愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

蚊帳にまつわる民俗

2006年10月01日 | 衣食住
蚊帳にまつわる民俗   06年10月1日


蚊帳は、古い文献には「蚊屋」と記されていることが多い。

材料は麻が一般的。

蚊帳は奈良時代頃からあるが、庶民に普及したのは江戸時代。

奈良時代に編纂された「日本書紀」に蚊帳の記述あり。

蚊帳の産地で有名なのは近江(滋賀県)の八幡。

二人用の蚊帳は4反の布が必要なので、とても高価。嫁入り道具の一つでもあった。

「好色一代男」に江戸時代の蚊帳の挿絵あり。

蚊帳にまつわる禁忌(タブー)
 蚊帳は一日で縫い上げるもので、近所の人にも手伝ってもらう。
 妊娠中の人に蚊帳に入ってもらうと縁起が良い。
 蚊帳は七日盆(七夕のこと)に洗うもの。
 家で死者がでた際には、蚊帳は四方の一つをはずして三方で吊るす。
  ←だから、普段は三方で吊るしてはいけない。
 蚊帳の吊り始めは、吉日を選ぶ。
 5月に蚊帳を吊り始めると幽霊がでる。
 雷がなっている時は、蚊帳に入ると良い。
 9月になったら蚊帳を吊ってはいけない。
  ←9月に吊るなら、雁(かり)の絵を描いて貼る。
   ←秋に、蚊帳の中で雁の声を聞くと災いから逃れることができるという
    俗信から。

南予地方と蚊帳
 「蚊帳待ち」の習俗・・・・旧暦6月23日には蚊帳を吊ってはいけない。
  ←江戸時代初期に、宇和島の和霊神社の祭神、山家清兵衛が殺害されたのが
   6月23日で、蚊帳の中で斬られて殺されたので、南予地方では、6月2
   3日には、いくら蚊が出ていようとも、蚊帳を吊らずに我慢して寝る、と
   いう慣習がある。

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