A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

サドメル時代の仲間の協力で、ピアノだけでないアルバム作りを・・・

2015-12-23 | PEPPER ADAMS
Mister Mysterious / Mickey Tucker

名前は知っていてもすぐにアルバムや演奏を思い出せないニュージシャンは多い。自分は好みが偏っているので有名でも聴いた事が無いミュージシャンは多いがそれは論外としても、身近に感じていても、リーダーアルバムを持っていないとか、サイドメンとして加わっていても印象に残るアルバムがないということだろう。雑誌などで何度も見かけたことはあっても、実際に演奏を聴いていなかったのかもしれない。
このミッキータッカーもその一人だ。ジャズメッセンジャーにも加わっていたことがあり、再編されたジャズテットにも加わっていたことがある。名門バンドにも加われるメインストリームのピアニストの一人なのだが。

改めてキャリアを見てみる。1941年生まれというので50年代の後半から60年代前半のジャズブームの時はまだ登場していない。実際に60年代の活動はR&Bやソウル、そして歌伴中心でジャズ界に登場したのは69年になってから、ジェイムスムーディーのグループに参加したのが最初だった。
その後共演しているミュージシャンもローランドカークやエリククロスなど渋いプレーヤーが多い。そういう意味ではメッセンジャーズへの加入がメジャーデビューともいえるが、この時代のメッセンジャーズは低迷期。あまり話題にもならなかった。
サドメルにも加入していた時期があるというが、サドメルファンの自分でも認識が無かった位なので、目立った活躍はしていなかった。いわゆる知る人ぞ知るというピアニストの一人であろう。

そんなキャリアのミッキータッカーのこのリーダーアルバムが生まれたのは1978年6月23日。先日紹介したウィルタービショップJr,のアルバムの録音の2日後、同じミューズレーベルの制作であった。
この頃、連日ギッチリ詰まったスケジュールをこなしていたペッパーアダムスであったが、このレコーディングセッションにも登場している。スタジオはルディバンゲルダースタジオ。そして、この日の夜はその年のニューポートジャズフェスティバルの初日。カーネギーホールで行われたオープニングを飾るサラボーンのステージに続いてのサドメルのステージにゲストとして駆けつけている。
この模様はアイラギトラーが記事に残しているが、「皆が期待していたサラボーンとサドメルのステージ上での競演は結局実現せず、サドメルの演奏もリーダーのサドジョーンズやゲスト参加のペッパーアダムスなどのベテランの出番は少なく、いつも聴ける若手のソロが延々続き、ちぐはぐな感じであった」とある。

そんな綱渡りスケジュールにも関わらずアダムスがこのセッションに参加したのには意味があって、このアルバムにホーンセクションで参加しているのは皆サドメル時代の仲間達。昔一緒に演奏したタッカーのリーダーアルバムとなれば、やはり皆忙しい中、時間をやり繰りして集まったのであろう。持つべきものは友人ということになるが、義理堅いアダムスの一面が垣間見られる。

1978年というと新旧のスタイルのジャズ、そして新人ベテランが入り乱れていた時代。アルバム作りも何でもありの時代だ。
ニューポートに出演していたメンバーも豪勢であったが、日本でも田園コロシアムのライブアンダーザスカイが2年目。そちらも錚々たるメンバーが名を連ねていた。
そんな時代に、無名ともいえるミッキータッカーがどんなアルバムをというのも興味が湧くが、ホーンを加えた事もありタッカーのピアノが必ずしもメインではない。アレンジもタッカー自身が行ったこともあり、アルバム全体でこの時代の「新主流」ともいえるサウンド作りにチャレンジしている。
一曲目はパーカッションを加えラテン調のリズムで、かと思えば最後の曲ではベースのウォーキングベースがかえって新鮮に聴こえるブルース。ウォルタービショップがエレキピアノを使って新しさを出そうとしたのに対して、ここでのタッカーはあくまでもアコースティックサウンドで。

せっかく参加してもらったホーンセクションもアンサンブルだけでなく、タップリソロスペースも用意した曲もありアダムスも登場するが、メインストリームの中にも新鮮味を出すために単なるジャムセッションではなく、色々とタッカーなりに考えられている。
ドラムのグラッデンは初めて聴くがタッカーの昔からの演奏仲間とのこと、リズム勝負のこのアルバムでは重要だ。どんなリズムもこなすセシルマクビ―のベースも印象に残るプレーだ。

人生何事でも評価を得るのはタイミングときっかけだ。このミッキータッカーも少し時代がずれれば、ピアニストとしてもアレンジャーとしてももう少し有名になっていたかもしれない。実際にプレーを聴いた人の評価は高い。

1. A Prayer
2. Mister Mysterious
3. Cecilitis
4. Basic Elements
5. Plagio
6. Taurus Lullaby

Mickey Tucker (p,arr)
Pepper Adams (bs)
Cecil Bridgewater (tp)
Frank Foster (ts,ss,fl)
Cecil McBee (b)
Eddie Gladden (ds)
Azzedin Weston (congas)
Ray Mantilla (per)

Produced by Mitch Farber
Engineer : Rudy Van Gelder
Recorded at Van Gelder Studio, Englewood Clliff, N.J. on June 23. 1978

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