花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

友の会会員証のデザイン

2015-01-17 | アート・文化
年が明けてまた大阪市立東洋陶磁美術館の友の会継続申込を行う時期になった。その会員証は平成21年より、会員各位への挨拶状の一部を切り取る方式に変更された。点線部分を切り取ってお使い下さいとある左下の破線で囲まれた会員証を切り取れば、青磁水仙盆に鋏をいれることになった。平成26年の色絵龍虎文大壺に至るまで、切り込む領域は小さくなってきたが、それでも貴重な館蔵品の写真を切らせるデザインが続いている。本年度の会員証はまだ届かないが、同じ意匠となっているのだろうか。

中之島公園の一角にある大阪市立東洋陶磁美術館は、住友グループから寄贈された安宅コレクションを核に1982年に設立された世界一級の東洋陶磁の館蔵品を誇る美術館である。先の青磁水仙盆は安宅コレクションの名品のひとつで、世界に数十点しか残存しない北宋汝窯の作品である。美的感覚、学識および経験ともに優れておられる美術館関係者の方々が、神経を張りつめて大切に守ってこられた数々の名品に、毎年、ぐさぐさと鋏を入れさせるデザインに抵抗をお感じになることはなかったのだろうか。写真は決して単なる写真ならず、大切な人やものを偲ぶよすがである。また私がかかわってきたメスあるいは花鋏の世界で申せば、お人の体に対して、そして花に対しても、刃物を当てるにはそれ相応の必然があり、覚悟というものが求められる。ここに鋏をいれることにどの様な必要性があるのだろうか。デザインを担当なさった御方には余程、切り取らせることに思い入れがおありとみえる。畑違いの門外漢の私にはうかがい知れぬ何か事情があるのかと思いつつ、毎年ひとり当惑しているのである。

遠路にも拘らず、展覧会を毎回楽しみに通われ、あれは良かった、絶対に行くべきと感想をお聞かせ下さる患者さんが何人かおられる。薦めて頂いて今度こそ行こうと思いつつ、大きいままの会員証を持参するのもいかにも能とらしく仰々しく、さりとて鋏をいれるのは何としても抵抗がある。そのような訳で最近はとんと美術館から足が遠のいている。