Takepuのブログ

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映画「梅蘭芳」を見た

2009-02-04 04:04:47 | 映画鑑賞

 中国映画の巨匠、陳凱歌監督が、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「覇王別姫 さらばわが愛」(1993年)以来、15年ぶりに京劇をテーマに撮った映画「梅蘭芳」をDVDで見た。
いうまでもなく中国最高の女形の京劇俳優、梅蘭芳=メイ・ランファン=(1894-1961)の生涯を描いたものだ。日本では3月7日封切だという。梅蘭芳役は黎明(レオン・ライ)。北京出身で香港の四大天王の一人(他の3人は劉徳華=アンディ・ラウ=、張学友=ジャッキー・チュン=、郭富城=アーロン・コック=)。香港の陳可辛(ピーター・チャン)監督の「甜蜜蜜」=邦題・ラブソング=(1996年)で好演した。梅と愛し合う男形京劇役者、孟小冬役に章子怡(チャン・ツィイー)。
梅の京劇の師匠、十三燕役に王学圻。彼は陳凱歌のデビュー作「黄土地(黄色い大地)」(1984年)で、可憐で薄幸の少女に慕われる八路軍兵士を演じた。次の「大閲兵」(1985年)にも出演している。日本からも安藤政信、六平直政が参加している。
音楽は、「覇王別姫」でも組んだ趙季平。
物語は、ネタバレ注意だが、①京劇の伝統と形式を重視する守旧派の師匠、十三燕との戦い②愛人となる孟小冬との出会いと別れ③米国公演④日本軍とのかかわり--の4つのエピソードを盛り込んだ。
実在の人物を描いているため、あまりマイナスイメージを出すようなエピソードは盛り込みにくいのか、「覇王別姫」ほどにはメリハリというか盛り上がりはあまり多くなく、淡々と物語は進んでいく。
梅蘭芳のエピソードは中国人にとっては周知の事実ということなのか、物語の中の出来事について、それほど説明的なシーンは入っていない。中国や京劇のことを知らない外国人には理解しがたいのではないか。
また日本びいきの陳凱歌としては、日本軍の兵士が京劇に理解をもっている、ということをまた物語に盛り込んだ。「覇王別姫」では、日本軍、国民党軍、八路軍がそれぞれ京劇をどのように理解しているか、を比較させ、「中国人より日本人のほうが芸術を理解している」と思わせるようなシーンがあったのだが、そのような刺激的なストーリーはなし。
満を持して撮った梅蘭芳の半世紀を描いた映画にしては、俗人的な盛り上がりに欠け、海外での賞は難しいんじゃないか、と思う。もちろん、賞狙いだけが目的ではないと思うが。
黎明は、僕は好きな役者。口数があまり多くなく、ちょっと間の抜けた感じの芝居はうまい。表情を崩すとあまり美しくないが、ある程度の年齢になったわけで、単なる二枚目を脱するためにはいいんだろう。章子怡はメイクの関係なのか、ブスッとした顔が鞏俐(コン・リー)を連想させる。歳をとったなあと実感。
物語の中で梅蘭芳の京劇理論や思想、方式に影響を与え、自らも梅の才能に惚れ援助を続ける邱如白役の孫紅雷を重要人物として描いている。「我的父親母親」で、都会から帰省し父親の葬式を出す息子役を演じたが、今回は芝居がわざとらしい感じもする。「覇王別姫」だと葛優が演じた評論家と比較してしまうが、葛優が「怪演」だったのに比べると物足りない。十三燕役の王学圻は「怪演」だったが。