Takepuのブログ

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国民党大惨敗で台湾は?

2014-12-08 14:27:21 | 時事
11月29日に実施された台湾の統一地方選挙、いわゆる「九合一選挙」で、中国との接近を図る馬英九総統率いる与党・国民党が大惨敗したことで、2016年に実施される総統選挙では、国民党候補の旗色が極めて危うくなってきた。
前に触れたように、馬総統は兼任する党主席を辞任し、呉敦義第一副主席が主席職を代行するが、1月に行われる後任の選考には、呉副主席は立候補しない、と宣言している。ここで選出された新しい党主席が2016年の総統選挙に向けて国民党を率いていくのだが、消去法で、というよりか、ポスト馬の呼び声が高く、年齢も若い朱立倫・新北市長が有力と見られる。ただ、今回の統一選で唯一大都市の市長の職を維持したとはいえ、民進党候補との票差は2万票あまりと大接戦で、かろうじて当選したことで、影響力の低下は免れない。

馬総統の中国寄り政策が台湾の有権者に嫌われた選挙結果、との見方が強く、2016年の総統選で台湾独立を主張する民進党の総統が誕生すれば、対中政策は大きく変わる。どうなるのか、というのが今後の注目点だが、米国からの報道によると、選挙終了直後の今月2日、民進党秘書長(幹事長)で駐米代表の呉燮がワシントンで「今回の選挙は地方の議題が主であり、大陸政策に対する公民投票との解説は適合しない。大陸は台湾選挙の参加者ではなく、台湾の政治の方向性を決定することはできない」と発言した。躍進したとはいえ、前途に様々な問題を抱える民進党の現在の立場を表明したものと見てよい考え方で、参考になる。

呉秘書長は選挙が終わり、翌日には直ちに蔡英文・主席の命により、オバマ政権当局者や台湾海峡情勢に関心を持つ米国の人々に、今回の選挙結果の意味と民進党の勝利の原因と背景について説明したという。米国側から尋ねられたのは、2016年の総統選の準備として、将来、中国大陸側が両岸交渉の前提条件として指摘している「一つの中国の原則」や「九二共識」(92年コンセンサス=1992年の中台民間団体の香港での協議で合意したとされる原則で、台湾側は一中各表=一つの中国の原則は堅持し、その解釈はそれぞれに任せる・中国側は認めていないが、台湾との交渉継続のため黙認している=)の立場を民進党が受け入れて中国大陸との往来を認めるのかどうか、どのように米国の不安を解消するのか、などについてだ。

呉秘書長は、馬政権の大陸政策が今回の地方選挙の敗北の背景にある、との考え方については、「有権者は両岸(中台)政策に関する公民投票をおこなったのではない」として、もし大陸政策が選挙結果を左右するものなら、大陸が台湾選挙の参加者となり、きわめて不健全だ、としている。

民進党が台湾と大陸の関係をどのように見ているかについては、基本的な立場は変わらず、「民進党は現在の台湾の状況を現実的に見ており、台湾は中国のコントロールを受けず、台湾の未来については民進党はいかなる台湾の地位の改変に関する事案についても公民投票によって決定することにしており、台湾の大多数の人民もこの立場を支持すると思っている」と話している。

民進党は、中国共産党と国民党が、九二共識や一つの中国の原則についてあいまいにせず、双方が規定を話し合うべきだ、としている。これまで事実上2つの政権がある「中国」について、中国共産党側は交渉継続のため黙認していたのだが、これがもしも民進党が言うように原則的な規定について詰めてきたら、交渉のため1つの中国がどちらをさすのかそれぞれの解釈に任せていた暗黙の了解、コンセンサスを肯定も否定もせず、黙認することができなくなり、中台交流の前提条件が危うくなるかもしれない。

中国は、1国2制度で自治を保障するとしている香港で、統制を強めて自立的な行政長官選挙の実現をないがしろにして、多くの抗議を招き、世界に知られるところなった。香港に適用している1国2制度は、中国が台湾を将来の統一の際の原則と考えているもので、当然、台湾はこんなあやふやで保障もない原則を受け入れることはできない。中国側の台湾政策が大きく変わるのか、それとも、カウンターパートとして認められない民進党政権の間はだんまりを決め込むのか。すくなくとも台湾と中国の経済依存度が過去よりも高まっている中で、それは難しく、どちらも歩み寄りを見せるのではないか。