訓練した気功師がまれに見せる透視力と同じものをどのイルカも身につけているのです。
中国で一番古い気功は亀を真似た気功です。亀の中には一呼吸60分というのもいて、あんなに長い呼吸ができると長生きするに違いないと思われたのです。イルカだって肺呼吸ですが、一呼吸で20分も潜ります。それも時には海中で激しい運動をしながらです。イルカが身近にいたら、イルカの気功もきっとできたことでしょう。アボリジニがイルカとのドリーミングが大好きであるように。
そんなに肺が大きくないのに、なぜ人間の10倍も潜れるのでしょうか。肺活量のせいでないとしたら、何が違うのでしょうか。脳の酸素の消耗率が違うのです。心の状態に寄って、脳の酸素の消耗率は大きく変わります。それによって、必要な酸素の量も当然変わります。
ダイビングの好きな人によく聞くのですが、60分潜れるはずのボンベの酸素が海中でパニックを起こすと、すごくたくさん使ってしまい、20分しか持たないというようなこともおこります。平常心がおかされると、いっぱい酸素を使ってしまうのです。
イルカごっこをしましょう、というと畳の上でくねくねするのかと思う人がいますが、実はそのまま息を止めてもらうだけのことです。まず30秒止めてみます。次に、もう一度息を止めているあいだ、嵐が来て船がしずみそうだとか、不安なこと、こわいことをいろいろ話します。そうすると、同じ30秒かと思うほど苦しいのです。次にもう一度、イルカと一緒にのびのびと泳いだり、気持ちよく太陽の光の中で遊んでいる情景を思い浮かべると、30秒を45秒にしても誰も気がつきません。これはどういうことかというと
『イルカはゼッタイ楽しいことしか考えない』
だから酸素の消耗量が少なく、ずっと潜っていられるのだということなのです。実は気功でも、その人がどれくらい「気功状態の脳」になっているかを客観的に確かめたい場合、脳の酸素の消耗率が眠るよりどれくらい下がっているかをみます。この基準で言うと、イルカは誰でも気功師なのです。
このまま地球の温暖化が進んで行って陸地が大幅になくなり、もう一度人間は海に帰らなければならないかも知れません。もし海面が石油や放射性物質で覆われ切っていなければ、半ば海中で暮らすかもしれません。その時ぼくらはイルカに何を習えるのでしょうか
ジャック・マイヨールは素潜りで100メートル以上も潜ってみせ、こんな風にやれるんだよと示した上で『イルカと海に還る日』なんて、びっくりするような本を出しました。それは、人類の絶望というべきでしょうか、希望というべきでしょうか。
フランスやオーストラリアでは、海中出産をする人が少しずつでてきています。
『とにかく、海の字の中には母がいるのです』
イルカには生まれたばかりの海面に連れて行って、おぎゃあとは言わないかも知れませんが息を吸わせる係の産婆さんがいて、そういうイルカに近くにいてもらって海中出産をすると、人間の子供もちゃんと扱ってくれるのです。ところがそういう子供は最初に会うのが人間でなくイルカというわけですね。不思議なことにそういう子供は五分六分と潜って遊んでいられます。ジャックのような訓練をしなくても、産まれるときに空気中の子供が無意識のうちにするだろうある種の断念を持たなければ、イルカ人になれるかもしれないのです。そんなびっくりするような映像を見せてもらったことがあります。
きみらの経験からしても人間にはどんな未来があるんだろうと、イルカにもう一度相談してみたいと、改めて思います。