This is New / Eddie Daniels
今から20年以上前、パソコンが普及し始め、WindowsやAppleのマッキントッシュが世に出始めたころ、「メディアや広告がコンピューター時代になってどう変わっていくかを考えろ」というミッションを上司から受けた。先見の明のある、勉強熱心な上司で色々な教えを請うたが、このお題はあまりに大きすぎて上司も明確な答え持っていたわけではなく、仲間共々一緒になって色々悩みながら議論を重ねたのもいい思い出だ。
何とかアナログ作業の代表のような業界のワークフローをシステム化することに関しては何とか絵を描いて、実際に開発作業に着手した。しかし、メディアそのものの変化に関してはインターネットの登場まで答えは見つからなかった。
インターネットの普及に伴い、そのメディア価値のキーワードのひとつは、「オンディマンド」、そして「パーソナル化<One2One>」であった。従来のメディアの特徴である、プッシュ型の絨毯爆撃のようなマス情報拡散とは真反対に位置するインターネットの新しい情報提供の仕組みは最初から大きな可能性を持っていた。
それからすでに20年近く、両方の共存時代が思いの外長く続いている。テレビ放送のデジタルへの切り替え時に「放送と通信の融合」が再度声高に言われたが、テレビサービスの提供側はまだ過去への拘りを捨てきれないのか、まだその解を見出せていない。
しかし、生活者側はすでに個人ベースで両者を混在させた生活習慣を作り上げている。人によってネットのサービスの利用の仕方は千差万別である。さらに既存メディアの組み合わせ方となるとなおさらである。
果たしてどのような組み合わせパターンがメジャーになるか、もちろん性別、世代、地域、職業、趣味嗜好などでまったく違うと思う。どのパターンが一人勝ちという訳にはならないと思うが、メディア価値としての勝ちパターンが数年で見えてくるであろう。その時、従来のマスメディアの価値はリセットされるはずだ。
音楽の世界は、従来のメディアであるラジオとレコードの登場と普及で全盛期を迎えた。レコードはCDに代わり、セルからレンタルを経て、今では急激にダウンロード型音楽配信に変わりつつある。この流れで音楽業界自体は激変しているようだ。昔のようなマスメディアと連携した大ヒットというのは生まれにくくなって。音楽というものはマスメディアと相性がいいのかもしれない。
また、自分のような古い世代の人間は、どうしても聴くと同時に、集める、持つということにもこだわりがある。なかなかダウンロードで聴ければよいとは割り切れないでいる。息子の世代の感性とはどうも相容れないものがある。
一方で、ビジネス面で見ていると、物理的なメディアはどうしても物流が伴うので、売る側からすれば流通コスト、在庫リスクをどうしても伴う。そのために、在庫コスト、流通在庫による欠品を減らすために、デジタルの力を借りた、オンディディマンドによる個別製作という手法が開発され、印刷分野に登場した。音楽の世界にも、この手法によるオンディマンドCDなるものが存在しているが、あまり普及はしていないようだ。便利なようだが、それは何故・・・?
