春一番の声を聞いた途端、暖かい毎日が続くようになった。
一昨日の雨と、朝夕すこし冷え込むことを別にすれば、すっかり春の香りが街中に溢れるといえるだろう。
昨日JR京都線の新快速に乗って京都へ打ち合わせに向かう途中、ぽかぽか陽気と心地よい電車の揺れに誘われて、知らず知らずのうちに居眠りをしてしまった。
危うく下車予定の京都駅を乗り過ごすところであったが、幸いなことに桂川の鉄橋を渡る音で目覚めることができた。もしあのまま眠り続けていたりしたら、大津、草津、長浜までいってしまっていたかも知れない。
それだけ心地よい春の天気だった。
ところで、ぽかぽか陽気は睡眠を誘発するだけでなく、あらゆる人の営みに影響を及ぼすようだ。
会社の車に乗って大阪市南部の府道を走っていると、渋滞につかまった。
25日の昨日は大阪では五十払い(ゴトバライ、と読む)という集金日に当たる。このため日頃よりも交通量が増えて混雑する。
インターネットの時代に、集金のために混雑するなど、いたってアナログ、人海戦術の世界である。これだから大阪はダメなのだ。きっと一人一台のPC導入を果たしても、その半分以上のマシンがネットに繋がっていない大阪市役所を手本にしているためだろう。
ということで、容易に前へ進まない渋滞に巻き込まれたのだ。
しかし渋滞といえど、なぜかイライラすることはなかった。なぜなら春の陽射しが車内に差し込んで、暖房もいらないポカポカとした暖かさに私の気分はノホホーンとしていたからだった。
電車で京都へ行ったときのコンディションならきっと眠ってしまっていたことだろう。
交差点付近で停車していて、ふと反対車線の歩道の向こうに、こじんまりした、こじゃれた自転車屋が店を構えているのが目に留まった。。
店の前の歩道には色とリとりどりの自転車が並べられ、春の陽光に反射してピカピカのフレームがキラキラキラと輝いている。
「しつこい売り込みはいたしません」
との貼り紙に、店主のノンビリとした性格が伝わってくるようだった。
その自転車屋の入り口を見て見ると、案の定、想像どおりの風貌をした年若い男の店主がニコニコした表情で立っていた。彼は道行く自動車を眺めながらハサミで爪を切っていたのだった。
綺麗に洗濯された作業着を着て、きっと客への対応もいいのだろう。
「自転車のタイヤの空気は........」とウンチクをたれた貼り紙からは、自転車と客への小まめなサービスが感じられた。
「なかなか爽やかで良さそうな自転車屋じゃないの」と私は思った。
そんなホノボノした彼の前を、二人の大学生風の女の子が通り過ぎた。
一人は長い髪を春のそよ風になびかせて、赤い自転車を押して歩いていた。
そしてもう一人は明るい色のショルダーバックを持って歩いていた。二人は友達同士なのだろう。楽しそうになにやら笑いながら話している。なかなか美しい女の子たちだった。
すると途端に店主の表情に変化が走った。
店主の視線は赤い自転車を押す女の子の注がれて、爪を切りつつ、ニコニコ顔のまま、彼女たちが角を曲がって見えなくなるまで追いかけていたのだった。
キラキラ輝く陽光と、ほのぼの暖かいそよ風と、野郎の視線が印象的な「ああ、春がきた」と感じさせる一瞬だった。
一昨日の雨と、朝夕すこし冷え込むことを別にすれば、すっかり春の香りが街中に溢れるといえるだろう。
昨日JR京都線の新快速に乗って京都へ打ち合わせに向かう途中、ぽかぽか陽気と心地よい電車の揺れに誘われて、知らず知らずのうちに居眠りをしてしまった。
危うく下車予定の京都駅を乗り過ごすところであったが、幸いなことに桂川の鉄橋を渡る音で目覚めることができた。もしあのまま眠り続けていたりしたら、大津、草津、長浜までいってしまっていたかも知れない。
それだけ心地よい春の天気だった。
ところで、ぽかぽか陽気は睡眠を誘発するだけでなく、あらゆる人の営みに影響を及ぼすようだ。
会社の車に乗って大阪市南部の府道を走っていると、渋滞につかまった。
25日の昨日は大阪では五十払い(ゴトバライ、と読む)という集金日に当たる。このため日頃よりも交通量が増えて混雑する。
インターネットの時代に、集金のために混雑するなど、いたってアナログ、人海戦術の世界である。これだから大阪はダメなのだ。きっと一人一台のPC導入を果たしても、その半分以上のマシンがネットに繋がっていない大阪市役所を手本にしているためだろう。
ということで、容易に前へ進まない渋滞に巻き込まれたのだ。
しかし渋滞といえど、なぜかイライラすることはなかった。なぜなら春の陽射しが車内に差し込んで、暖房もいらないポカポカとした暖かさに私の気分はノホホーンとしていたからだった。
電車で京都へ行ったときのコンディションならきっと眠ってしまっていたことだろう。
交差点付近で停車していて、ふと反対車線の歩道の向こうに、こじんまりした、こじゃれた自転車屋が店を構えているのが目に留まった。。
店の前の歩道には色とリとりどりの自転車が並べられ、春の陽光に反射してピカピカのフレームがキラキラキラと輝いている。
「しつこい売り込みはいたしません」
との貼り紙に、店主のノンビリとした性格が伝わってくるようだった。
その自転車屋の入り口を見て見ると、案の定、想像どおりの風貌をした年若い男の店主がニコニコした表情で立っていた。彼は道行く自動車を眺めながらハサミで爪を切っていたのだった。
綺麗に洗濯された作業着を着て、きっと客への対応もいいのだろう。
「自転車のタイヤの空気は........」とウンチクをたれた貼り紙からは、自転車と客への小まめなサービスが感じられた。
「なかなか爽やかで良さそうな自転車屋じゃないの」と私は思った。
そんなホノボノした彼の前を、二人の大学生風の女の子が通り過ぎた。
一人は長い髪を春のそよ風になびかせて、赤い自転車を押して歩いていた。
そしてもう一人は明るい色のショルダーバックを持って歩いていた。二人は友達同士なのだろう。楽しそうになにやら笑いながら話している。なかなか美しい女の子たちだった。
すると途端に店主の表情に変化が走った。
店主の視線は赤い自転車を押す女の子の注がれて、爪を切りつつ、ニコニコ顔のまま、彼女たちが角を曲がって見えなくなるまで追いかけていたのだった。
キラキラ輝く陽光と、ほのぼの暖かいそよ風と、野郎の視線が印象的な「ああ、春がきた」と感じさせる一瞬だった。