わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

くれない坂の猫

2012年10月07日 | 観劇記
2012年10月7日昼の部   赤坂レッドシアター

脚本が素晴らしいと思いました。初演とは思えない完成度の高さに感激しました。

あらすじ。
大阪万博を翌年に控えた1969年の大阪、町医者の木原整骨院の待合室が舞台。
木原家は母やえ(奈良谷優季さん)、長女園恵(福田温子さん)、次女琴実(和田真季乃さん)、そして医者で園恵の夫暢秋(佐藤祐一さん)で構成されている。暢秋の大学病院時代の恩師高橋の息子浩一(尾崎喜芳さん)と琴実は見合いをし、浩一は非常に積極的だった。琴実はあまり乗り気ではなかった。医者であるのに、けがをしている猫を助けようとしなかったことも不信感を募らせる。その猫は元気を取り戻しシロと呼ばれ、なんだか幸福を運んでくれるような予感を感じさせていた。
ある日、診察時間終了後に在日二世の3人連れがやって来た。一人がかなりの傷を負っていたのだった。いくつもの病院で診察拒否をされたと言った。やえは「今、先生は外出中だけど、帰ってきたら診ます。」といい、彼らを受け入れた。
琴実はけがをしていた山村(高橋和久さん)が全快しないうちに土木工事の仕事に戻ることを心配し、見舞いがてら治療の手伝いをするため、彼らの住む地域へ何度も足を運んでいた。
そのことを見咎めた浩一と仲人鴨志田(大谷恭代さん)は、破談を申し渡した。病人がいたら病人を助けることが医者の務め。患者の身分、人種は関係がいないと考える木原家とは考え方が大きく違っていたのだ。
木原整骨院の患者、ご近所でも木原一家と在日の人々との関わりに対しいろいろな意見があった。
地主から明け渡しを求められていたので、万博を目前にしながらも、木原一家は長野に移転を決めた。
琴実は山村のことが忘れられず、大阪に残りたいと思っていた。家族は大反対。山村も「自分のことは忘れて長野に行くように」と伝えた。
引っ越しの日がやってきた。
山村がやって来た。「二年待って欲しい。二人で生活していける道を探すから・・・」と伝えた。琴実は家族を説得するために一緒に長野に旅立つ。

こんな感じでしょうか。

脚本:長田育恵さん 演出:田中圭介さん
あらすじ内に書ききれなかったキャスト:原元太仁さん、てるやひろしさん、若林幸樹さん、岡本幸子さん、高橋エマさん、尾崎宇内さん、遠藤哲司さん


物語は待合室だけで進んでいくのですが、その舞台装置、小物が本当によく出来ていました。あんなマッサージ機どこにあったんでしょうか?ダイヤル式の黒電話。物干し竿。昭和って不便だったけれど、温かく、そして、パワーがあったなぁと感じました。

あらすじには書きませんでしたが、病院の常連が3人。そしてその中の一人の娘も含め4人のキャラクターが本当に整理され尽くされていて、日本人と在日の人々との関係をどうしていくのかを考え、在日の人々の中でも、在日のままか帰化するのか、の選択をどう考えるのか、日本人でも在日の人々と同じような仕事をしている仕事のライバルとしての問題など、本当にいろいろな問題を問題として整理して下さっていました。

キャストの皆様の演技も素晴らしかったので、脚本家の意図したキャラ立ったのだと思いました。
印象に残ったのが・・・
母親の奈良谷さんはすごく自然体で、こういうおばちゃんいるわ~~~。と思いました。
笹舟亭という落語家で実は帰化していたという難しい役どころを、軽やかに演じつつも、自分の生き方をしっかり持っていると伝えて下さった原元さん。

こういう話題は取り上げるときに難しいのだと思います。一方的に憐みの目で見てしまい、返って反感を買うこともあります。この作品はそういう点がなく、それぞれの立場の人が自分の立場をきちんと主張しています。そして、違う立場の人も、違いを理解しようと皆が努力していました。
何より、最後が変にハッピーエンドでも、悲劇でもなかった点がよかったです。
これから2年頑張れ、と応援したくなる気持ちにもなります。そして、もし自分がこういう立場だったら、どうしようと考えを巡らすことが出来る終わり方でした。


日本は単一民族で構成されているだと言い切ってしまうことが度々ありますが、決してそうではありません。違う民族同士、互いを尊重しながら日本という社会を盛りたてて欲しいと思います。
この作品の構想を練っていらした際には、日韓関係の良好さがあったのだと思います。しかし、ほんのちょっとしたことで、この関係は崩れてしまいます。しかし、それは政治の面のことだけだと信じたいのです。日韓、日中の関係はともに、本当に難しい時代がありました。長い時間をかけ、少しずつ、少しずつお互いを理解して、交流を深めてきました。どうか、政治家がどう振舞おうが、顔も名前も性格も知っている友人に対して今までと同じ気持ちを持ち続けて欲しいと思います。政治家はその立場がいつか変わります。でも友人との友情は変わらないはずですから!!!

山村と琴実はきっと結婚しましたよ。
家庭では、キムチ入りお好み焼きなんかを作ったでしょうね。
ご近所さんとも、その美味しさで、すごく仲良くなったはずです。

などと書いていたら、お腹がすいてきました。豚肉を買ってきてあるので、豚キムチ丼にしようかな。

では、また。

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2 コメント

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どうもありがとうございます!! (佐藤祐一)
2012-10-24 22:14:58
木原暢秋こと佐藤です、こんばんは。
ネットを開く余裕もなかなかなかったので
今、拝読して、感激しています!!
皆で迷いながら作った舞台でしたので
「そんな風に感じていただけたんだ!」と
感激もひとしおです!
改めて、お忙しい中ご来場くださって
本当にありがとうございました。

終わってしまえば反省ばかりなのですが
しっかり反省して、今後に繋げていきます。
嬉しいご感想本当にどうもありがとうございます!
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次も (わーきんぐまざー)
2012-11-02 00:11:16
こちらにもコメントをありがとうございます。
佐藤さんのご出演の舞台をとても楽しみにしています。
次の作品も期待しております。
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