本校に、I君という講師の先生がいます。
大学を出て希望に満ちて教師の道を歩き始めたばかりです。
4月から、私はI君にいろいろとアドバイスしたり、教えたりしました。しかし、あるときそれが彼にとって重荷になっているのだと感じました。彼には彼の思いがあります。彼は彼の理想の通りに試みてみたいのに、私があれこれ言うことでそれが妨げられていると感じたのです。
そこで、彼にかかわるのをやめ、知らんふりをして様子を見ることにしました。
私とI君は、ともに4年生の図工を担当しています。I君は4年1組、私は4年2組です。1学期の後半は、ふたりで相談して風景画を描くことにしました。I君は、本を読んだり、インターネットを調べたりして、色使いや、構図や、水彩絵の具と水の関係など意欲的に教えていました。しかし、彼は子どもたちの実態がつかめていません。あれもこれも教えようと思えば思うほど、彼の思うような作品とかけ離れた作品が作られていきます。
互いの作品ができあがり参観会用に廊下に張り出しました。そのとき、彼は1組と2組の作品を見比べて、色々と考えたようです。彼の言葉を借りれば「こわい!!」という表現でした。
算数や国語の指導は、壁の中で行われ直接比べることができません。比べたところで、どの先生の授業が上手で、どの先生の授業がわかりやすいかは、目の肥えた先生にしか分かりません。
しかし、絵は、一目瞭然です。廊下に張り出せば、どのクラスの指導が行き届いていて、どのクラスは指導が入っていないのかハッキリと結果が出ます。(おそらく、歌や、朗読や、器械運動などの表現活動は結果が目に見えて分かります。)
そこからです。I君の態度が変わったのは。
本校にO先生という支援員の先生がいます。彼女は、元々は正規の先生で、図工が専門です。I君は、O先生や私に、「今こんな作品に取り組んでいて、今、ここまできているのだけれど、これでいいのでしょうか? また、ここからどうやって指導したらいいのでしょう??」と自ら作品を持ってきてアドバイスを求めるようになりました。
また、私の図工の時間に私の指導を見に来るようになりました。私としても、彼が多くの子にアドバイスをしてくれたり、支援してくれるので一石二鳥です。
2学期後半から、版画に取りかかりました。これは、I君と私で題材を話し合い、構図や構想を決めてから共同歩調で取り組みました。I君は、下絵の段階から、私にもO先生にも何度も作品を見せ、アドバイスを求めます。そして、次回には丁寧にそれを子どもたちに教えます。
また、I君はO先生に「ぼくの授業に入ってください。それで子どもたちにどんどんアドバイスをしてください。」とお願いします。
4年1組の図工は、I君とO先生のふたりの指導で格段に進歩します。そして、授業が終わると二人でその作品を見ながら、反省会を開きます。「こんどは、ここを掘るといいね。」「ここは、こっち向きで掘らせるといいね。」
O先生は、I君のために、分厚い図工の作品集を持ってきます。I君はその作品集を丹念に見て、どういう作品が小学生にとってよい作品かを学びます。
そして、私の授業を見ながら、自分に取り入れたいもの、どうしたらそうなるかなど課題を見つけ、O先生に相談し次の指導の対策を練ります。
版画が完成しました。時間がないせいもあって、私の指導は彼の指導に比べると明らかに荒く、作品にもそれが出ています(後日作品を掲載します)。それに比べて彼の指導した作品は、下書きも掘りも格段に丁寧で、構図もしっかりしています。また、彼のよい作品を作りたいという執念はすごくて、昼休みにも子どもたちを集め、O先生と一緒に丁寧に掘らせています。今回は(やられたぁ~)って感じで、格段に1組の作品の方ができがよいです。
彼の指導した作品の数々です。どうです。4年生でこれだけの作品ができれば上出来だと思うのですが..
自分の指導した多色版画「寒椿」も見ていただきたいです。
時々あさすれ違いますが、ゆっくりは話せませんね。
学習会を開く開くといいながら、いつになったら開けるのか....
でも、taigerさんのハイレベルな作品をぜひみたいと思います。集まりましょう!!
ただいま、ハンドスプリングと多色版画に挑戦中です。なかなか一人では、うまくいきません。またご指導よろしくお願いします。