山クジラの田舎暮らし

岩手県北の田舎に生息する「山クジラ」です。定年後の田舎暮らしや趣味の山行きのことなど、発信していきます。

『奇策』=風野真知雄著

2013-06-08 06:37:51 | 読書

 風野真知雄作品で3つ目になる『奇策』を読んだ。副題として「北の関ヶ原・福島城松川の合戦」とつけられている。時は戦国末期、上杉景勝が徳川家康に背いたということで上杉征伐の軍を発するが、その時石田三成が毛利など西国大名を取り込んで軍を起こし、関ヶ原で天下分け目の大合戦が行われたことは周知だ。この時、なぜか上杉景勝は徳川勢の背後をつかず、直江兼続らは最上領に攻め入っている。

 この小説の舞台は、上杉と伊達が福島城をめぐって争ったことを描く。主役は本庄繁長、かつて上杉謙信に背き1年にも及ぶ籠城戦をたたかった人物。この本庄が2万に及ぶ伊達軍を相手にわずか4千の軍勢で福島城を守り、跳ね返したたたかいを描いている。ひそかに裏切りがあることを期待していた伊達正宗に大きな誤算をもたらし、伊達軍を敗走させる。その後、関ヶ原の敗戦処理をめぐって本庄繁長は本田正信らとの折衝にあたり、上杉家が米沢に家名を残すうえで役割を果たすのだが、この本庄繁長は実に75歳まで生き延びたというから驚きである。

 風野氏は福島県の生まれであり、この福島を舞台にした作品にある意味で思い入れを感じた。