花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

遊漢方臨床談話会

2015-01-13 | 漢方の世界


遊漢方臨床談話会は、日本東洋医学会評議員で指導医、日本漢方古方派の重鎮である三谷和男先生が主宰されている、歴史ある漢方研究会である。毎月一度、大阪で開催され、先週末が本年第一回目の会となった。方剤とその構成生薬解説から、御参加の諸先生方の漢方第一線での症例報告を巡る意見交換と総括まで、日本漢方から中医学や西洋医学の基礎から臨床にわたる、狭い枠に捉われない自由な発言が飛び交い、いつも活発でハイレベルな討論が行われている。西洋医学あるいは東洋医学であろうが、他の医師が提示される症例報告はとても勉強になる。ただ拝聴するのではなく、その症状や所見が治療に従い変遷し治癒してゆく時間的経過を辿り、自分ならばその時にどの様に治療したであろうかと考え治療者になり追体験することにより、自身の診療経験にさらなる生きた知識が加わるのである。

我等が三谷先生は、かの西郷隆盛の肖像画にどこか風貌が似通っておられ、坂本竜馬が『礼記学記』の「善待問者如撞鐘,叩之以小則小鳴,叩之以大則大鳴」に基づき、西郷隆盛を「小さく叩けば小さく響き、大きく叩けば大きく響く鐘のようだ」と評したという風体を彷彿とさせる、自由闊達で懐の深い師匠である。「善く問いを待つ者は鐘を撞くが如し」、どの領域においても、弟子たる者はこの言葉を胸に刻んで師匠に臨むべしなのである。

私は西洋医としての出発の後に、中医学ついで日本漢方を学ぶ機会を得た。どの医学も病気の解明と治療が究極の使命であることに変わりはない。しかしながら、三者にはやはり違いがある。そして日本漢方の何たるかについて、その深い様相の片鱗を私に開示して教えて下さったのは三谷先生である。実際の御診療に陪席せねば学べなかったことは実に多い。本だけをいくら読み込んでも、それはそれだけである。