春. 夏. 秋. 冬. 河童の散歩

八王子の与太郎河童、
つまづき、すべって転んで、たちあがり・・。
明日も、滑って、転んで・・。

(24)節三またしても・姉・ミツは・・・・

2016-02-28 22:12:32 | 節三・Memo



整列した柔道部員の前で、三船は節三の前に来ると肩を「ぽん」と叩いた。
名前を訪ね、答える節三の眼を見つめて「太田君、か。ほう」と顎を少ししゃくり上げた。
名前は稽古の時に先生から聞いていたが、直接声をかけるきっかけを作ったのであろう。
もう一度、肩に手を置き今度は揺さぶった。
「稽古に励むように、な」

節三は三船の目を見た。
「この小さい体で、日本国中の武道家が注目するまでになったのか」
「すごい」

眼は節三が下を、三船が見上げる。節三は16歳で五尺五寸、165センチになり、大人の体格よりがっちりしていた。
が、三船師範は講道4段る自分にとっては神様みたいな方。
上気し、体中が熱くなった。
「どうしたら、強くなれるのだろう」
節三は黒帯ではあるが、所詮は田舎初段。
口癖「強くなりてぃ」

マッチ箱の汽車から精錬所煙突から月の明かりを借りて黒い煙が悠然とした姿で星屑を飲み込んでいるのが見えてくるまで、腕組みをした節三は、三船の試技を繰り返し繰り返し、頭に焼き付けていた。
役の街灯の前で、足払いをし、電柱を抱え、腰をひねった。

他流試合の制覇の新聞記事が落ち着き、秋風が吹き始めた小坂町で、節三は1週間の停学の張り紙が学校を騒がせた。
太田家でも、3女「ミツ」が節三に黙って嫁入りの支度をはじめていた。


コメント
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