山クジラの田舎暮らし

岩手県北の田舎に生息する「山クジラ」です。定年後の田舎暮らしや趣味の山行きのことなど、発信していきます。

『魔物が棲む町』物書同心居眠り紋蔵=佐藤雅美著

2013-06-27 07:06:49 | 読書

 物書同心居眠り紋蔵シリーズ第10作『魔物が棲む町』(講談社文庫版)を読んだ。『魔物が棲む町』はこの産駒品の中の一つの話で、江戸の高輪・如来寺に赴任した快鶯は、門前町の町人たちに地代を課そうとしたが、彼らがいっこうに払わないので公儀に訴えた。ごく簡単な訴訟だったはずなのに、背後に拝領地の売買という、奉行所が採決を避けてきた問題が横たわる。訴訟を取り下げさせるという厄介な仕事が紋蔵に回ってきた。最後は町人たちから女をあてがわれ、地代の問題はうやむやになってしまう。町人の代表格の一人が最後に「当住もたあいなかった」とつぶやく。まさに「魔物が棲む町」なのである。

 日頃ぱっとしない物書同心である藤木紋蔵が、様々な事件で発揮する粘り強さや独特の感働きなど、毎回読ませてくれるシリーズだと思う。