観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「(理系人材と)GX」「北方領土」を考察・纏め予定。放置気味ですが、忘れた訳ではありません。

過ちを認めないそもそも論の泥仕合

2018-01-07 10:40:53 | 政策関連メモ
安倍政権後が不安視されるひとつの要因に自民党に財政再建派が多いことがあると思います。安倍政権はアベノミクスで日本経済の建て直しに先鞭をつけましたが、アベノミクスの成功の要因は金融緩和であることは衆目一致していると思います。反対派は出口戦略を言いますが、根本的な過ちを認めきれないだけでしょう。人は自身の過ちを認めにくい生き物で、それが専門家であるとか、誤った方が多数派であるとか、そういう場合にはその傾向は顕著になると思います。

昨日本屋で面白そうな本がないかチェックしていたのですが、元大蔵省で日本の超インテリ経済論客の本が興味のあるテーマだったので、これをチェックして気になり買ってきたのですが(内容に賛同した訳ではありません)、例えばインフレになったら金利が上がって膨大な量の国債の利払いができなくなるから(その他いろいろ理由は書いているようですが結論は同じです)、「金融緩和から脱却するべきだ」と書かれています。さすがに専門家の言うことですから、素人が反論するのは中々難しいですが、ちょっと待てよです。専門家同士の意見はぶつかる時もあり、中々素人が判断するのも難しいですが、日本の経済専門家の大勢が概ね正しいのであれば、今日本はこんなことにはなっていませんし、異端からスタートした安倍政権が成功することはありませんでした。根本的に何か間違っているはずです。安倍政権がこういう考え方を支持しないにしろ、専門家が安倍政権の政策を否定しそれが説得力をもってしまうような状況下で安倍政権の政策の継続性は期待しにくいということになるんじゃないでしょうか?3年後になるかもしれませんが、これは日本経済の不安要素です。

日本の舵取りを誤った専門家の特徴はデフレ脱却が経済再建の前提でなければならないという認識の欠如にあるんじゃないだろうかと思います。

デフレの進行とその経済影響:財政への影響は甚大(電力中央研究所社会経済研究所)

マイナス金利がタンス預金で回避できるがためにデフレ下で理論通りの経済運営をすることは不可能であると考えられます。そしてデフレの経済に対する悪影響は甚大であるがゆえに、デフレ下での財政再建も経済発展も有り得ないと考えられます。これが経済財政を考える上での大前提で、この大前提がなかったがゆえに日本経済は失敗し、その大前提を強く意識した安倍政権が復活への道筋をつけることができたと考えられます。消費税増税論者に有りがちな失敗は、デフレを視野に入れない増税論、デフレを視野に入れない金融緩和出口戦略論でしょう。デフレ脱却を錦の御旗にして何をやってもいいとは思いませんが、デフレ脱却を計算に入れないのも明らかに間違っています。デフレ脱却は経済財政再建の十分条件ではありませんが、必要条件であることは明らかでしょう。一般に議論に不利な場合は不利な論点を避けるのが普通ですが、必要条件を欠き必要条件をとっぱらうかのような議論は有害でしかありません。日本の頭脳は優秀だと筆者は思います。ですが、間違っていることも明らかだと思います。何故そういう事態になったかというと、急激な少子高齢化やそれに必然的に伴うデフレ圧力は人類の経験にない新しい事態で、旧来の手法や経験の応用では対処できない事態であるからではないかと思います。日本も考える力が重要であると改革はされていると思いますが、やはりまだ十分でないところがあるんでしょう。

複雑な物事を考える上で重要なことは、ある程度不動のアイディアを決め打ちして考えることだと思います。怖れがあるとか、可能性があるとかそんなことを何時までも考えていてもしょうがないところがあります。まず、デフレにしてはならないことが決まっているならば、デフレ脱却するための手法は限られてきます。その限られた手法も全部ダメなら、日本の経済財政は詰んでいるということですが、筆者はそうは思いません。財政出動や金融緩和が政府がデフレ脱却を促す一手法ですが、それをやるという前提で、マイナス面をも視野に入れて政策を磨いていくことは重要で、基本路線はそれでいいと思います。しかしながらひとつハッキリ答えないといけないのは異次元緩和の持続性に関してだろうと思います。異次元緩和がアベノミクスの成功を呼んだのは明らかですが、それが特異な手法であるがゆえに、その持続可能性に疑問符がついているのも事実です。反論を試みる専門家もいらっしゃいますが、筆者の目にはそれが成功しているとは映りません。それが成功しているなら、いわゆる「財政再建派」は駆逐されているはずです。専門家はどうしても自分だけがあるいは仲間だけが分かってりゃいいという態度になりがちですが、民主国家でそういう態度は危険ですらあると思います。やはり専門家間での見解の相違は互いに牽制しあってさっさと終結させていって欲しいものです。そうしないと素人を惑わすことになりますし、ひいては国の舵取りを誤らせることになるんじゃないでしょうか?

