愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

無形民俗文化財研究協議会「震災復興と無形文化―現地からの報告と提言」

2011年11月24日 | 災害の歴史・伝承
12月16日に東京国立博物館平成館大講堂にて行われる無形民俗文化財研究協議会。東京文化財研究所無形文化遺産部主催。今年のテーマは「震災復興と無形文化―現地からの報告と提言」。詳細は以下のとおりです。私もこの会に参加申し込みをしました。


第6回無形民俗文化財研究協議会

「震災復興と無形文化―現地からの報告と提言」

日時 平成23年12月16日(金)10:30~17:30

会場 東京国立博物館 平成館大講堂

【プログラム】
第一部 被災地からの報告と提言 10:45~15:00
「東日本大震災を乗り越えて―沿岸部の民俗芸能 復興の現状」
  阿部 武司(東北文化財映像研究所 所長)
「津波と無形文化」
  川島 秀一(リアス・アーク美術館 副館長)
「被災集落と神社祭礼について」
  森 幸彦(福島県立博物館 専門学芸員、南相馬市伊勢大御神 禰宜)
「後方支援と三陸文化復興プロジェクト」
  小笠原 晋(遠野文化研究センター 事務局長)
「震災と文化復興」
  赤坂 憲雄(学習院大学教授、福島県立博物館 館長)

第二部 総合討議 15:30~17:30         
〔コメンテーター〕
小川 直之(國學院大学教授)
石垣 悟(文化庁伝統文化課調査官)
〔コーディネーター〕
今石 みぎわ(東京文化財研究所無形文化遺産部 研究員)

〔総合司会〕 宮田 繁幸(東京文化財研究所無形文化遺産部 部長)


東京文化財研究所無形文化遺産部のサイトはこちら。http://www.tobunken.go.jp/~geino/kyogikai/06mukeikyogikai_inf.html


【講演】東北地方と伊予―歴史的・文化的つながり―

2011年11月23日 | 日々雑記
12月10日に松山市内で 東北地方と伊予―歴史的・文化的つながり― のタイトルで話をします。主催は一遍会。4月に八幡浜市での濱知の会、10月の宇和島市南予文化会館での鹿踊共演の際の講演と同じ内容です。鹿踊を中心に話を進めることになります。

日時 12月10日(土) 13:00~15:30 
会場 道後公民館3階 視聴覚教室
講師 大本 敬久
演題 東北地方と伊予―歴史的・文化的つながり―

【一口メモ】
東日本大震災によって東北地方は甚大な被害を受けましたが、愛媛県(伊予国)は東北地方と文化的つながりの強い地域であることを紹介します。一遍上人と江刺(岩手県)との関係や、宇和島藩伊達家が仙台から移って来たことによる鹿踊などの文化伝播など。東北地方を伊予の歴史・文化から眺め、被災地の地域性を理解する一助となればと思います。

一遍会のホームページはこちらです。
http://home.e-catv.ne.jp/miyoshik/ippen/ippennkai.htm




こころ塾~愛媛から東北へ・笑顔増殖プロジェクト~

2011年11月22日 | 災害の歴史・伝承
松山市のNPO法人こころ塾からのお知らせ。

想いを“かたち”にしてみんけん~愛媛から東北へ・笑顔増殖プロジェクト~

11月29日までの間、写真のチラシに載っているの3ヶ所で絵葉書に被災地を勇気づけるメッセージを書いて贈るという企画。メッセージとともに女川町にみかんも届けるとのことです。

これも一種のクリスマスオレンジだと思います。一人でも多くの人がメッセージを送ることができればと思い、このブログでも紹介します!

こころ塾のホームページはこちらです。
http://www.kokorojuku.net/#

やのひろみさんのブログでも紹介されています。
http://yanohiromi.i-yoblog.com/



クリスマスオレンジ~愛媛のみかんを贈ろう~

2011年11月11日 | 日々雑記
愛媛のみかんをクリスマスに贈答しようというクリスマスオレンジ構想。

先日、フェイスブックのページが開設されました。

http://www.facebook.com/XmasOrange

X'masOrangeのシンボルロゴをダウンロードできるようになっています。

メッセージカードやみかん箱、プレゼントボックスに貼るなど利用することができます。

今年のクリスマス。プレゼントに愛媛のあま~いみかんを、つながりのある人に贈ってみませんか?

