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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



数カ月前にテレビ大阪「ガイアの夜明け」でTDLでの人事評価の模様が放送されて感心したことがあった。
互いに「笑顔はどう」とか「接客態度は」とか、といったテーマーパークの従業員として必要な態度を評価する方法紹介されていたのだ。
私にはこれがなかなか洒落ているように見えた。
どういう方法かというと、キャストと呼ばれるスタッフが来園者としてパーク内を回り、他のキャストを採点していくという方法だった。

「なるほど。合理的でやる気が出る方法やな。さすが天下のTDL」

とその時は思った。

しかし、よくよく考えてみると、「お互いを刺激する方法」である他者観察方法は「いつ誰に、どのように見られ、どのように評価されているのかわからない」という監視制度に他ならず、あな恐ろしや、と感じるようになってしまった。

「案外、内情は陰険なのかもわからんな」

と、つぶやいてしまったのだ。

そういう意味で松本圭祐作「ミッキーマウスの憂鬱」は私が抱いていた東京ディズニーランドのバックステージのイメージをまったく裏切らない物語だった。
もちろんフィクションではある。
でも物語も作り話にしては結構リアルに感じさせるところがあった。
至るところに関係者でないと知り得ないのではないかというエッセンスが鏤められていたのだ。

この誰もが覗いてみたいディズニーランドの裏側を舞台にして実はもっと大切なものがこの小説では描かれていた。
それは最近の若者の職業に対する取り組み意識みたいなもので、実はその部分が最も面白かったりするのだ。

主人公の後藤君はどう見てもニートで、これまで職業を転々としてきたことを窺わせる。
そのニートな後藤君が仕事に対する甘い認識しか持っていなかった当初から、次第に骨のある若者へと成長していくところが、かなり魅力的なのだ。

とはいえディズニーランドの裏側を、なんだかどこかの秘密組織のように描いているところは、ホンモノのディズニープロダクションやオリエンタルランド、三井不動産からクレームは付かなかったのか、知りたくなるところだ。
もちろん、これはエンタテーメントのフィクション。
これもまたディズニー神話のスピンオフと思えば、怒る方がおかしいというものだろう。

お手軽娯楽小説。
肩の凝らない一冊だった。

~「ミッキーマウスの憂鬱」松本圭祐著 新潮文庫~

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