“ヴィタミーナ”な生活

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冬の喝采

2010年11月12日 | 
名ランナー(迷解説者でもある)瀬古利彦氏と同時期に早稲田大学競争部に在籍し、箱根駅伝に2回出場した作家黒木亮氏の自伝的小説です。
ご本人が中学生の頃からつけていた練習日記を元に、自身の陸上への思いや仲間たちとの触れ合い、中村監督の指導などを自伝でありながら一歩引いた視線で描いています。、
スポーツ小説ではありませんが、箱根駅伝好きには大いに楽しめる作品です。

まず驚き感心したのが、陸上選手のストイックな生活と厳しい練習です。
身体を限界まで酷使する練習を続け、食べたいものも食べずに体重の管理。
また高校から大学にかけて3年間、怪我で走れない時期があり、高校時代の陸上部での練習はほとんどが筋トレ。
諦めかけた時期もありましたが、それでも走りたい。
陸上への強い思いと意志で、怪我と折り合いをつけながら競技生活を続けていきました。
陸上一色の生活。
バイトも出来なければ、彼女もできない。
それでも黒木氏は「箱根を走ったおかげで一生前を向いて歩いていける」とおっしゃっています。
私自身も大学時代はクラブ活動に打ち込み、両親から「何をしに大学に行っているんだ・・・」と嘆かれましたが、比べ物になりません。

中村監督については、選手たちに罵詈雑言を浴びせるとんでもないパワハラオヤジとして描かれています。
実際そうだったのでしょう。
でも、選手のことはものすごくよく見ている。
競争部に入ったばかりのときに、黒木氏は監督から手紙を受け取ります。
「何よりも走ることが好きであることが、貴君の一番の美点だ。
 (中略)
 貴君が走っているのを見ると、昔からどのような練習をしてきたかがわかる。
 気の毒なほど泥臭いフォームである。
 しかし、貴君の練習全部に裏表がない。
 一生懸命そのものである。
 神様は見えないが、もしこの世におられるなら、
 最後は立派なWのマークを付けた、早稲田の中堅選手に育てて呉れるでしょう。(後略)」
黒木氏は地道に努力を重ね、監督の見立てどおり立派な中堅選手に育ちました。
罵倒されることは多々あったようですが、監督は選手としての黒木氏を大切に育て、そして非常に信頼していたのでは、と思いました。

黒木氏は私より学年で1つ上。
東伏見にある大学のグラウンド近くのアパートに住み、朝練はアパートから南下して成蹊大の欅並木を通り、住宅街を抜けて井の頭公園までの往復でした。
多分私は黒木氏が走った数時間後に、ギターを抱えて同じ道を歩いていたんだな・・・
東伏見の早稲田のプールにはよく遊びに行ったな。
それに、私は高田馬場に住んでいました。
「競争部の新勧コンパは、高田馬場の清龍」の記述には、「え~、あそこ?」
同じ時代、同じような生活圏は読んでいて楽しく懐かしく、でした。

さて、箱根駅伝まであと1ヵ月半。
選手の皆さん、悔いの残らないように頑張れ。

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