Takepuのブログ

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蔡英文敗因分析

2012-01-16 06:49:28 | 時事
14日投開票された台湾総統選で、民進党の蔡英文候補は、台湾全域で伸び悩んだのが敗因のようだ。特に有権者が最も多く、国民党支持が強い北部で、2年前の5市長選のときを上回るような追い上げが今回は見られなかったこと。それから民進党の地盤である南部でも、そこそこ大勝したが、他の地域で負けた分を補うほどの圧倒的な大量得票に至らず、逆に国民党がそこそこ健闘したことで、全体として票の上積みが国民党の馬英九の票数に届かなかったということのようだ。

台湾紙「聨合報」のサイトに掲載された選挙データによると、有権者数が最大の新北市で、1007551票。国民党の馬英九・呉敦義ペアは1245673票。もちろん外省人比率が高く、国民党支持者の多い北部の大都市では国民党が強いのだが、国民党の大票田で勝つか接戦にならなければ当選の可能性は低い。

2010年11月の5大市長選で蔡英文主席が新北市長に出馬した際の得票数は1004900票。対する当選した国民党の朱立倫候補(市長)は1115536票だった。国民党のほうがこの2年間の票数の伸びは大きい。2年前に追い上げたときは、蔡英文は市長に当選してしまうと、市長任期途中で辞職し総統選に出馬しなければならず、無責任と批判を受ける恐れがあることから、かえって僅差で落選して党勢拡大に努めるほうがよかった、と書いた。2年間で国民党を脅かすまでの得票は得られず伸び悩んだ。

また、民進党の大票田で支持基盤である南部の最大都市、高雄市では蔡蘇ペアが883158票、馬呉ペアが730461票。同様に2年前の高雄市長選と比較すると、陳菊女史の821089票に対して国民党候補は319171票。市長選のときには、ダブルスコアで圧勝だ、民進党はすごい、と喜んでいたのだろうが、このときは高雄市が高雄県を吸収して1人の首長を選ぶ選挙だったため、高雄県長だった楊秋興氏が民進党を離党して無所属で立候補、414950票を獲得した。

単純な足し算ではないだろうが、高雄市では今回の総統選で、2年前の国民党候補が獲得した票に加えて楊秋興氏が獲得した票も失った計算だ。単純に民進党票と考えるなら82万プラス41万の123万票が出なければいけないのだろうが、楊氏票は国民党が奪ってしまったと考えられるのではないか。高雄は台湾最大の貿易港を持つ工業都市で、中国との経済的結びつきも強い。中国とのビジネスを考慮に入れ、本来支持していた民進党を嫌って「独立よりメシ」と、国民党に投票した人が少なくなかったと考えられないだろうか。かつて民進党の母体を作った美麗島事件が発生した高雄だが、今回、民進党はその聖地で目いっぱいの得票が出来ず、結果として涙をのんだ。

市県別に見ると、国民党の16勝7敗で、人口比はあるにしても、国民党の勝ちだ。民進党は、人口の多い台北、新北で国民党に勝ち越せないまでも、その地盤を揺るがす高得票をした上で、台南、高雄など地盤の南部での大量得票でその差分を埋め合わせ、結果として総得票で上回らなければ勝てない選挙だった。その肝心の南部票がそこそこの勝利で、苦手な選挙区の負け分を埋め合わせるほどの大量得票にならなかった。