暇つぶし日記

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’16夏、アイルランドを歩く(7)徒歩第5日目、Allihies からGarnish の Windy Point Houseまで16km

2016年12月03日 00時34分05秒 | 日常

 

2016年 8月 18日 (木)

朝食を済ませ表に出たら9時だった。 薄青い空に太陽が見えるが真夏とは思えない日光の力だ。 つづら折りの径を辿り海岸沿いに岬の突端方向に向かうのだがここで初めて大きな砂浜の縁を通った。 小さな砂丘のようなものもある砂浜で真夏には1000人は軽くゆったりと収容できるようなスペースなのだが向うに豆粒のように子供たちが何人か凧揚げをして遊んでいるだけだ。 もっとも海水浴といってもこんな日中温度が15℃のようなところで泳ぐものもいないだろうし仮令日光浴だけに来るとしても過疎地域であるこの近辺から1000人があつまるとは思えない。 現に今回のウオーキングで遠くに見える大小の砂浜に避暑の人々の影を見ることはなかった。

切り立った崖の縁を歩くのだがそこまで牧草地が広がっており陸地に数百メートル海から浸食された幅5m程の狭い割れ目の上を跨ぐ梯子をほぼ200mごとに渡らなければならずそれを厭えば迂回するのに時間がかかることからこの解決策だ。 牧草地の境界を超えるこのような梯子は慣れっこになっているけれどこのような割れ目はここだけだった。 それを厭うなら見通しの利かない、車が通る狭い道を交通を気にしながら行くしかないのだがこんな羊とそのそばに断崖があって波が押し寄せる面白いルートを通らない理由はない。

そのうち路は海岸線から離れ徐々に斜面を斜めに登って行き後方彼方を眺めると朝出てきた宿舎からその向うに Allihies の町の家々がそのカラフルなペンキの点々となって緑の背景に見ることが出来る。 そこから5,6kmは来ているだろうか。 かなり周りを見晴らせる小路に出てそこは羊農家の作業車一台通れるだけの幅のところを景色を楽しみながら数キロ進んだ。 その間何種類かの羊が路の上下のきつい斜面に貼りついて草を食んでいた。 羊にもこの路は移動するのに楽なのか糞の量がすごく踏まずに歩くのが難しくそのうちどうでも良くなる。 道路は乾いており雨が降っていたり雨の後でなくて幸いだった。 今回は一日の終わりに靴底の糞や泥を宿舎の手前や入口で掻きだしたり落としたりすることがなかったのは幸いだった。

1時半にこのベアラ半島の突端、その向うのダーセイ島が重なっていてその島の天辺にある物見の塔がここから見えるところにやってきた。 今日の宿舎は半島の先端部にある Windy Point House というB&Bなのだがその辺りには島に渡るロープウェーしかないところだ。 見晴らしがいいのでここで昼食にした。 そのまま真っすぐそこに向かえば時間が余りそうなのですぐ下の数戸集まったところから左に折れて半島のコブのようなところを30分ほど南下しつつ迂回してその半島の実際の先端が見晴らせる場所まで行進みそこから北上してこの日の宿舎方向に戻ることにした。 この辺りに家は殆どなく急な坂が続き農家が数キロごとに点々とあるだけだった。 トラクターが何とか通れるだけの路幅だったがそれはそれとしても果たしてトラクターが上り下りできるのだろうかというようなきつい勾配の土地だ。 両方から崖が迫った小路を歩いていると何とも言えないいい香りがするところがあった。 その斜面の両側には野生のスイカズラの群生が盛りを過ぎた黄ばみの花を交えて薄黄色の壁のように群れていた。 自宅に一株だけ残ったスイカズラはほぼ枯れて絶滅寸前なのにここで圧倒的な量を両側に長さ100mほど、高さ50m弱に渡って群れている景色は圧巻だった。 実際あちこちに鮮やかな色の花が咲いているところには行き合ったけれどアイルランドでこのような圧倒的な群生に行き会うとは思いもつかなかった。 実際この小さな谷間だけには一種独特な雰囲気が漂っていた。

その谷を出て正面方向が実際の先端だが道もなく何時間もかかるので右に折れ斜面を登るとその先端を遙かに見渡せる景色のいいところに家が一軒だけありその庭に老人が一人いた。 もう大分先を歩いていた娘と話し込んでいた。 我々がそこに行くとその老人は79になるジョン・コリンだと言った。 岬の先端の方で生まれたけれど若い時にイギリスに出稼ぎに出てここに落ち着いたのだと言う。 婆さんには旅人と話をするなと言われているけれど退屈だから天気のいい日には庭に出て坂を上って来る人に話しかけているそうだ。 そろそろ宿舎に着く時間のことも考えて、ここに来るのはドイツ人とオランダ人が多いという爺さんと別れて先を急いだ。 

対向車が来るとどこかに行き過ぎることが出来るようなスペースをみつけどちらかがそこで待つというような道が半島先端に向かう幹線道路だ。 さきほどの田舎道から出てくればどこかで車の音を聴きながら用心して歩く様になりそんな道を歩くのは余り嬉しくはないのだが片側は傾斜のきつい山の斜面、反対側が断崖絶壁崖の直接海というところでは仕方がない。 

ここまでくればダーセイ島と半島先端との海峡が見え、その島と突端を繋ぐ6人乗りのロープウェーが見晴らせる景色のいい場所にある宿舎に着いた。 6時の食事までまだ間があるのでシャワーを浴びてからベッドに寝転んで大きな窓から海峡、何時間か前まで歩いてきた崖の連なる辺りを眺めた。 この辺りには鯨やイルカが現れるというので棚に置いてある双眼鏡を10分ほど覗いていたがそれらしい波頭が見えるが本物を判別することはできなかった。 そのうち微睡んで1時間ほど居眠った。 起きたら外はは曇って沖は時雨れているようだった。

食事の時間になりこれも窓辺のダイニングに行くとこのウォーキングの初日の宿舎で一緒だった1人で歩いているオランダ人の女性に会った。 同じようなルートを辿るのであちこちで顔を合わすしここで泊まるというのを知っていたからルートがどうだったか脇道がどうだとかの話で娘が途中で話した爺さんのことをいうと自分もそこで11時に会ってビールを飲まないかと勧められたと言った。 そんなあれこれを女性たちは魚料理、自分はミント・ソースでラム肉を食べながら喋り、食後は陽気な宿の主人からこの辺りのこと、昨日泊まった村の様子などのことを聴き9時ぐらいまで過ごした後それぞれの部屋に引揚げた。 天気予報では明日は1日中雨が降ると言っている。

 

自宅のスイカズラ

http://blog.goo.ne.jp/vogelpoepjp/e/286cbc3b9a96c56cd301ec87ee263ae2