暇つぶし日記

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イギリス の ケンブリッジ、ノフォーク、サフォーク州 旅行 (6)海岸の湿地帯を歩く

2015年08月26日 18時55分54秒 | 日常

 

一週間ほどのこの旅では行きと帰りのフェリーのキャビンでそれぞれ一泊し、後はテントを張ってのキャンプだった。 早朝に到着して Harwich の町からそのあたりで一番大きな町、 Ipswich の古い町の中心に行き朝食を摂り、その後西に向かい昔の海岸の保養地、 Great Yarmouth では憂鬱になるほどの落ちぶれた町の景観に驚いたもののそこから北上して Sheringham の町から手前に東1kmもない崖の上の教会の傍にあるキャンプ場に一晩テントを張った。 そこから東へ2kmほど離れた Cromer という地元の保養地は活気があり夕食はその海岸沿いにあるホテル・レストランで旨い夕食を採り、だからそののちもう一度ここに戻ってくることになる。

それからケンブリッジの隣村の Granchester というところで知人の夜中のパーティーに陪席するのにそこから4kmほど離れた Comberton という村のキャンプ場 Highfield Farm で2泊、 また海岸に戻って Sheringham から西に15kmほどの Stiffkey Marsh を望む大きなテント村キャンピングサイトに来て2泊した。 今回はホテルに泊まったのは行き帰りのフェリーだけだった。 パラパラと細かい雨はちょっとだけあったものの雨宿りをするようなこともなく幸いだった。  

キャンプで一番気になるのがテントが濡れることだ。 そのときはいいのだが移動する時に困る。 晴れていても例えばアルプスの山の谷間のキャンプ場なら一方の斜面は7時を周って陽が射しても反対側は9時を周らなければ陽が射さないことがあり、そんな晴れた朝の朝露に濡れたテントはある程度乾かさなければ畳めない。 晴れていてもこれだから雨が降る中の出発ならウンザリしつつ仕方なく畳む。 重い、嵩が高い、匂う、すべてが湿気るなどといいことはない。 だからそんなテントの下に敷くグランドシートの裏はいつも湿っているので泥を落としておかなければテントは何年も使えない。 だから乾いたまままで畳めるというのは贅沢である。 

このキャンプ場はグーグル・マップスにも出ていない、A149号という細い海岸沿いの道からよっぽど注意していないと見落とすような Green Way 通りのつきあたりにあるテント中心のキャンプ場だ。 突き当りに注意しないでいればそこから海に落ちる。 我々もこの入口を見落とし引き返し戻ってきてやっと探し当てたというような小路だ。 掘っ立て小屋のような事務所でチェックインすればそこには携帯を充電するためのソケットのジャングルだった。 一回充電料50円也を払い差し込むのだが案の定ヨーロッパの2ピンプラグ用のコンセントはなく、我々が持って行った2ピンからイギリスの平たい3ピンへの変換プラグにつないだら一つだけそれが目立ったので他のと見誤ることはなかった。 100から200はあるかもしれない大小さまざまなテントが勝手にあちこちに張られていてその間をソロソロと車を走らせている間周りの様子を見るのには飽きなかった。 大体今ではキャンプ場でテントを張って旅するというのはマイノリティーなのだからこれだけテントが集まっているのは嬉しかった。 けれど時代は変わりバスや電車、駅から徒歩で来るというのは流石希少価値であり殆どが車に積んでここに来て設営するというものだ。 2世代、3世代、友人、クラブなど家族、グループが多く、概ね開放的で子供たちはすぐ近くの家族の同じような年頃の子供たちと仲良くなりなり走り回り群れを作り喧嘩をしては仲直りをし、大人も子供ものんびりと寛げるようなところだった。 多分昔からヒッピーのたまり場だったのではないか。 海岸緊急救助手漕ぎボートの敷地が元になっていると聞いたしまだ10年に一度あるかないかの水害に備えて数隻のボートもキャンプ場の傍の納屋にあった。 上げ潮の時はそこから20mも移動させればその湿地に出られるのだが夏の今あたりなら引き潮の時は水辺は3kmほど先になる。

