雨のしょぼ降る金曜日の宵に地元のジャズカフェーに出かけた。 ベン・ウェブスターが最晩年に立った9平米ほどの舞台でこの日の三人が準備していた。 6つほどのテーブルにバーのつめれば10人ほどが並べるカウンターには3,4人、あちこちのテーブルでは学生風のグループが賑やかに喋っていた。 定刻を10分ほど周って「あなたと夜と音楽と」が前触れもなく演奏されてこの日の「コンサート」が始まった。 メールここで演ると知らされたのは前日だった。 そのせいか日頃みるジャズ仲間の顔も見えずまるで雑談部屋でジャズが鳴っている、と言う様相だった。 内容はどうか。
三年ほど前にちゃんとしたホールでのこの人のコンサートに行ったときのことを次のように記した。
http://blogs.yahoo.co.jp/vogelpoepjp/49110308.html
レパートリーは上記とほぼ同様でありながらこの日の環境、客の種類からこのトリオのリラックスした試みが聞けたような気がした。 R.R.のCDやDVDで聴ける静的なもの、こまやかな叙情を排した、荒々しくも熱のこもったものが演奏され、ここではジャズには興味が多少はあっても、熱に圧倒されてその結果そこから離れる気配の強い若者の多い会場でその雑音に拮抗するかのような緊張感も多少は漂い、普通ではなかなか聴けないところに行き会ったという気がした。
R.R.のサイトには英、蘭、日のCD評が検索できるようになっていて3つほど日本の評がある。 そのなかにR.R.を「隠れた天才」と書かれているのをみた。 なるほどR.R.の履歴からすればそうかもしれない。 ユトレヒト大学で数学を修め、コンピューターのプログラミングを経験してからのジャズピアニストなのだ。 頭の回転が大層速く、それをその都度自分の動きで確認しようとするのは彼の指の動きに現れているかもしれない。 話してみると分かるかもしれない。 率直な意見のさまざまなところでR.R.の笑いが弾けるのは彼の頭の中で知の回路が過熱気味に働きそれを押さえるための笑いかもしれない。 普通は知はクールなもの、情熱は熱いもの、とたとえられるけれど彼の場合にはその結合、知が情のもとになって短い距離で互いにフィードバックする、ということになっているのではないかと忖度する。
音の調整だけはできているけれどここの安物のピアノの鍵盤が重いという、とくに右手の中音のあたりらしい、2,3日前に重い大きな植木鉢を幾つも運んで右手の筋のぐあいが良くないのでそれは手のせいか、ピアノのせいかベースにちょっと指で鍵盤のそのあたりをみてくれと頼んでいたのだがベースもこれはこころもち重いなあとのコメントで、嬉しいような、嬉しくないような、といって始めたセットだったのだが始まればそんなことはすでにどこにもないような飛ばし方である。
そのとき、In Your Own Sweet Way というのを彼のこの状況下でのやり方で演じたのを片手の中に入るデジカメで12分ほど録画、録音した。 貧しい音質だが、雑音と熱は伝わるだろうと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=paRuqpkMJEA