「中国という国には有史以来国民意識は存在せず、その時代その時代で食わせてもらえる実力者に人びとがついていった。それは現代でも変わらないんです。」
という意味合いのことを語っていたのは司馬遼太郎だった。
国民意識のない国というのも極端な表現だが、確かに中国を見る限り共産主義なんていうのは、自己の富を蓄積するための道具のひとつでしなく、国家にルールはなし。
極端な拝金主義と軍国主義で周囲に有無を言わせぬ威圧感をもっている。
そのひとつの表れがチベット問題で、本来なら国際社会から強烈な非難が上がっても当然だが、その国際社会を黙らせるだけのヤクザの親分のような凄みを持っている。
どうやら21世紀は手塚治虫が描いた輝ける時代ではなく、利益最優先で腕力こそ正義というインモラルな暗黒の世紀になるのかもわからない。
貿易商社勤務という経歴を携え40歳前になって、その世界注目の中国北京大学に留学した谷崎光の留学記「北京大学てなもんや留学記」は大学生活というものを通じて中国を内側から見つめた生活感溢れる面白いルポだった。
数年前に読んだこの人のデビュー作「てなもんや商社」がコミカルながらも現実を的確につかみ取り、グイグイ押してくることに魅力を感じていたので、書店でこの本を見つけた時は即買いの決断をした。
日本人留学生の多くは自分の国のこともろくに知らないくせに他国へ留学し、気軽な話題でさえ自国の文化を絡められず、ディベートでは反論はおろか話題にさえ付いていけないものが少なくない。
それを恥とも思わないところが恐ろしいところだが、さすがにこの著者は中国貿易のプロとしての経歴が効いているのか、日本人の目を通して、日本人の価値観をもって、中国人と接し、中国の良いところ、悪いところを冷静に見つめているのだ。
そういうところと、相変わらずのコミカルさを含んでいるところが、魅力的だった。
中国人たちは自分の祖国こそ最も素晴らしい国だと主張する。しかし、
「言論の自由がない中国の大学ではいくら研究や勉学のレベルが上がっても世界レベルに達することはできないだろう」という意味合いの言葉には、なるほどと感心させられるものがあった。
海外、とりわけ米国などに留学した中国人の七割が祖国に帰ってこないという現実を見ても、今の中国の近代化が「張りぼての世界」ということがわかる。
そういえばうちの会社にも中国人社員が一人いるが、帰国したそうな様子はまったく窺えない。
中国のビルは大半が姉歯ビル。
中国の電球は1年間で100個以上「破裂した」。
経済授業で展開される「小日本」の糾弾会。
それでいて個々人はとても親切で人情深い。
冷静に考えてみるとこれほど支離滅裂な国はないかも知れない。
ともかく、著者のようにあちらの世界に一般人と一緒に住む「勇気ある日本人」のレポートは、日経なんかが書いている中国レポート(いわゆる提灯記事)よりよっぽど迫力があって内容が濃いのは間違いない。
~「北京大学てなもんや留学記」谷崎光著 文藝春秋社刊~
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我が国は市場経済が機能しているという中国に主張はウソですね。
中国は市場経済を「儲かれば何をやっても構わない」と解しているのが現状で、とても安心して投資のできる国ではありません。
街のマーケットに並ぶ家電製品が軒並み日本製や韓国製のコピー(てなもんや留学記より)という、もはや無法地帯。
以前、フィナンシャルタイムズの元記者が書いたルポを読みましたが、偽物について市場を管理している役所に訊ねるとたらい回しをされた揚げ句うやむやにされたことが報告されていました。
現在中国企業や中国の投資家が買いあさっている天然資源にしてみても、ほとんどが利用されることなく野ざらしされているという現状は、やがて来る途方もないバブル破壊が待ち受けていることになるでしょう。
本文にも記しましたが、中国の人民は「食わせてもらえる権力者についていく群衆」と言うのが実態です。
経済が崩壊し、深刻な経済危機に陥ったとき、YAMADAさんがおっしゃるとおり、中国の分裂と崩壊が始まるのかも知れません。
それは、中国の歴史が繰り返してきた運命でもあり得ます。
国家が分裂し、権力者が林立する。
戦前の
1945年以前の中国の姿がそこにあります。
ただ、今回はいかなることがあっても、日本は中国に対してお節介を焼いてはいけないという教訓を活かさなければなりません。
また、いらしてください。