確かにあまり量が捌けないものは、オンディマンドベースで製作し、都度配送するほうが流通・在庫コストは少なくてすむかもしれない。しかし、小ロットでもある程度の枚数を纏めて作って一気に売ってしまった方が、トータルコストは安く済む。結果、一枚当たりのコストも安くなり、一見安くなりそうなオンディマンドの方が一枚当たりの手間とコストを考えると実際のコストは大きくなってしまう。
現在のようなデフレ時代では、オンディマンドCDが普及しない理由はここにあるのかもしれない。また、オンディマンドの良さは、「何時でも好きな時に」であるので、基本的に廃盤などはなくいつでも入手できるのがメリットであるのだが。これも中古市場がネット上にたくさんできてしまったので、探す手間は多少かかるものの、昔のように中古ショップをハシゴする必要も無くなったので新譜が廃盤になっても探すのには困らない。
結果的に、物流を伴うものでもそれをサポートするネットサービスが充実すれば、十分に太刀打ちができるということだろう。マスメディアとネットメディア、リアルサービスと
ネットサービス、いずれもどちらが良いかというのではなく、両者がミックスされ生活者の使い勝手の良いサービスに収れんしていけば、ユーザーとしてはめでたし、めでたし。
さて、前置きが長くなったが、このCDもオンディマンドCDでラインナップされている一枚。昔、ジャズ専門レーベルのはしりでもあったtaktレコードが、オンディマンドCDで復刻されているものだ。
サドメルの初来日時にメンバーとして同行した若いエディダニエルスが日野皓正と競演したもの。日野皓正クインテットのテナーは確か村岡健だったと思うが、エディダニエルスが代わりに参加したクインテット編成。テナーをメインに吹いているが、得意のクラリネットも存分に聴ける。
このエディダニエルスは、たいした実績も無くサドメルに参加したが、参加直後の1966年9月にサドメルのメンバーの同僚のサポートでファーストアルバムを吹き込んでいる。これが2枚目のリーダーアルバムになる。
このアルバムのオリジナルLPの発売が1968年11月とあったので、当時のスイングジャーナルを探してみると、このアルバムが12月号のSpot-Light Reviewに取り上げられている。並んでいるアルバムは、マイルスのMiles in the sky。そしてエルビンジョーンズのPuttin’ it together。エルビンのアルバムには、サドメルでの盟友ジョーファレルが参加している。いずれも当時の最先端グループのアルバムで、このアルバムもそれらと肩を並べる演奏ということだ。
マイルスを師としていた当時の日野皓正のプレーもいつもの荒っぽさを感じさせない良い感じのプレーだ。たまたまこの号のスイングジャーナルの裏表紙のYAMAHAの広告に日野皓正の写真が。実に若いが、確かにそれから50年近くが経っているのか・・・・・。
トラブル続きのサドメル初来日であったが、今も活躍中の日米の実力者の若き日の競演という置き土産も残してくれていた。
1. The Strut (E. Daniels)
2. Thirsty Soul (M.Kikuchi)
3. This Is New (E.Daniels)
4. Whistful Moment (R.Hanna)
5. Giant Steps J. Coltrane)
6. Why Did I Choose You(M.Leonard)
Eddie Daniels (ts,cl)
Terumasa Hino (tp)
Masabumi Kikuchi (p)
Kunimitsu Inaba (b)
Motohiko Hino (ds)
Recorded on August 4, 1968
今から20年以上前、パソコンが普及し始め、WindowsやAppleのマッキントッシュが世に出始めたころ、「メディアや広告がコンピューター時代になってどう変わっていくかを考えろ」というミッションを上司から受けた。先見の明のある、勉強熱心な上司で色々な教えを請うたが、このお題はあまりに大きすぎて上司も明確な答え持っていたわけではなく、仲間共々一緒になって色々悩みながら議論を重ねたのもいい思い出だ。
何とかアナログ作業の代表のような業界のワークフローをシステム化することに関しては何とか絵を描いて、実際に開発作業に着手した。しかし、メディアそのものの変化に関してはインターネットの登場まで答えは見つからなかった。
インターネットの普及に伴い、そのメディア価値のキーワードのひとつは、「オンディマンド」、そして「パーソナル化<One2One>」であった。従来のメディアの特徴である、プッシュ型の絨毯爆撃のようなマス情報拡散とは真反対に位置するインターネットの新しい情報提供の仕組みは最初から大きな可能性を持っていた。
それからすでに20年近く、両方の共存時代が思いの外長く続いている。テレビ放送のデジタルへの切り替え時に「放送と通信の融合」が再度声高に言われたが、テレビサービスの提供側はまだ過去への拘りを捨てきれないのか、まだその解を見出せていない。
しかし、生活者側はすでに個人ベースで両者を混在させた生活習慣を作り上げている。人によってネットのサービスの利用の仕方は千差万別である。さらに既存メディアの組み合わせ方となるとなおさらである。
果たしてどのような組み合わせパターンがメジャーになるか、もちろん性別、世代、地域、職業、趣味嗜好などでまったく違うと思う。どのパターンが一人勝ちという訳にはならないと思うが、メディア価値としての勝ちパターンが数年で見えてくるであろう。その時、従来のマスメディアの価値はリセットされるはずだ。
音楽の世界は、従来のメディアであるラジオとレコードの登場と普及で全盛期を迎えた。レコードはCDに代わり、セルからレンタルを経て、今では急激にダウンロード型音楽配信に変わりつつある。この流れで音楽業界自体は激変しているようだ。昔のようなマスメディアと連携した大ヒットというのは生まれにくくなって。音楽というものはマスメディアと相性がいいのかもしれない。
また、自分のような古い世代の人間は、どうしても聴くと同時に、集める、持つということにもこだわりがある。なかなかダウンロードで聴ければよいとは割り切れないでいる。息子の世代の感性とはどうも相容れないものがある。
一方で、ビジネス面で見ていると、物理的なメディアはどうしても物流が伴うので、売る側からすれば流通コスト、在庫リスクをどうしても伴う。そのために、在庫コスト、流通在庫による欠品を減らすために、デジタルの力を借りた、オンディディマンドによる個別製作という手法が開発され、印刷分野に登場した。音楽の世界にも、この手法によるオンディマンドCDなるものが存在しているが、あまり普及はしていないようだ。便利なようだが、それは何故・・・?
