暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

JvRのインタビュー記事が新聞に出た

2005年09月05日 23時19分32秒 | ジャズ
オランダ日刊高級新聞フォルクスクラント誌 2005年9月1日掲載 

インタビュー

「今やっと自分が何をやりたいか分かるようになった」

同僚ジャズメンでもあるジョン・スコフィールドともビールを飲み会う仲でもある。 ジャズギタリストのイェッセ・ファン ルーラーはもはやスーパータレントとしての重圧を感じることはなくなった。 「これからおもしろくなります。」という彼は今晩(オランダジャズの殿堂)ビムハウスのステージに立つ。

添付写真のキャプション

ジャズギタリスト、イェッセ・ファン ルーラーは自分自身のぎこちなく不自然な時代をやっと抜け出したというような感慨を持っている

今に残るような爪あとを残すことはなかったけれど、ある意味では呪われた時代ではあった。 当時23歳でコンサーヴァトリアムを卒業したあとすぐ、ヨーロッパの人間として初めて権威あるアメリカのセロニアス・モンク コンペで優勝したのは10年前のことだ。 「そのときは幸福の絶頂だったんですがね」

ファン ルーラーの8枚目の、ジャズカフェ、“マーフィーズ ロー”でのライブCDが最近店頭に並んだ。 このアルバムは彼にとっては初めてのライブ録音であるとともに自身の可能性をフルに演じることができたとの思いを持った初アルバムでもある。 「スタジオ録音では今までは自分で思うようにやりたいと思ったことは十分には出てきませんでしたね」 今夜は(CDのメンバーと同じく)ベーシスト、フランス・ファン デル フーベン並びにドラマーのマルタイン・フィンクとビムハウスで演奏する。

彼自身在住のアムステルダムのテラスで回想する。 10年前突然、彼はジャズスターとして出現する。 「そのとき私は音楽的に何か新しいもの、何かをジャズ界にもたらすことを期待されていたんですね,  とてもそんなことにはまだ若すぎるのにね、まだCDも何も出していないのに。  あのコンペに参加したのは一寸やってみようか、コンペというのがどんなものかまあ雰囲気を感じるためだけにとやってみただけなんですよ。 まあ、中途半端な気持ちからでした。 けど、後になって思うのですが、その受賞からなにか大人になる混迷の時期に投げ込まれたというようなある種のふわっとした(自分が持ち上がるような)軽さを経験したのですよ。」

指の動き一つ一つを観察されることなく、ひょっとしてあと1年ぐらいは自分でいろいろなことを試して見ることができればよかったのかもしれないとおもうこともある。 自分が卒業したコンサーヴァトリアムですぐ教鞭をとることとなったことも大きなプレッシャーともなった。 「自分の学生に自分の技量を見せなければ、という気持ちがありましたね。 学生といってもほとんど同い年か年上ですよ」

あのコンペでよかったことは今でも当時の審査員の何人かと付き合いがあることだ。 パット・マセニーやジョン・スコフィールドのようなギターの神様と呼ばれるような人たちは彼を熱烈に支持してくれた。 ファン ルーラーは時には彼らのもとを訪れるし、彼らもイェッセの作品、活動には目をとめてくれている。 スコフィールドとはオランダに来る際には一緒にビールを飲む仲なのだという。 「私には彼はある種の父親的な存在のような気がしますね。 とてもうれしいですね」

長らく彼には伝説的ギタリストである師匠の故ヴィム・オーバーハウに次いで現在最高のギタリストであるという地位が却って思いもかけないうれしくない効果をもたらしていた。 ほとんどどこからもお呼びがかからなかったということである。 「皆は私が多忙だと思っていたんでしょうかね、ほとんど誰も連絡をとってこなかった、ギャラが高い、とでもおもってたんでしょうかね。 でも、それが例えば私がこれから音楽界に対して自立して打って出るんだというのだったらまだあんまりつらいことではなかったのかもしれないけれど、私にはサイドマンとしての経験が必要だし、いろいろ種類の違った連中とジャズクラブでやるという経験が必要だったのに(お呼びがかからなかった)」


けれど結局彼はそういう経験もものして、ぎこちなく不自然な時期から脱してからもうかなりの時がたつ。 今では彼はコンセルトヘボー・ジャズオーケストラのメンバーとして、また、(アルトの長老)ピート・ノルダイクとも、それに自身のトリオをひきいて今年も日本のツアーを行なったりして演奏活動を精力的に続けている。 また、編曲、作曲ならびに製作ということではフランシーン・ファン テェウネンの深い感興をもたらすCD、「ムジカ」に携わりオランダのエジソン音楽賞にノミネートされている。 そして現在、まず日本のレーベルのために製作され、ついにはオランダでも発売されることとなったジャズスタンダードを収めた初ライブ最新CDに非常に満足しているということだ。 「今私はほんとに自分が何をやりたいかわかるようになりました。 自分が演奏するものを何をどのように演奏するか音楽的選択に関しては前よりもはっきりと自分のものとするようになりました。 以前にはすぐ飽和状態になるようなこともありましたがすぐに飛ばして気分よくしなければ、ということだったんでしょうね。 今ではそういうふうにもっていくもっといい道をみつけたんですがね、それはじっくりと聴くということですよ」

「1年で2,3回は突然自分が(前進するというか)深まるというような気持ちになることがあるんです。
  で、そういうときはまた、こう考える; これからはほんとにおもしろくなる、と。」