「今ツタヤに返しに行くんだけど、ママ、みたいなら見ていいよ。」
そう言われてケースから出したのが、2004年に封切られたドイツの
ドキュメンタリー映画 「ベルリンフィルと子供たち」
タイトル名は知っていたし、よさそうな予感もしたので、私が見た後、
明朝の開店前までにツタヤのポストに返却する、ということになった。
“子供たちに、もっとクラシックの楽しさを感じてもらいたい” と
ベルリンフィル芸術監督に就任したサイモン・ラトルが最も力を入れて
いた「教育プログラム」の中の活動の一つ「ダンス・プロジェクト」。
そこに集められたのが、ベルリン在住の、国や文化、年齢、育った環境も
まちまちで、ダンスどころか、クラシック音楽にも全く縁もゆかりもない、
どちらかというと無気力な250人の子供たちだ。
6週間という決められた期間での特訓後、ベルリン・アリーナに於いて、
ベルリンフィルとの共演で、ストラヴィンスキーの《春の祭典》を踊る、という
一大プロジェクトを、サイモン・ラトルや振り付け師である、
ロイストン・マルドゥームとスザンナ・ブロウトン、
そして、何人かの子供たちへのインタヴューを交えて映画は進んでいく。
まず映画の始まりが、軽快なラップ風の音楽だったので、これがベルリンフィルと
どう繋がっていくのだろう・・・と、がぜん興味が湧いてきた。
すっかりストーリーの中に入りこんでしまったころ、ふと後ろをふり返ると
いないはずの娘も、そこで惹き付けられたかのように、また見ているではないか!
♪・・・♪・・・♪・・・♪・・・♪・・・♪
音楽にはもっともっと可能性がある
人々を分断するのではなくて、一つにすることだ (ラトル)
エネルギーを口から出してはいけない
子供たちは社会の底辺で生きている子 自信のない子
まだ怖がっている 不安なんだ
不安な子ほどおしゃべりする
真剣にならずに笑っているのは、不安があるからなのだ
親の無関心・・・自分たちもそのように育ったから
彼らはその人生体験から、素直じゃない
すべてを吐き出すと視野も開けてくる
ダンスは、自分の体を意識することだ
「沈黙の力」を理解させるのが難しかった
世の中の静寂や 肉体の声に耳を澄ますこと
一つのミスで20人の努力が無駄になるんだ
人生には規律というものが必要だ
♪・・・♪・・・♪
ロイストンは4歳の時に母親を亡くしている。決して大人を信用しなかった。
10代の頃は一人ぽっち。マーゴ・フォンテーンの映画を見て、感動し
48時間以内にバレー学校に申し込みに駆けつけたという。
だから淋しくて屈折した子どもたちの心が読める。
だからどうしても子供たちにやる気を起こさせ、感動を知ってもらいたいのだ。
根気よく、自分の気持ちをさらけ出して子供に接する姿はなんとも 気高い。
友だちとは きみが新しいことに挑んでいる時 励ましてくれる人だ
♪・・・♪・・・♪
やる気のないどうしようもない子どもたちが、ばからしい!もうやめる!
といいながらも指導者たちの熱意に少~しずつ影響されていく。
そして時が経つにつれて、こう言い出す子も現れる。
「厳しいほうがいいわ 真剣さがわかるから」
19才のマルティンは、人に触るのが嫌いな、物事を否定的に考える子
「自分は顔がいつもこわばり、自己防衛的だった
が、今、ぼくの中でなにかが変わって来ている」
ナイジェリア紛争で家族をすべて失ったという16才のオイランカ
「このダンスの授業で人生も変えられる
今ぼくが一人なのは神の意思だ。だからがんばらなくちゃ」
♪・・・♪・・・♪
子供たちは無駄口を利かなくなった
自分が前に進む為に必要な感覚がわかってきたようだ
芸術はぜいたく品ではなく、必需品だ
出来る子は既存の知識を知っているだけ
アウトサイダー気味の子のほうが伸びる
何するにも旅をして行き先に満足するな
自分の限界に甘んじるのは楽だ
限界を超える努力はいつも孤独よ
♪・・・♪・・・♪
教育現場やインタヴューの中での、心を打つこれらの発言。
その言葉以上に彼らの真剣な表情や口ぶり、教育実践者としての
忍耐力。すべてにすっかり参ってしまいました。
嗚呼、わたしのサイモン・ラトルよ!
ロイストンよ!
& マルティン君!
そして 嗚呼わが娘よ!
danke schon♪ ダーリン danke schon♪
娘と2人、「このDVD、買いたいね~」と意見が一致した今宵でした。
<CD/SACDに収録されている映画の一場面のラトルのスピーチ>
「おはよう、1分だけ話をしよう。今回の試みは信じられないほどすばらしいものだ。子供だけのダンス・カンパニー、年齢も8歳から20代初めと幅広い。人数は全部で250人。できる限りさまざまな社会的階層から集めた、性別もさまざまで3種類、あらゆる背景の子たちが集まった。年齢も8歳から20代なら、出身もイラクにイランにロシアにギリシャ。ドイツでも東ベルリンと西ベルリン、敵同士だったかもしれない子供たちだ。私は今までいろいろな“春の祭典”の舞台を見てきたがこんなのは初めてだ。かつてない新しい試みだし、我々皆で出来ることをうれしく思う。大きな挑戦だ。楽しみにして演奏に入ろう」 ― 映画「ベルリン・フィルと子どもたち」より
私も早速TSUTAYAに行かねば
これ、草稿にしていたと思っていたら投稿になっていたのでびっくりでした。監督の事を書き足そうと思っていたの。でも、リンクを付けたからまっいいか。感性豊かな若い監督と、世界のトップをいくオーケストラ指揮者の何とまあ柔軟な心!
「ハイ!ロイストン、素晴らしい日だね」
と言ったときのサイモンの顔が瞼から離れませ~ん。「ハイ!bianca、素晴らしい出会いだね」って言って欲しいデス。
意識が変わるとすごいね。
よかった、と思えたかしら。クラシックもベルリンフィルも身近に思えませんでしたか?子供たちの変化をドキュメンタリーで見ることが出来るのって、すごいでしょ。ラトルに参らなかったの、poppyさん?