自分たちのテントを二つ設営して周りを見て回ることにした。 衛生・調理施設は清潔で、込み合う食事後、朝夕のシャワー混雑時を避ければ概ね問題はない。 敷地のすぐ外は Stiffkey Saltmarsh と呼ばれる塩水の湿地帯だ。 この自然を守るのに二人の今は老人となっている男たちが50年格闘してきて保存の運びとなったものらしい。 そういうボードが立っているところまで大潮のときは水が来てこの写真にある部分は全て冠水する。 一日に2回潮が満ち、引く。 だからそのボードから3km歩いて渚に出てもそこで能天気に水に浸かっていたらその後の満ち潮の速さに追いついていけない場合が多くこの時間がキャンプ場に大きく表示されている。 今はあまりそういうことはないけれどフランスのモンサンミッシェルでも同じことだ。 引き潮の時にそこを歩いた。 家人と息子は泥、海水に対応するために水着にT-シャツ姿だが自分はどうもその気にもなれずマーシュの乾いた土の上を選んで歩いた。 当然ウォーキング・シューズだけれど子供・若者はサンダルでビチョビチョと歩き回っている。 湿地帯ではあるけれど乾いているところを選べば問題ないのだがどこも乾いているとは限らない。 結局は前に誰かが歩いたところを歩くことになるのだがそれだけ見ていれば自分の行きたい方向に向かうとは限らない。 あちこちに水路が走っていてそこに落ちれば1mはある。 こういう水路はカヌー遊びのルートになるのだがもしカヌーがどこかに乗り上げて引っかかり手間取れば潮は引いてしまい悪くいけば12時間こんな何もないところで待たなければならない羽目になる。 自分は左膝のこともあるので3kmもそんなところを歩く気もなく緑が途切れる2km先まで出かけてきた。 二人はその先,貝も海藻もない完全な砂浜をほぼ1km歩いて10分ほど浅い海水の中を泳いできた。 背が立つか立たないかというような深みまで行くにはまだそこから随分沖にでなければならなくそんなリスクを負うバカは周りにはだれもいない。 

自分はのんびり見渡しても誰も周りにいないところを水溜りを覗いては妙な渦巻き型のニュルニュル巻いた形のものを見たりしながら1kmほど戻ると深い水路の上に橋が架かっていて、そこには来るときにはいなかった中学生らしい男女のカップルが木切れとヒモで蟹を釣っていた。 海辺で育ったのではなく町から来て偶々このキャンプで知り合ったのだと言い、屈託なくなんやかや話しながら釣っているので別段釣れなくともいいようなそぶりだった。 十分に性を意識していながらもまだ子供を十分残して他愛のないこういうカップルをこんなところで見るのも悪くない。 彼らを残してそこにあたりの植生を見ているとキャンプでの晩飯に使えるものがあるのに気付いたので喰えそうな大きさのものを摘んで戻った。

 和名ではアッケシソウといわれ、シー・アスパラガスも呼ばれる美しい緑の茎草が見渡す限り育っていて、それと和名ではイソマツ属のスプーンの形に似ているのかハマサジとよばれ、またオランダでは子羊の耳と呼ばれその花が香草のローズマリーの薄紫の細かいものと同じであるから湿原に立つとまるでヒースの平原にいるような気持にもなる葉肉の厚いものが旨い植物で一杯だ。 ただ季節が収穫には早すぎるのか緑のアッケシソウの方は茹でたり炒めたりするだけで旨かったがハマサジのほうは大きいものは見つからず葉に肉もなく採ってきた3分の1ほどしか喰えなかった。

テントのところに戻ってくると強風で隣のテントが倒れていた。 そのまま向うに飛ばされて行きそうだったので管理人に連絡すると持ち主の電話番号があるから連絡するというけれど繋がらない。 向うに飛ばされてしまえばそこからドミノ倒しのように被害が行くだろうから切れたロープの端を繋いでペグを打ち直し何とか保ったがここでは普通は陸から海に風が吹きその先はオランダの自宅あたりだ。 だからここでは潮風がなく湿らない。

暫くして大分陽が陰ってきて息子と家人が膝辺りまで泥だらけにして戻ってきた。 自分は持ってきた本をスコッチをチビチビ食前酒として飲みながら読んでいる間に彼らは前日に買ってあった鶏肉と米に先ほど採ってきたアッケシソウとハマサジを混ぜて夕食をつくり地元のエール・ビールで喰えばキャンプの夕食としては悪くはなかった。 



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