一度、クリスマスオレンジのフェイスブックページをのぞいてみてください。







講演会 星になったチロと塩崎宇宙さん

2011年11月09日 | 災害の歴史・伝承
1980年代に読書感想文の課題図書『星になったチロ―犬の天文台長』にも取り上げられるほど話題になった犬のチロ。(南極物語のタロとジロじゃないですよ。)天体写真家藤井旭氏の助手であり福島県の天体観測所の所長でもあった犬のチロの物語。

この星になったチロの像を作ったのが八幡浜で活躍した塩崎宇宙氏。今年は塩崎宇宙生誕100年です。

明日、10日夕方に、えひめ星空キャラバン隊主催で、藤井旭、チロゆかりの福島県田村市の「星の村天文台」台長 大野裕明さんが八幡浜市愛宕中学校で講演会を開かれるとのこと。

チロのこと、塩崎宇宙さんのこと、地震で被災した福島の天文台のこと、そして星空のことなどなどお話いただけるようです。


案内文を引用します。



塩崎宇宙生誕百周年記念講演会 天体観測会

11月10日(木) 時刻予定:午後7時より9時 
会場:八幡浜市立愛宕中学校
講師:福島県田村市「星の村天文台」台長 大野裕明氏
演題:「世界を旅しての宇宙観」


本年は天文愛好者のアイドル的存在でした天文犬チロの像を制作された故塩崎宇宙氏(彫塑家・彫刻家、当時八幡浜在住)の生誕百年にあたります。チロの飼い主・天体写真家藤井旭氏が創設した白河天体観測所メンバー、福島県田村市「星の村天文台」台長の大野裕明氏を講師にお迎えし、実施いたします。  
大野氏が台長を務められている天文台は、先の東日本大震災により福島県内最大口径の65センチ反射望遠鏡が落下、甚大な被害を受けられました。天文台のプラネタリウムを修理、手持ちの望遠鏡で観測会を開催するなど福島第一原発に最も近い天文台(約33㌔)復興を目指し奮闘。『復興のシンボル』として「星の素晴らしさを伝え、被災者を勇気づけたい」と被災地を巡回、出前の観察会も実施されました。氏のご努力が実り、このほど田村市市議会で天文台修復のための予算が認められ、今回、ご来県いただけることとなりました。(愛媛でも、支援の募金活動を実施しました)この機会に、かつて愛媛・八幡浜の地に塩崎宇宙という彫刻家・彫刻家が活動されていたことを思い出していただき、改めて記憶に留めていただければ幸いです。

【塩崎宇宙氏のご紹介】
明治44年(1911年)、大阪市生まれ。昭和18年から48年間、妻冨美子さんの故郷八幡浜市で倉らし、平成2年に78歳で死去した。「青少年の成長と平和」をモチーフに制作活動を続け、国体記念の「青年像」「植村直己レリーフ」「天文犬チロ像」など数多くの作品を残している。

【大野裕明氏のご紹介】
昭和23年(1948年)、福島市生まれ。小学生のころ天文に興味を持ち始め、福島天文同好会会長として全国の天文愛好者と交流を深める。福島県田村市の「星の村天文台」台長として天文普及活動に専念。皆既日食やオーロラ観測のため世界各国へ遠征。テレビ・ラジオでおなじみの天文ジャーナリスト。宇宙先生がチロ像を制作されたご縁で、愛媛の天文愛好者との交流を続けている。
        
