A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

人生不調なときこそ、自然体で・・・

2012-07-05 | MY FAVORITE ALBUM
Hamp’s Piano / Hampton Hawes




最近、仕事もゴルフもそしてジャズを聴くのも今ひとつ気合が入らない。無理にやっても空回り。こんな時にはじっとしているのがいいのかもしれない。

人生良い時もあれば、悪いときもある。傍から見れば一生順風満帆に見える人でも、人生を振り返れば苦労をしていた時に次の展望が見えたということが多いようだ。
今でも現役生活を続ける秋吉敏子も、その自伝を見ると苦労の連続、そして苦労の中から常に新しい物が生まれたようだ。あの有名なビッグバンドも、西海岸に移り生活環境ががらりと変わり、演奏する機会も減った中で良き伴侶であるルータバキンのアドバイスがあったからだと。

秋吉敏子がジャズの世界に入って師と崇めたのがバドパウエルだった。渡米してからは直接生の演奏を聴くこともあったとは思うが、日本にいる時はパウエルのプレーを聴くのもレコードを通じてしかなかったはずだ。何事においてもそうであるように、本やメディアで見たり聴いたりすることと、生で身を持って体験することでは格段の違いがある。

敏子の修行時代、生の演奏を聴いて影響を受けたミュージシャンは多くいたと思うが、当時、敏子だけでなく日本のミュージシャンに大きな影響を与えたのが53年から55年まで2年間、日本に軍隊で駐留していたハンプトンホーズであった。朝鮮戦争の前後軍隊に入り日本や韓国を訪れたミュージシャンは多いがホーズもその一人であった。あのペッパーアダムスも韓国に駐留していた時期があったという。

兵役を終えたホーズが母国に戻り、本格的に活動をしたのは西海岸。敏子がボストンを拠点に東海岸で活躍を始めた頃、ホーズのプレーはウェストコーストジャズのメッカ、コンテンポラリーレーベルで多くの名作を残した。バードから発したビバップの流れを汲み、リズミカルにスイングする正統派のピアノは、光り輝くものであった。

順風満帆であったホーズであったが、他の多くのプレーヤー同様、麻薬によって演奏活動を中断せざるをえず、復帰までは長いブランクを要した。自由の身になれたのはケネディ大統領の恩赦だったという話しもある。途中で一時復帰したものの、病も癒えて本格的に復帰したのは’67年になってから。全盛期からは10年近くの年月が経っていた。’

67年に復帰したホーズは、妻を同伴して長い期間ヨーロッパを旅した。麻薬に手を染めた多くのミュージシャンがヨーロッパに渡り、そこで復帰のきっかけを掴めるのには何かアメリカとは違う音楽を受け入れる伝統と風土があるからだろう。

ヨーロッパを旅行中のホーズは11月にドイツを訪れた。そこで有名なプロデューサー、ヨヒアムベーレントのプロデュースの元一枚のアルバムを残していった。
付き合ったのは地元のミュージシャン。ベースのエベルハルトウェバーとドラムのクラウスワイス。ベースとのデュオとドラムを加えたトリオの演奏。

演奏は長いブランクを感じさせないほど生き生きとしている。そしてこのアルバムはMPSレーベル録音。ピアノの音が素晴らしい。当時のMPSの録音はアメリカの録音とは明らかに違う音がしていて新鮮な響きであった。

どん底の生活からは脱したものの、きっと大きな展望も無ければ意欲も無かったと思える時期の演奏。それに加えて旅先での気楽なセッション。オリジナルに加えてスタンダード曲も。きっとこのリラックスした環境がこの演奏を生んだのだと思う。
このホーズの復帰アルバムは自分も好きなアルバムの一枚だが、演奏だけでなくこのMPSのピアノの音を含めて自然体の魅力に惹かれているのかもしれない。調子が出ない今聴くのにぴったりだ。
人生不調な時こそ、あまり構えずに自然体に戻るのがいいのかもしれない。

1. Villingen Blues Hampton Hawes 4:42
2. Rhythm Hampton Hawes 2:23
3. Black Forest Blues Hampton Hawes 4:20
4. Autumn Leaves Joseph Kosma / Johnny Mercer / Jacques Prévert 9:05 
5. What Is This Thing Called Love? Cole Porter 5:15
6. Sonora Hampton Hawes 5:00
7. I'm All Smiles Michael Leonard / Herbert Martin 5:12
8. My Foolish Heart Ned Washington / Victor Young 6:42

Hampton Hawes (p)
Eberhard Weber (b)
Claus Weiss (ds)

Recorded at Villingen, Germaney on Nov. 8, 1967

ハンプス・ピアノ
Hampton Hawes
ユニバーサル ミュージック クラシック
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする