わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

過ぎ去りし日々

2006年03月15日 | 観劇記
無事生きていました。というぐらいご無沙汰をしました。
悪性の風邪も夫を避けて通り、ほっとしたものの、他の3人は本調子になれず、不調のまま3月に突入。体調が良くなってきたな、と思ったら仕事がとても忙しく、ここ数日は数時間の睡眠しか取れませんでした。一息、ということで久々の観劇でした。しかし、疲労気味で観るときにはやはりコメディがいいのですよね。今日の舞台の前は「ベガーズ・オペラ」でしたが、この時も相当イライラした精神状態で暗い舞台を観劇したので、さらに暗い気分になってしまいました。
今日はコメディどころではなく人間の生き方を問うようなお話でした。落ち込んではいませんが、深く感情移入出来ていません。
そういう日の感想はあまり書かない方がいいのかもしれませんが・・・ちょっと書いてみたいような・・・
春なのに花粉症なので、外出でうきうき!とも行かず・・・春なのに暗い気分・・・あまり暗くならないように、深呼吸です!!!

あらすじ。
ホルストメール(篠本幸寿さん)という斑模様の雄馬が生まれました。斑は不吉ということで子孫を残すことも許されない。去勢されたホルストメールは暗い日々を送っていた。仲間の馬は競で落とされて、素晴らしい飼い主に引き取られていく。競には出されなかったけれど、セルプホフスコーイ公爵(佐山陽規さん)がホルストメールに気付き、買って行った。ホルストメールは自分のことを認めてくれた公爵のために尽くそうと考えていた。競馬で昔の仲間で今は皇帝の持ち馬であるミールイ(吉田朋弘さん)を破りロシアで有名になる。
しかし、幸せは長く続かなかった。公爵が自分のもとを去る恋人マチエ(蜂谷眞未さん)を追うために馬車を全力疾走させ、その結果ホルストメールは転倒、重症を追うことに。
早く走れないホルストメールは労働馬として次々と人手に渡っていく。そして20年の月日が過ぎ、ヴォレンスキーの厩で公爵と再会する。
すっかり年を取り、酒びたりになっている公爵。公爵という身分があるとはいえ、他人の家に居候をするまでに身を落としている。ホルストメールに出会っても気が付かない。他の馬達がその薄情さに怒り、一騒動となってしまう。ホルストメールと過ごした楽しい日々にも歌っていた「過ぎ去りし日々」に反応するホルストメール。公爵もついにホルストメールだと気が付く。
しかし、再会は悲しい別れでもあった。公爵にはホルストメールを買い取るお金もない。騒動を起こしたために、居候を断られてしまう。そして、ホルストメールも騒動のもとだとして殺されてしまうのだった。

多分、こんな感じです。原作がトルストイなのです。ロシア文学に出てくる人名はとても難しくて・・・セルプホフスコーイ公爵・・・何度も台詞に出てくるのですが、俳優の皆様はサラっと言われていました。下を噛みそうです(笑)。言う前に、覚えるのも大変で、あらすじの中の名前がもし違っていたらお許し下さい。

馬が主人公なので、馬の役のときに馬のいななき、しぐさをとても取り入れています。動きがとても大変そうで、体力勝負の作品だなぁと思いました。ホルストメール役の篠本さんはほぼ出ずっぱり。その上、老いた時期を演じるときは脚が悪いことも表現するので、本当に本当に大変だったと思います。
しかしその一方で、そこまで「馬」にこだわる必要かあるのかなぁ、という思いもあります。馬の衣装は白に手綱を連想させる紐をかけているのです。それで、「馬」という印象があります。人間と馬が登場する場面では、馬としての身体的表現があることによって人間と馬との間にある壁とても際立つと思いましたが、馬同士の場合にはもう少し自然動きの方が、馬達の感情に観客が感情移入出来るのではないかと思いました。

老いには、荘厳な老いと惨めな老いがあるというような表現があるのです。なるほどとも思いつつ、馬の老いは荘厳で、人間は惨め、と捉えているようで、少し悲しい気持ちになりました。トルストイの描いた時代はロシア帝政。身分制度が前提となってもいますから、現在とは人間の捉え方が大きく違うとは思いますが、もう少し人間の生き方に希望のある結末であったらいいなぁと感じてしまいました。トルストイは人間の生き方に警鐘を鳴らしたのだとわかっていても、今日は特に希望が欲しかったのです。・・・相当疲れてます(苦笑)・・・

名前が覚えられない・・・ということで、間違っていたら申し訳ないのですが、フリッツをなさった山村秀勝さんは、セルプホフスコーイ公爵の御者役もなさっていたのでしょうか?フェオファーンという役名でしたか?パンフレットを見つつ、役名に関するわずかな記憶を辿る私です。惨めな老い・・・(暗)
どちらの役も、とても心温まる演技でした。公爵の御者はホルストメールも公爵もとても大切にしていることが、しっかりと伝わってきました。フリッツも心優しいので、公爵も辛い居候生活でも心和んだのではと、いろいろ想像が広がる演技だったと思いました。
ちょっとした場面でも、その奥を垣間見せてくれる演技に出会うと、とても嬉しくなります。
が、その逆もあるわけです。
もともとの脚本で描いていないのかもしれませんし、そこまで観客として探求しなくてもいいと思いつつもとても気になるのが、公爵とマチエの関係です。公爵が20年で没落してしまう原因でもあると推測されるので、もう少し描いて、もっと深い演技をしてほしかったなぁと思いました。

セルプホフスコーイ公爵を演じられたのが佐山さん。年を重ねてからの演技が素晴らしかったです。「過ぎ去りし日々」という歌を何度も歌うのですが、その歌い分けがやはり凄いですね。歌詞の内容は、過ぎ去った日々を悔いることなく、前を見ていこう、という感じです。メロディはちょっと切ない感じです。若いときは、過ぎ去った日々を・・・と歌いながらも、あまり感慨にふける様子もなく、メロディの美しさを楽しんで歌っているようでした。しかし、年老いてからは、歌の意味するところをとても感じさせてくださいました。私自身、まだ、というか、したくないと、というか、過去を振り返りませんので、本当の歌の深さを感じ取ってはいないと思いますが、心に残る1曲になりました。
若い時代の時に「公爵」という身分を考えてか、とても落ち着いたお声で演じられていましたが、もう少し優しい、ちょっと軽めのお声で演じられたら、もっともっとよかったかなぁと思いました。

ちょっとお疲れモードの私が観劇するには、辛い内容の舞台でしたが、美しい音楽に心癒されました。

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