週刊新潮(11月24日号)に藤原正彦氏が1個5円のコロッケについて書いている。 同じ文中に昭和33年の日本シリーズ(3連敗した西鉄が残りの4ツを連勝して優勝する)のことがあって、それは氏が中学3年のときで、それから計算すると氏は私より7ツ若いことがわかる。 5円のコロッケには私も思い出がある。 中学3年の秋から高校1年を終えるまで、我が家は男世帯であって、弁当は自分で作るしかなかったが、そのエースがコロッケだった。キャッチャーは佃煮、内野を薩摩揚で埋め、外野(飯の上)に海苔を張るのがレギュラーメンバーで、玉子焼きはムリだった。たまにはコロッケ2個の日もあって、家の買い物係は私だったから、その辺は自由が効いた。 裕次郎コロッケと呼ばれる逗子の旭屋のもの、神戸コロッケなるものの2種が、75歳の私でも旨い。共通するのが生クリーム的な風味だ。 よく、「あそこのコロッケは肉が多いのがいい」などと誉める人がいるが、コロッケは肉の量ではない(それが欲しいなら、メンチカツを買えばいい)。コロッケがいちばん旨いのは夏の海岸である。 以前は江ノ電の長谷駅のそばにある揚げ物屋でコロッケを持って海岸に行き、これも持参のウィスキーの肴にして汗をかくのが夏の楽しみだった。 たべものにもTPOがあって、夏の海にはコロッケがぴったりだった。 話は戻るが、藤原氏の文には、日本シリーズの大逆転劇のときの神様・仏様・稲尾様が引用されているが、あのドラマをうたった名言がもう1ツあって、それは、勝利監督 三原修氏の「雨と稲尾と本塁打」で、見事な評言である。