愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

津波の記憶を伝える石碑

2012年03月09日 | 災害の歴史・伝承
徳島県海陽町の海岸部を歩いているといたるところで見られる「南海地震津波最高潮位」と刻まれた石碑。昭和21年12月21日未明にこの地を襲ってきた津波の記憶を今に伝えている。この石碑が建てられたのは昭和60年。合併前、当時の海南町が主体となって建てられた。海陽町は江戸時代から幾度の津波被害を経験している。後世に津波の危険性を伝えるためには、書物での文献記録や看板表示ではなく石碑にすることで永年の記憶化を図ったといえる。石碑が建てられたのは津波から約40年後。次第に世代が交代し口伝えで津波の記憶が地域住民の中で共有化しづらくなったことに起因するのかもしれない。建立は自治体主導。この石碑のある地区では南海地震津波で85名もの犠牲者が出ている。それでも40年経つと記憶は風化し、忘却されてしまい、新たに津波の悲惨さを伝える石碑建立という記念化行動を起こさないといけない。それぞれの津波石には、発生時、建立時、そして今現在の「記憶」化や「忘却」対策の想いが込められているわけであり、津波が襲ってきた事実だけではなく建立者の意図などについても知っておく必要がある。
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