主催/えひめ星空キャラバン隊



愛媛唯一の囃子屋台~新宮村素鵞神社~

2011年11月07日 | 祭りと芸能
旧新宮村(現四国中央市)上山の素鵞神社の秋祭りは10月最終日曜日に行われる。ここでは写真のような屋台(地元ではだんじりとは言わない)に小中学生が乗って、太鼓、笛、鉦などを囃す。愛媛でこの形態の屋台は唯一である。囃子といえば西条のだんじりにも見られるが、このように乗り子に公家風の衣装に髭を描く化粧をするのは愛媛でもここだけである。全く類例がない。しかも、この屋台は車がついている曳き屋台である。愛媛は南予地方や大三島以外では曳き屋台は少なくて、担ぐだんじり、太鼓台が主流である。飾りも簡素であり、刺繍や彫刻はあまり施されていない。一見、地味ではあるが、これは乗り子の囃子を「見せる」、音で魅せるという屋台であり、刺繍や彫刻で魅せるというだんじり、太鼓台とは一線を画すものといえる。この新宮上山は東予地方であるが銅山川流域なので、民俗文化領域としては下流の徳島県とのつながりも考えられる。事実、徳島県の東祖谷や木沢には同様の形態で、髭の化粧をする屋台が見られる。

この新宮上山の屋台は、乗り子の小中学生が地元では集まらず、上山以外の新宮各地から呼んでいる状況であり、継承の危機にあるという。しかし、実際に現地の祭りにうかがってみると、子供は少ないが屋台を動かしたり、囃子の際に周りで唄う熱心な大人が多く、祭りの存続については外部の眼で見たかぎりでは危機的状況といいつつも、祭りの継続意欲の高さを感じた。

この屋台行事は、愛媛県では唯一の文化遺産であり、類例がない。四国中央市の無形民俗文化財にも指定されている。愛媛の祭礼文化を語る上では欠く事のできない祭りである。今年は地元放送局の取材も入っていて、近日中にニュースの中で特集されるらしいが、もっと多くの人に注目してほしい祭りだと感じた。

都市の祭礼もいいが、山間部で昔ながらの祭り、しかもそこにいろんな屋台、囃子、化粧などいろんな文化が流入して今に継続されている。それを地元の方々が支えている。地域の結集の在り方が祭りを通してよく見えてくる。そんな祭りは地区以外の周囲から注目されてしかるべき現地にうかがって、お話をうかがって、そんな感想を持った。




宇和島の牛鬼と鹿踊り 形骸化への危惧

2011年11月03日 | 祭りと芸能
宇和島の牛鬼、鹿踊りの頭(カシラ)。江戸時代から続く和紙を何重にも貼り合わせた張り子細工の伝統工芸である。いま、宇和島市内のものはグラスファイバー、FRP(プラスチック)、ダンボールといった素材が増えていて、このまま10年、20年経つと、形だけの継承になってしまうのではないかと私は危惧している。南予には各地に古い頭(カシラ)が残っているが、それら痛んだ際の修理技術の伝承も難しくなるのではないかとも危惧している。

宇和島の牛鬼、鹿踊りは無形民俗文化財であるとともに、頭(カシラ)は江戸時代のものも現存しており、それらは有形民俗文化財である。明治時代に製作され、今でも使用されているものも数多い。これらを後世に保存、継承するには頭(カシラ)等の道具の製作技術の継承にも目配りしておく必要がある。基本は江戸時代の張り子細工職人「森田屋礒右衛門」の作品。伊達博物館に鹿面が保管されている。いかにその技術に迫ることが出来るか。その技術を継承している張り子職人(えひめ伝統工芸士)も宇和島市内にはいるので、現在はまだ修理、新調は可能であり安心できるのだが、今はあまりにもFRP、プラスチック、ダンボール牛鬼が増えすぎという印象。安易な素材を選択する前に、張り子細工の伝統を見直す事も必要。民俗文化財として継承するには、江戸時代から継承されている道具の製作技術も継承しないといけない。

正確な統計はとっていないが、宇和島市内の牛鬼の5割以上は既にプラスチック、ダンボール製となっているのではないか。これらは現代版の新規創作牛鬼というべきもので、文化財、文化遺産としての牛鬼と言っていいものか、甚だ疑問。厳しい見方をすれば、宇和島の牛鬼のうち、既に半分は厳密には「本物」の牛鬼ではないのではないかと思うときがある。

正直、このまま頭(カシラ)の和紙、張り子での製作技術がないがしろにされ、その技術継承ができなくなると、50年後、100年後には、宇和島の牛鬼文化は完全に形骸化してしまう恐れがある。

地域の文化遺産として牛鬼、鹿踊りを保存、活用、継承していく上では、このことは無視できない。