確かにあまり量が捌けないものは、オンディマンドベースで製作し、都度配送するほうが流通・在庫コストは少なくてすむかもしれない。しかし、小ロットでもある程度の枚数を纏めて作って一気に売ってしまった方が、トータルコストは安く済む。結果、一枚当たりのコストも安くなり、一見安くなりそうなオンディマンドの方が一枚当たりの手間とコストを考えると実際のコストは大きくなってしまう。
現在のようなデフレ時代では、オンディマンドCDが普及しない理由はここにあるのかもしれない。また、オンディマンドの良さは、「何時でも好きな時に」であるので、基本的に廃盤などはなくいつでも入手できるのがメリットであるのだが。これも中古市場がネット上にたくさんできてしまったので、探す手間は多少かかるものの、昔のように中古ショップをハシゴする必要も無くなったので新譜が廃盤になっても探すのには困らない。
結果的に、物流を伴うものでもそれをサポートするネットサービスが充実すれば、十分に太刀打ちができるということだろう。マスメディアとネットメディア、リアルサービスと
ネットサービス、いずれもどちらが良いかというのではなく、両者がミックスされ生活者の使い勝手の良いサービスに収れんしていけば、ユーザーとしてはめでたし、めでたし。
さて、前置きが長くなったが、このCDもオンディマンドCDでラインナップされている一枚。昔、ジャズ専門レーベルのはしりでもあったtaktレコードが、オンディマンドCDで復刻されているものだ。
サドメルの初来日時にメンバーとして同行した若いエディダニエルスが日野皓正と競演したもの。日野皓正クインテットのテナーは確か村岡健だったと思うが、エディダニエルスが代わりに参加したクインテット編成。テナーをメインに吹いているが、得意のクラリネットも存分に聴ける。
このエディダニエルスは、たいした実績も無くサドメルに参加したが、参加直後の1966年9月にサドメルのメンバーの同僚のサポートでファーストアルバムを吹き込んでいる。これが2枚目のリーダーアルバムになる。
このアルバムのオリジナルLPの発売が1968年11月とあったので、当時のスイングジャーナルを探してみると、このアルバムが12月号のSpot-Light Reviewに取り上げられている。並んでいるアルバムは、マイルスのMiles in the sky。そしてエルビンジョーンズのPuttin’ it together。エルビンのアルバムには、サドメルでの盟友ジョーファレルが参加している。いずれも当時の最先端グループのアルバムで、このアルバムもそれらと肩を並べる演奏ということだ。
マイルスを師としていた当時の日野皓正のプレーもいつもの荒っぽさを感じさせない良い感じのプレーだ。たまたまこの号のスイングジャーナルの裏表紙のYAMAHAの広告に日野皓正の写真が。実に若いが、確かにそれから50年近くが経っているのか・・・・・。
トラブル続きのサドメル初来日であったが、今も活躍中の日米の実力者の若き日の競演という置き土産も残してくれていた。
1. The Strut (E. Daniels)
2. Thirsty Soul (M.Kikuchi)
3. This Is New (E.Daniels)
4. Whistful Moment (R.Hanna)
5. Giant Steps J. Coltrane)
6. Why Did I Choose You(M.Leonard)
Eddie Daniels (ts,cl)
Terumasa Hino (tp)
Masabumi Kikuchi (p)
Kunimitsu Inaba (b)
Motohiko Hino (ds)
Recorded on August 4, 1968
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エディ・ダニエルズ,日野皓正,菊地雅章,日野元彦,稲葉国光 | |
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