A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

偶然一緒に演奏したのかきっかけで、2人のソウルエネルギーが全開へ・・・

2017-01-10 | CONCORD
Soular Energy / The Ray Brown Trio featuring Gene Harris

毎年8月になるとサンフランシスコに程近いコンコルドの街にはジャズミュージシャンが集まる。街の郊外にあるパビリオンで開かれるコンコルドジャズフェスティバルに参加するためだ。
規模が大きくなるにつれて、西海岸だけでなく東海岸や遠く海外から、日本からも北村英治が参加するようになった。ここでのステージの模様はライブアルバムとして毎年のようにコンコルドレーベルでリリースされ、会場に出向いたファンだけでなく、世界中のファンが楽しむことができた。また、その機会を利用してスタジオでの顔合わせセッションも開かれ、これも数多くアルバムとなって世に登場した。

自分のレーベルの所属ミュージシャンを中心にフェスティバルの毎年の出し物を考えるのはオーナーであるカールジェファーソンの楽しみであり、特権でもあった。1984年のフェスティバルのプログラム構成を企画していたジェファーソンが、何においても彼の片腕であったレイブラウンに、「今回はアネスティンアンダーソンにすべてブルースを歌ってもらおうと思う、メンバーを考えてくれないか」と、相談を持ち掛けた。

レイブラウンはすぐに、ピアノのジーンハリスを思い浮かべた。
というのも、少し前にレイブラウンはハリスに頼まれて2日間ハリスのセッションに付き合って、その縁で一緒にアルバムも作ったからであった。

お互い50年代からジャズ界で活躍してきた2人だが、共演したのはそれが初めてだった。というのも、ハリスは70年代には第一線を退きアイダホ州のボイセという地方都市に引き籠り、地元のホテルでピアノを弾いていた。ボイセはアイダホ州の州都とはいえ人口は20万人ほど。黒人が極端に少ない田舎町。ジャズ界との接点はほとんど無い場所だった。その地ででハリスはジャズだけでなくブルースからカントリーまで日替わりで何でも演奏している毎日だった。

レイブラウンと初めてプレーしたハリスは、久々にジャズのエネルギーが体内に蘇った。一方のレイブラウンはハリスのソウルフルなピアノの躍動感を一緒にプレーすることで体感した。ブラウンは数え切れない程のミュージシャンとの共演経験があるが、この感覚はあのミルトジャクションと一緒にプレーする時と同じだと感じ、早速ハリスを連れてニューヨークに行った。そのミルトジャクションと一緒にアルバムを作るために。
1983年12月のことであった。

その印象が強く残っていたブラウンは、ジェファーソンからの依頼を受けると、早速ボイセにいるハリスに参加を求め、一緒にフェスティバルのステージに立つことになった。

このアネスティンアンダーソンのブルース特集はステージでの演奏だけでなく、別にスタジオでアルバムを作ることになった。サンフランシスコのCoast Recordersスタジオにメンバー達は三々五々集合した。その時のアルバムが、先に紹介したアネスティンのアルバム”When the Sun Goes Down“である。

このアネスティンのレコーディングの準備を行っている最中、トリオの面々はせっかくだから自分達のアルバムも作ろうということになった。特にレコーディングの準備をしている訳でもなかったが、そこは臨機応変に対応できるジャズの良さ。リハーサルもなくスタンダード曲を次々と演奏し始めた。ライブでも初顔合わせの面々が簡単な打ち合わせでセッションを繰り広げるが、そのノリでこのレイブラウントリオのアルバムが誕生した。

過去にブラウンはオスカーピーターソンのトリオで、そして一方のハリスはスリーサウンズでピアノトリオでの演奏には手慣れた2人、レギュラートリオのように次々と曲をこなす。
ドラムはジョーウィリアムスのバックをしていた新人のゲーリックキングを起用したが、2人が引っ張るトリオに複雑なリズムやバックはいらない、ステディなドラムングがかえって効果的だ。
普段もう少し早いテンポで演奏されることが多いTake The A Trainをゆったりとしたテンポでスイングさせるところなどは、即席のトリオとは思えないコンビネーションだ。



ライブでのセッションも、演奏が興に乗じてくると飛び入りの参加で盛り上がる。ここでもアネスティンアンダーソンの録音にスタンバイしていたテナーのレッドホロウェイが加わる。そして、何と自分のアルバム(先日紹介したCatwalk)作りに来ていたギターのエミリーレムラーも加わって一緒に大ブローを披露している。
この曲だけはレイブラウンがヘッドアレンジで曲を提供。思いっきりアーシーな演奏に、レムラーのギターもデビュー当時のモンゴメリーライクなブルージーな演奏となる。自分のアルバムでの演奏と比較すると同じプレーヤーとは思えない。

コンコルドの常連であり重鎮のレイブラウンはこれまでトリオの時はモンティーアレキサンダーなどと組むことが多かった。今回、ハリスとは余程相性が良かったのだろう、これを機に2人のコンビのレイブラウントリオがスタートする。
ハリスにとっても、ちょっと歌伴のお手伝いという感じの参加のはずだった。だが、これがきっかけでコンコルドの看板スターに返り咲き、ジャズ界でのセカンドステージが始まった。何がきっかけで人生の大きな転機を迎えるか分からないものだ。

コンコルドのアルバムは総じて録音が良いが、このアルバムのハリスのピアノのタッチと、レイブラウンの重低音のベースが絡み合う迫力は、演奏だけでなく録音も格別だ。

1. Exactly Like You    Joe Burke / Dorothy Fields / Jimmy McHugh 5:47
2. Cry Me a River                 Arthur Hamilton 5:46
3. Teach Me Tonight            Sammy Cahn / Gene DePaul 4:51
4. Take the "A" Train                Billy Strayhor 6:20
5. Mistreated But Undefeated Blues            Ray Brown 4:16
6. That's All               Alan Brandt / Bob Haymes 5:48
7. Easy Does It         Count Basie / Sidney Keith Russell 4:03
8. Sweet Georgia Brown  Ben Bernie / Kenneth Casey / Maceo Pinkard8:45

Gene Harris (p)
Ray Brown (b)
Gerryck King (ds)
Red Holloway (ts) #5
Emily Remler (g)  #5

Produced by Carl Jefferson
Engineer : Pill Edwars
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, August 1984
Originally released on Concord CJ-268

Soular Energy
クリエーター情報なし
Concord Records
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