A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

スタジオ録音か、それともライブがいいか?オリジナルかカバーか?

2015-03-12 | MY FAVORITE ALBUM
The Japanese Tour / Supper Sax

常識的にはきちんと作られたスタジオ録音のアルバムの方がいいし、カバーがオリジナルを上回ることは滅多にないが、時には・・・。

サックス好き、それもアンサンブル好きにはたまらないグループにスーパーサックスというグループがあった。
有名プレーヤーのアドリブソロをコピーし、アンサンブル化するというのは時々行われるが、全編チャーリーパーカーのアドリブをアンサンブルで演奏するという試みには、最初びっくりした。
最初は西海岸のスタジオミュージシャンのお遊びかと思ったが、その出来栄えを聴いてさらにびっくり。

そして、中身をじっくり聴くと、パーカーのメロディーラインはもちろんアルトがとるが、バリトンがそのアルトにピッタリついて、あのパーカーのフレーズを吹いているのにまたまたびっくり。
アンサンブルで、バリトンは他のセクションと離れて一人我が道を行くことが多く、メロディーラインの引き立て役に回ることが常であるが、ここでは準主役のような扱いだ。
パーカーのフレーズをアルトでやるのも大変なのに、同じフレーズを図体の大きなバリトンでやるのはそれなりのテクニックが無いとできない芸当だと当時も感心した。

みんな揃ってサックスセクションのソリというのは良くあるが、普通それは一部だけ、全編ソリのようなアレンジはそうそうない。合わせるだけでも大変そうだと思ったが、彼等も最初は11カ月も練習したとか。

73年がアルバムデビューであったが、リーダーのメッドフローリーが思いついたのは、1955年ウディーハーマンオーケストラに居た時という。実は、その時のハーマンのオーケストラでは、同じような試みがラルフバーンズのアレンジの中でおこなわれていた。

56年にロスに移ると早速3曲、5サックス用の譜面が完成。さっそくメンバーを集めてリハーサルを行った。メンバーであったジョーマイニーが生きている間に、その内の一曲はテープに残したが、その後マイニーが亡くなってしまったこともあり、構想は立ち消えになっていた。その構想を復活して、このアルバムに繋げたてくれたのは、他の曲のスコアづくりに協力したベースのバディークラークのお蔭であった。

そして、最初のアルバムPlays Birdが実現することに。企画、内容ともにファンだけでなく関係者に感銘を与えたのだろう、その年のグラミー賞Best Instrumental Jazz Performanceをいきなり受賞する。キャピタルとの契約で、Salt Peanuts、with Stringsと続けて3枚のアルバムを出され、一躍世に知られることになる。

当然、レコードだけでなく、ライブでの要望も増えてくる。ロスでは地元のクラブドンテを本拠地にしていたが、日本にも話題になって評判が広まった75年1月に来日している。
2週間に渡る全国ツアーであった。同じ時期に大物マイルスのコンサートもあったが、ファンを魅了した。自分も聴きに行って、ライブの演奏にまたびっくりした記憶がある。

その時の演奏がこのアルバムである。CDになって世に出たのは20年近く経ってからだが、あの感激を再び味わえるだけでも自分にとっては有難いアルバムだ。





さらに、このグループのもう一つの特徴は、最初からトランペットのコンテカンドリやトロンボーンのカールフォンタナなど、ゲストのソリストを入れていたことだ。
こちらは、パーカーのアドリブアンサンブルとは関係なく自由にサックスセクションを引き継いでアドリブを繰り広げた。これがサックスのアンサンブルがノリノリの助走をつけた後のソロなので当然のようにいい感じになる。

この75年の来日に際しても、当初はコンテカンドリを予定していたが、レギュラーでテレビ番組に出演していたカンドリは、2週間も長い休みがとれないということで断念。トランペットのピンチヒッターは見つからず一人来日したのが、トロンボーンのフランクロソリーノであった。このロソリーノが2人分の活躍をする。

ロソリーノは先日紹介した、トロントへの遠征の前年、ソリストとしての活動に力を入れていた好調な時期であった。全曲で、ロソリーノのソロが存分にフィーチャーされているので、ロソリーノファンにもたまらないアルバムだ。前回紹介したギタートリオとの共演より、当然ながらスーパーサックスをバックにすると、ロソリーノの超絶テクニックは一層冴えわたる。

そして、最後にこのライブの素晴らしさが、サックスセクションの面々のソロもたっぷりと聴けることだ。特に、ソルトピーナツでは、アルバムでは聴けないウォーンマーシュのソロが聴けるのも貴重だ。最後のMoose the Moocheでは、サックスのソロのバトルも披露してくれる。
スタジオ録音より制約が少なくなり、演奏の自由度が増し、曲の時間も長くできるので、ライブならではのノリとなって終わる。

スーパーサックスのライブアルバムというのは、自分が知る限り他にはないので貴重だ。サドメル同様、ライブでこそ本当の魅力を味わえるバンドだ。
ライブがスタジオの演奏を上回るのは、このように大きな編成のグループでアンサンブルとソロが聴衆の反応に呼応して、上手くバランスよく収まった時のように思う。
オリジナルのパーカーも、ここまで拘ってカバーしてくれれば満足しているだろう。

そういえば今日、3月12日はパーカーの命日。恒例の日本のパーカーでもある澤田一範のwith Stringsのライブがある。これもなかなか聴けないライブ、まだ聴いた事の無い方は是非一度どうぞ。



1. Scrapple from the Apple            Charlie Parker 10:01
2. All the Things You Are  Oscar Hammerstein II / Jerome Kern 10:51
3. Salt Peanuts                 Dizzy Gillespie 6:41
4. Parker's Mood                Charlie Parker 5:01
5. Just Friends          John Klenner / Sam M. Lewis 3:10
6. Ornithology           Benny Harris / Charlie Parker 7:54
7. Embraceable You        George Gershwin / Ira Gershwin 2:45
8. Moose the Mooche               Charlie Parker 8:49

Frank Rosolino (tb)
<Super Sax>
Med Flory (as)
Joe Lopes (as)
Warne Marsh (ts)
Jay Migliori (ts)
Jack Nimitz (bs)
Lou Levy (p)
Buddy Clark (b)
Jake Hanna (ds)

Tom Gramuglia Executive Producer
Produced by Bob Edmondson
Recorded in Tokyo, January 1975

The Japanese Tour
クリエーター情報なし
Hindsight Records

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