黒田日銀の異次元緩和は専門家でも反対論が根強いというか、専門家の間でも理解し消化して議論されていないように映ります。問題点が考えられることは確かでしょうが、ハッキリ言って現在の日本の経済財政構造を考えると他に手法がないから正解だと考えるしかないと思います。他に効果が大きい手法があるなら別ですが、そんな話は聞かないので、異次元緩和を前提として認めることからしか議論は進まないのではないかと思います。政策の点検はあってもいいと思いますし議論は大切でしょうが、異次元緩和を否定するような議論はその時点で間違いであると考えて良いのではないでしょうか?否定論で考えて頭の体操で政策点検することは有り得ますが、結論を動かすことは有り得ないと考えます。事実上デフレ脱却を諦めるという失敗に直結すると考えられるからです。

日本の現状は過去に前例がありません。前例がない事態に過去の経験や知識・理論を総動員したところで、まともな答えが出るとは限りません。

異次元緩和を是とした時に浮上する大きな問題は、中央銀行の信認の問題でしょう。確かに中央銀行の信認が無くなることで、これまではハイパーインフレになってきました。つまり詰みです。デフレも詰みなら異次元緩和も詰みで日本は詰んでいるのでしょうか?筆者はそうは思いません。

大体が財政危機は叫ばれてきましたがそうはなっていません。トップクラスの頭脳を誇る専門家集団も時にはコロッと間違う時があるんでしょう。人口構造の問題のトレンドは動かし難く予測可能です。ですから、少子高齢化の対策が上手くいくなど大きな変化がない限り(あるとしてもそれは予測可能ですから、それが分かってから対策することは可能です)、誰しもが「普通にやって全体のトレンドとして市場が拡大するはずがない」という認識を強く共有しています。ですから、自然に任せておいて経済を楽観的に見る人が大勢になる可能性はないのであって、仮に過熱傾向になったとしても冷ますことは容易であると考えられます。つまりインフレ期待が暴走することが考えにくいので、中央銀行が非伝統的な政策を採用しても中央銀行の信認が失われるとは限らないということになるんじゃないかと思います。

中央銀行の信認が失われず非伝統的な手法で対応できるなら、どう転んでも財政破綻は有り得ません。これはかつて大失敗した手法でもあり、懸念は当然あっていいと思いますが、日本の今の状況とかつての状況は明らかに異なります。

注意しなければならないのは、非伝統的手段が簡単に破綻に繋がり得るということでしょう。魔法の杖でジャブジャブ金を使えばそれで万事OKのようなド素人お花畑理論(金融緩和支持者にこの手の議論が多いこと多いこと!)で経済財政運営したら即破綻です。当たり前ですが、不断に経済的に効率の良い支出を考え実行していくことが大前提で、そのためにはデフレ脱却の前提を欠いているかのような根本的に間違っている感じの人達の協力も必要になってくるような気がしないでもありません。金を使わないとデフレ脱却は成らないんだから、効率を犠牲にしても良いのでは?なんて甘い認識が罷り通ったら、非伝統的手段の失敗に直結しかねないところがあるんじゃないですか?誰も収入の範囲を超えてアホみたいなお金の使い方をしてそのままで続くと言っているかのような主張を相手にしないと思いますが、そうも見えるような主張の方が「財政再建派」と泥仕合しているように見えなくもありません。

纏めます。

①日本の中央銀行は非伝統的な政策でデフレに陥らないよう力を発揮するべき。非伝統的手段を否認する守旧派では今の日本の状況に対応できない。
②お金の使い方は吟味するだけ吟味して日本の経済財政の破綻を想起させないようにするべき。手段の効率性を重視しない素人意見主導では非伝統的手段から派生する経済財政運営を成功に導くことはできない。

これでデフレ脱却という必要条件を欠くことなく、財政破綻やハイパーインフレという破局を避けることができるのではないかと思います。