A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

昔の自分達の持ち歌も主役を替えて時代に合わせてみると・・・

2012-02-14 | CONCORD
East of Suez / Jackie and Roy

Concordレーベルは設立以来、オーナーのカールジェファーソンが大部分のアルバムをプロデュースしてきた。オーナーカンパニーのワンマン社長の常として、基本的には社長の好き嫌いですべては物事が進む。ジェファーソンのプロデュースしたアルバムもその通りであった。基本はモダンスイング系のプレーヤーで、ベテランで一線を退くか、活動はしていても裏方に徹していて表舞台にあまり立たないプレーヤーを地道に発掘していた。もちろんスコットハミルトンのような新人のスターも生まれたが、これもジェファーソンイメージする昔ながらのスタイルを見事に再現しているからであって、新しい試みやスタイルの新人を積極的に追い求めた訳ではなかった。しかし、これだけアルバムも増えてくると、よく言えば良き伝統へのこだわりを守っていたことになるが、悪くするとマンネリ化した懐メロ集の連発になる恐れが十分にあった。

そこで、一つの対応がラテン系に軸足を置いたサブブランドのPicanteシリーズを作ったことだ。もう一つが、No.2のプロデューサーFrank Dorritie起用して、ミュージシャンの選定や演奏内容の幅を広げていった。ドリティーのアプローチもジェファーソンの基本路線は外さないものの、内容的にはスイング派だけではなく、主流派の範疇までかなり拡大していった。ケニーバレルやジェイムスウィリアムスのアルバムなどはその一例である。中でもジョージシアリングのブライアントーフとのコンビは大成功だったと思う。

このジャッキー&ロイもこのドリティーのプロデュースの作品。単に昔を懐かしむのであれば、チャーリーベンチュラ時代のバップスキャット集をやってもいいのだが。このジャッキー&ロイ自体が、これまでも古いスタイルを踏襲するのではなく、新しい曲や時代の流れを上手く採り入れてアルバム作りをしてきた。とはいうものの、彼らのデュエットのスタイルは基本的な枠組みを大きく崩すことはなく、いつもある種の優等生的な収まりを持っていた。ベンチュラのバンド時代の十八番であった、バップスキャットは彼らの売りのひとつだが、一方で、ジャッキーのディクションのはっきりした歌い方、良く通る声のボーカルも魅力だ。それに加えて、ロイの歌やピアノも良く計算されたバックも彼らの特徴であり、変らぬスタイルだった。そもそも風貌も美男・美女のコンビで見かけもスマートなので、演奏自体も枠を外せなかったのかもしれない。
となると、プロデューサーも変化を持たせるためにどのようなアルバム作りをするかが頭の痛いところだ。

2人は、この録音に先立ち‘80年のコンコルドジャズフェスティバルに登場した。大舞台でのコンサートなると、彼らを有名にした1949年のジーンノーマンのパサディナコンサートをどうしても思い浮かべてしまうが、その舞台で彼らを有名にした当時の演奏から“East of Suez”、“Anthropology”が再演された。しかし、演奏は昔のスタイルを踏襲するのではなく、今回はアレンジ自体も彼らを主役に、そしてバックの編成の違いもあり今風に変えて再演した。このアルバムでの編成はクラールのピアノに、ジェフハミルトンのドラムとブライアントーフのベースというコンコルドでは実績のある2人を配置し、ヴァイブとパーカッションを入れてリズミカルなバック仕立てになっている。
選曲もマイケルフランクスの曲やエリッククロスから贈られた曲から、デビュー当時のバップスキャットが生きるタイトル曲やパーカーのアンソロポロジーまで新旧取り混ぜている。
2人のデュエットはいつもどおりの優等生だが、昔ながらの伝統あるワインを新しいボトルに入れたように新鮮に聞こえる。このグループが長続きしたもの、時代を超えてどんな曲でもあるいはバックでも彼らの持ち味を活かした普遍の正統派ボーカルデュオを貫いたからであろう。





1. Don't Be Blue          Franks, Guerin 4:01
2. D Light             Kral 4:53
3. Close Enough for Love      Mandel, Williams 5:18
4. East of Suez           Stein 5:09
5. Wings of Love          Kloss 5:17
6. Travelin'            Cain, Johnson 4:53
7. It's So Peaceful in the Country Wilder 5:44
8. Anthropology           Bishop, Gillespie, Parker 3:47

Jackie Cain (vol)
Roy Kral (p,vol)
Brian Torff (b)
Paul Johnson (vib)
Jeff Hamilton (ds)
Ralph Hardimon (per)

Produced by Frank Dorritie
Engineer Phil Edwards
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California in November, 1980

Originally Released on Concord CJ-149



East of Suez
Jackie and Roy
Concord Records

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