“ヴィタミーナ”な生活

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雷桜(らいおう)

2010年06月10日 | 
宇江佐真理さんの時代小説。

ひな祭りの夜、江戸に近い瀬田村の庄屋の娘「遊」の姿が見えなくなります。
村をあげて捜索するも遊を見つけることが出来ず、年月は過ぎていきます。
そして10年を過ぎたころ、遊がひょっこりと戻ってきます。
その頃、遊の兄「助次郎」は、江戸の徳川斉道の屋敷に奉公に上がり、癇が強く眠れない斉道に、瀬田村と遊の話をします。
「このままでは狂ってしまう」という斉道を心配した助次郎は、上司である榎戸と相談し、養生のため、瀬田村へ斉道を連れて行きます。
そして、斉道と遊は出会うのです。

風景描写が美しい。
桜、燃えるような紅葉、漆黒の闇、天女池、千畳敷など。
美しい瀬田村を舞台に、斉道と遊の恋を軸として、遊がかどわかされた理由、裏切り者は誰?、瀬田山の謎などのサスペンス要素を散りばめて、上質な物語となっています。
そして、切ない。
身分を越えた遊と斉道との恋と決別は、ただただ、切ない。

この小説、女性作家によって書かれたものだからか、登場人物の女性が魅力的。
育ちは野性的で礼儀はなっておらず、ずけずけとものを言うけれど、ぶれていない芯が一本通っている遊。
厳しく優しい母と兄嫁、理知的な助次郎の妻の沙江、穏やかで暖かい斉道の正室、菊姫。
共通しているのは、おおらかさ、心の暖かさです。
仕事で疲れた帰りの電車の中で読んでいて、心が静まってくるような感じを持ちました。

さて、この小説、秋に映画が公開されるのだそう。
実は、遊の兄の助次郎がテレビドラマJIN仁の恭太郎と印象が重なるな、と読みながら思っていたのですが、
演じる俳優さんは同じ人でした。

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